九十三話 竜違い
竜聖国へと向かう道も半ばといった所。飛竜と呼ばれる物だろうか?この隊商を狙うかの様に空中で旋回している。それに気付いたのは私では無い。あまりに暇で寝て起きての繰り返しをしていた所、騒ぎが聴こえて目を覚ませば何と竜種が飛んでいる。どれほど強いのか気になり、右眼の能力を使用する。
ワイバーン
体力 100 /100
筋力 110
敏捷 150
防御 80
魔力 95 /120
耐魔 100
魔法‥‥飛行
特殊能力‥飛行優遇 竜に連なる者
見た事のない物を龍眼で調べる。
飛行‥‥空を飛ぶ為の魔法。慣れによりある程度の制御が可能。
飛行優遇‥‥飛行による魔力の消耗が激減する。また飛行を簡単に習熟出来る様になる。
竜に連なる者‥‥竜において上下とは絶対。上位の者に使役する事が使命として生まれている。階級は連なる者、竜、竜王、龍、龍帝であり知能によって進化を成す。また階級に応じて加護も大きくなり、より強くなる。
よく分からないが恐らく竜の中でも弱い。ただ攻撃は面倒だと思う。降りて来てくれなければ致命傷を与えるのは難しいから。
やる事が無く退屈にしていると、リリアさん達が話し始める。
「ワイバーンだね」
「ルビー君は竜種についてどれだけ知ってる?」
「僕ですか?さあ?大して知りませんよ」
「魔法使いが居ないと非常に厄介な相手でね。うちはルルがいるから楽なんだけど」
「剣士ってこう言う時はね、どうしようも無いよ」
諦め口調のリリアさんとアルカさん。本当に苦労した事があるみたいだ。それよりもこのまま放置で良いのだろうか?全隊への停止指示は出ているので、恐らく迎撃するのだろうが早く倒してくれないだろうか?他力本願の私。仕方ないよね。面倒だし、目立つのは少し面倒だから。
ふと右眼の力を思い出して、ワイバーンを睨みつける。するとガクンッと揺らぎ、ふらふらと飛んで離れて行く。どうやら上手く発動したみたいだ。私の右眼に恐れをなして逃げ出した様子。戦いたくない時には非常に優秀な右眼である。
「ありゃ?なんだろ」
「逃げてるね」
「誰か魔法でも使ったのかな」
「特に何も見えなかった。魔法の痕跡も」
よしよし。誰にも気付かれてない。赤銅の皆もワイバーンに気を取られてこっちを見てなかったからね。この眼の力を使うとどうやら右目が赤く光るみたい。人前では使えない私の殆どの能力。タネを見られる訳にはいかないから、まるで手品の様だね。いや魔法だけどね。
周囲への警戒を済ませれば再出発する。ガタゴト揺られながら進む。この揺れにも慣れて寝れる様になってしまった。慣れって怖いねって思っていると
《いえ?何を言ってるのですか?元々貴女はすぐ眠れていましたよね?そもそも寝なくても良い筈なのに》
『だって、やる事ないもん』
《まあ、構いませんけどね》
『じゃあお話しでもする?』
《ま、まあ仕方がありませんね》
私と話したかったくせに、それを認めないアイちゃん。そう言う所も可愛い。言ったら負けだから言わないけどね。
《では階級についてですね。貴女は龍です。ですが父は龍帝でした。もうじき貴女も龍帝に成りますが、まあ大した違いはありません。少し強くなると言った所でしょうかね》
『ふーん?』
《後は飛行についてですが》
『黒龍化したら飛べるよね?』
《今の貴女ならばこの姿でも習得出来ます。ワイバーンは下等種族なので翼と飛行が必要ですが、貴女はどちらかがあれば十分です。両方あっても構いませんが、まあ浮遊と言う能力がありますからね》
『そうなの?翼が無いのに飛べるって不思議な感じだね』
《父は翼が無くても空を飛んでいましたし。ただカッコ良いと言う理由だけで翼を使用していましたけどね》
『お父さんって結構お茶目なの?』
《いい歳なのに母とデートを楽しむ程度にはお茶目ですね》
『なんかイメージ変わるね』
《モテモテでしたよ?ただ女には興味無いと言っておきながら、母を娶っていますからね。全くあの唐変木》
『あれ?!アイちゃん急にどうしたの??』
《記憶を探っていたらムカついて来ました。まあ何はともあれ空を飛ぶのは常識として異常ですから、必要時以外は使用しないで下さい》
『うん。まあわかってるよ』
お父さんてどんな人?龍だったのだろうか。気になるけどアイちゃん怒ってるし、また今度で良いかな?少なくとも悪い龍では無さそうだよね。
結局ワイバーン以外は特に大したトラブルは起こらない。危険な国として言われていたが警戒し過ぎなのでは?と思う位あっけなく竜聖国に着く。検問も商隊とその護衛だと説明すれば難無く国へと入る。私の目的地は竜聖国ではあるが、恐らく竜巫女さんは首都に居る。なのでその情報を集めている状態である。商隊は解散しており現在は報酬受け取りの手続き中で、毎度の事でリリアさんにお任せである。
調べた結果、首都はここからすぐの隣街で徒歩でも1日と言う近さである。また竜巫女さんも首都に居るらしい。竜聖国は東の国境付近が栄えており、首都を要する。逆に西側や北側は、国を興してから侵略したので少し国土は変な形をしている。
戦争が発生しそうなのは西側であり、昔から小競り合いがあるみたい。まあ首都に近い国とは戦争をしたくないだろうから、外交はしっかりしているのは当たり前だよね。だからこそこんな簡単に入国出来たみたい。
粗方の情報収集も終えて今日は宿を取る。この街で私達は解散しても良かったが、赤銅は付いて来るらしい。どうやら心配みたいだ。親切なのは解っているので、断らなかったが恐らく1人の方が都合が良い。とは言え嬉しいので、まだ暫くパーティーを続けるのだった。
ちなみに少女の居た国は、まだ物語には名前が出ていません。ニーベルやリスパイムは同じ国の所属で、東の果てから西の国境まで旅をして来ました。
そのうち国の名前も出しますが、面倒なので気にし無くて大丈夫です。
まあ一応ニーベルは旧テメリア王国の所属の街でしたけどね。