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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
四章 竜聖国
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九十一話 風来人

冷たい風が吹き、すれ違う人は皆厚着をしている。季節は冬となり目的地である都市リスパイムに到着した。


現在は手続きをしている最中である。その間に私は竜聖国についての情報を集めている。距離はそこそこ近くて馬車ならば首都まで5日と言う所である。戦争が起こる兆しはあるが、クーデターが発生している情報は無い。このリスパイムでやらなければいけない仕事は取り敢えず置いておいて、竜聖国に行く方法を探す。交易用の隊商に同行させて貰えば目的地には行けるだろう。


手続きが終わり、リリアさんと合流する。取り敢えず急ぎの依頼は出てないらしい。なのでこれからどうするかを話し合う。


「さて?ルビー君はどうしたいの?」

「僕は今すぐにでも竜聖国に行きたいです」

「戦争が発生するかもしれないみたいだけどいいの?」

「だとしてもです」

「そっか。一応確認したんだけど商人の護衛があったよ」

「え?」

「うん。私も見た。ここから竜聖国までの護衛依頼」

「Cランク以上が条件であと1枠空いてるみたいだよ」

「それ受けたいです」

「と思って受けてきたよ」


そう言って依頼書を広げて自慢げに笑うアルカさん。全てお見通しだった様だ。今日出た依頼で、ざっと要項に目を通せば護衛が整い次第即出発するらしい。なので休む間も無く集合場所に行く。私達とは別に2つのパーティーが居た。どちらとも男性のみで私達を見て様々な反応をしている。


「やったぜ!女の子達だ!」

「あぁ、こんなむさ苦しい世界に女子達が」

「ひゃっほーい」

「お前たちうるさいぞ!」


どうやらここにいるパーティーは全て4人ずつらしい。それに全員この街の冒険者達みたいだ。別のパーティーが騒がしい方を注意してるとこ見ると仲が良さそうに見えるから。多分顔見知りとかかな?


口元をマフラーで隠している見るからに無口そうな人と目が合う。その人は私を観察している。初対面なので会釈をする。そうすればその人が近付いて来て私の前に立つ。とても背が高く、頭2つか3つ分差がある。見上げていると何かが間に立ちその人が見えなくなる。その障害物はリリアさんである。完全に険悪な状態だけどね。


「何?うちの子に何か用?」

「違う」

「あん?」

「挨拶に来ただけだ」

「ほえ?」

「君。名前は?」

「僕はルビーです」

「そうか。礼儀正しいな。俺はルヴァン、失礼した。宜しく頼む」

「うん」


そう言って手を差し出されたので握手をする。多分この人は強い。とは言えこの中でもと言う感じかな。魔力を使わなければぼろ負けするだろうね。どうやら挨拶したのが好印象だったみたい。その人はお辞儀をして元の位置に戻って会話をしている。


「急に動いたと思ったら女の子じゃ無くてあの子の所に行くから焦ったぞ」

「ん?少しあの子に興味が湧いてな。ルビー君と言うらしい」

「へえ?んで?何でまた子供に話し掛けたんだ?」

「いや?わからん。なんとなく強そうな気がした」

「んん?なんだその曖昧な答えは?珍しいな」

「知らん。ただ、得体の知れないオーラを感じる。手は小さかったが子供特有の弱さみたいな物を感じなかった。間違い無く強い」

「お前よりか?」

「それもわからん」


2人の会話が私の耳に届く。なんだろうかその子供特有のなんたらとは。意味がわからない。オーラとは?よくわからないが謎の高評価を頂いたみたいだ。


「ルビー君大丈夫?」

「何かされたら言ってね?」

「い、いえ。強そうな人ですね?」

「魔力もそこそこある。剣士っぽいけど油断したら負けるよ」

「マジか」

「2人でやればなんとかなるでしょ?」

「難しいかも」

「ま、まあ戦うと決まった訳では無いですし」

「そう。戦う必要性は無い。だけど他人の能力を知る事には意味がある」


私達も会話をしていると、今回の依頼主と思しき人が現れる。雰囲気的にはやり手の商人という感じで、年齢は30よりやや上と言う所だと思う。


「今回は私の依頼を受けて頂き有難うございます。各自の紹介は済んでいると思いますが、改めて代表の方には来て頂きたいですね。説明をしますので」


それを聞き各パーティーのリーダーが商人の人の所に行く。リリアさんが説明を受けて私達に伝達する。

馬車は全部で五つ。商人さんの部下が馬車を操り、3つのパーティー毎に別れ、馬車の護衛にあたる。特に変わった内容は無く、道中は野営をする。食料は積んである物を食べさせて貰えるらしい。

他には飛竜と接触する恐れがあり、可能ならば討伐をするが荷物を優先して欲しいとのこと。当然である。飛竜の素材は高く売れるので討伐報酬も臨時で増えるかもしれないらしい。


勝手に竜を狩って良いのかは疑問だったが、共通認識として竜は敵らしい。知能が無く、竜聖国は従えている訳では無いらしい。竜聖国はただ襲われないだけなので、狩れるならば狩っても良いというかなりの適当である。


ここにいる全員が内容を頭に入れて各自に指定された馬車に乗り込む。この街に来て休む間も無く即街を出る。私の目的地に向かって馬車は動き出す。かつて父が居た場所には何があるのだろうか。何かを求めて旅に出る。私自身を見つめ直す為、竜聖国へと向かうのだった。

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