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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
四章 竜聖国
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八十八話 ありのままの私

今話から19時投稿になります。今後とも宜しくお願いします。

隙間から太陽の光が差す。幌では防げない位置に太陽がある。つまり朝である。今日は早朝から太陽のある方向とは真逆に馬車を走らせ1つ目の目的地に向かう。


昼前ごろに町へと着き、今日話し合った食材や水を買いに行く。私も行こうと思い外に出ようとするとリリアさんに止められる。


「ルビー君はお留守番ね」

「え?」

「そうだね。ルルと一緒に待ってて。すぐ終わるから」

「な、何故?」

「ルビー君は目立ちますからな」

「うぐっ!」


そう言われて落ち込んでいるとルルさんが


「どちらにせよ荷物番は必要。だから仕方ない」

「わかりました」

「次の街では少し滞在しますから、そこでお風呂や娯楽品などを買いましょう」

「まあつまりすぐにこの町を出るって事だね」

「ですね。お腹も空いてるでしょうから急ぎますが今回は最低限です」

「という訳で少し待っててね」


そう言って3人は買い物に出る。停めた馬車の近くに立って3人を待つ。待っている間にルルさんと会話をする。


「暇ですね」

「うん。お腹空いてない?」

「あ、はい。大丈夫です」

「そっか」


どうにも私は会話が苦手みたいで話が続かない。なのでなんとか疑問を探して訊ねてみる。


「どうして付いてきてくれたんですか?」

「ん?あーうん。まあルビー君1人だと不安だったから。理由は知らないけどどうしても竜聖国に行きたいらしいって聞いたから」

「皆さんに迷惑では無いですか?」

「気にしなくていい。2人は定住してた訳では無いから。私も問題なし」

「僕と一緒に居たら迷惑が掛かります。あの時も僕のせいで他の冒険者に怒鳴られて」

「んーん。違う。あれは単なるいちゃもん。弱いから自分よりも弱そうな子に文句を言ってただけ」

「でも」

「現にルビー君は強い。だったら自信を持てばいい。少なくとも私は味方だよ」

「ありがとう、ございます」


そうお礼を言えば目から雫が溢れる。涙を拭おうとして仮面を着けていたことに気付く。


でも、もういいや。そう思い仮面を外す。


きっと今の私は笑顔の筈だ。だからありのままの私でお礼を言いたい。心を込めてありったけの感謝で。


「ありがとう。ルルさん。大好きです」


固まってしまったルルさんにそう告げれば少し時間を置いてゆっくりと再起動する。


「あ、翠木亭の、きみだったんだ」

「はい。今まで内緒でごめんなさい」

「いやうん。確かに魔力は見れなかったけど、これは判る筈無い」

「意外でしたか?」

「戦う想像がつかないから。多分誰も気付けない」

「優しいルルさんだけ特別です」

「そっか。教えてくれてありがとう」


感謝の言葉を受け取ってから仮面を着け直す。そしてその後は相変わらずお互い無言だが、居心地が悪い訳では無い。寧ろ私の素顔を見せた事でより仲良くなれた気がする。木にもたれかかって立っている私は手を繋いで3人を待っているのだから。とは言え完全に無言なのでは無い。私は親友と会話をしている。


《ふむ。人間にしては中々やるではないですか》

『もう!折角のいい雰囲気が台無しじゃん』

《私が励まそうと思ったのに》

『あれ?ひょっとして拗ねてる?』

そう問えば明らかに怒っている。


《いいえ!そんな訳無いでしょう!》

『また今度抱き締めてあげるから』

《べ、べ別にそんなの要らないです》

照れ隠しだろうね。意地悪しちゃお。


『ふーん?じゃあいいや』

《え!?あ、いや。その、貴女が望むなら許可しなくも無いですけど!?》

『んーん?別に要らないみたいだし』

《うぅ、それは、その》

『ふふ、冗談。アイちゃんには助けて貰ってるからいつでもしてあげるよ』

《は、はい》


絶対照れながら返事をしている親友。そんなイメージが湧いてしまうよね。そして丁度3人が戻って来たので手を振って迎える。


買って来た品物は水に各種食料や雑貨類、主に布やナイフなど。そしてそれらの積み込みを手伝う。積み込みが終わればすぐさま馬車に乗り込み出立する。


携帯食料と水分を摂取しながら景色の移り変わりを眺める。最近段々と寒くなってきていて、冷たい風が肌を撫でる。肌は殆ど露出していないので手が冷たいかな?という感じ。それでも真夏も冬も特に辛く無い。多分黒龍には気候は殆ど影響しない。意識をすれば温感を完全に遮断出来るみたい。便利だよね私の身体。貰い物だけど。真冬の水中でも耐えられるし、溶岩とかはどうだろうか?流石に無理だろうけど。


あまりに暇なのでナイフを抜いて手入れを始める。先日ゴブリンを斬ってからあまり手入れをして無いので欠けて無いかどうかをよく観察する。本当に小さな欠けがあったので魔力を流す。そうすれば手入れも完了する。はっきり言って私のこのナイフって異常だよね。手入れにお金がかからないし強いし。ズルだよね。まあ使うけど。

色々と他のナイフも試したけど魔力の浸透し易さがこのナイフを上回る事が無いから仕方ない。よく考えれば鉄以外の素材は全部私の魔力が流れているから扱いやすいのは当たり前なんだけどさ?強すぎるよね?


話し相手も居らずただ1人で文句?を述べ続ける少女。実際の所少女の方がナイフよりも不思議な性能を発揮している。寧ろナイフよりもちぐはぐな見た目なのでより一層際立つが、その事に気付けない少女なのであった。

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