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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
四章 竜聖国
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九十二話 大切な物は

竜聖国へと向かう道中。それはリスパイムへと向かう道のりとそう大差は無い。つまりまた馬車に揺られながらのあの退屈な時間を過ごす。


そして出発した日の夜。どうやら晩御飯を作るグループと寝床を作るグループに分かれる。当然ながら私はご飯の方に行く。と思ったが赤銅の全員がご飯のグループに行かされた。男性陣はどうやら皆料理が苦手の様だ。

そして偏見で女性は料理が上手いのだろうと言う予想みたい。何故かリリアさんが胸を張っているのでさぞ期待されているのだろう。

いい笑顔でリリアさんが私の肩を叩いて言う。


「任せたよ!ルビー君」

「‥‥‥構いませんが」

「私達もやらないと、流石にこの人数はね」

「うん。リリアも」

「あなた達私を馬鹿にしたじゃん!もう料理はしたくないもん」


すごくいじけているリリアさん。とは言え20人近くのご飯を作るのは流石に辛いので、リリアさんにも頑張ってもらう為励ます。


「一緒に頑張りましょう!」

「ルビー君もこう言ってるよ?」

「手伝わないと抜きですからね」

「そんなー」

「頑張る」

「もしや私も?まあやるっきゃ無いか」


なんだかんだで皆下手では無く、少し自信が無かっただけみたい。ルルさんも苦手と言いながら誰よりも手際が良い。逆にアルカさんは凄く目分量派だ。リリアさんは特に言う事もない。つまり慣れていると言う事。

全員分を作り、本当に食べ切れるのだろうか?と言う量を完成させる。


料理以外は設営完了しており、少し待たせてしまった様だ。適当に火を囲み食べ物を配ってから食べ始める。晩御飯を食べながら批評する。自分の料理が少しずつ上手くなって来ている。まだまだバルトさんには敵わないが、皆が美味しそうに食べている所を見ると上達しているのは間違いないはず。


ふとマフラー冒険者が料理を褒め始める。

「このスープが美味しいな」

「あ、それうちのルビー君が作ったやつ」


アルカさんがそう言えば他の人が反応する。


「え!?この炒め物は?」

「それもルビー君」

「男の子だよね!?」

「うちの料理長。ボス」

「凄いでしょ?うちのルビー君は」

「こんなのを目の前で作られるんだもん。心が折れちゃうのも仕方ないよ」

「あ、恐縮です」

「この子は料理人だからね。感謝して食べるべし」

「何でルルさんが‥‥‥何故リリアさんもアルカさんも胸を張ってるんですか」

「仲間が褒められるのは嬉しい」

「そうそう!仲間だからね」

「私も料理頑張ろうかな?私も自慢されたい」


驚愕しながらご飯を食べる皆さん。どうやらコソコソとお話しをしている。龍の耳はその声を聞き逃さない。


「くそぅ、俺達も料理が上手ければ」

「いや、あの子みたいに上手く出来る自信が湧かないんだが?」

「それでも練習すれば!」

「いや、動機が不純だろ」

「なんだよ!モテたくないのか?」

「ま、まあわからなくもないが」

「料理のコツでも聞いてみるか?」

「教えてくれるのか?」

「わからん!だけど物は試しだ!行動あるのみ!」


そう言って男性はこちらを向き直り私に話し掛ける。

「君!ルビー君。料理のコツを教えてはくれないか!」

「え、えっと?」


反応に困っていれば冷たい雰囲気を纏ったリリアさんが勝手に答える。


「うちのルビー君から情報を盗むつもり?」

「す、すまん。どうしても知りたいんだ」


このまま放置していると争いになりそうだと思ったので仲裁する。


「あの!」

「ん?何?ルビー君。ちゃんと言うべき時には言わないとね」

「構いませんよ?役に立つかはわかりませんが」

「ほ、本当か!」

「本当にいいの?別に無理しなくても」

「いえ、大した事では無いですし、僕の師匠からの言葉になりますが、料理は愛情です。相手の事を考えていれば美味しくなります。とそんな感じですが」


そう言えば全員が黙り、食事の手が止まる。スッとルルさんの手が動き、私の頭に置かれる。沈黙した空気の中で私の頭を撫でるルルさん。この答えで良かったのだろうか?と不安になる。ドッと全員が笑い始める。どうやら怒らせた訳では無いみたい。


「そうかそうか。成る程な。確かにそんな事を考えて料理した事無かったな」

「この答えで良かったですか?」

「ああ、問題ないさ。つまりアレだな。モテる為の簡単な方法は無く、ひたすら努力しかなさそうだって事だろうな」

「ルビー君は間違いなくモテる。正直君達よりルビー君の方が好印象」

「だってよ。まあ見透かされてるって事だ」

「くっそー俺もモテたい!」

「いや、それを私達の前で言ってる時点でなんかもう無いわ」

「そうだね。自分よりも誰かにって言うルビー君みたいな優しい人がいいよね」

「下手な大人よりも大人びてる」

「グフッ」


強烈な刃物だろうか?3人から刺される先程の男性。いくらなんでもあんまりだと思う。とは言え私がフォローしたら皮肉にしかならない。そう、私は学んだ。私は日々成長しているのだ。私って偉い!


‥‥‥何?言いたい事があるの?


必死で笑いを堪える姉。その目は暖かい眼差しで、涙を流している。それは笑い泣きと言うやつだ。寂しさを吹き飛ばす様な暖かな感情で姉を抱きしめる。何度も救われた姉は妹の為に可能な限りを尽くす。これこそが少女にとって誰かに尽くす最大の愛なのであった。

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