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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
四章 竜聖国
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八十四話 遠征

テーブルを囲んで4人が集まっている。全員が神妙な面持ちで会話をしている。この人達は翠木亭の家族達である。約1名を除くが。

少女がお店の暇な夕方に集まって貰い、重要な相談をしている。


「という訳で竜聖国に行こうと思っています」

「そうかい。まあ仕方ないと思うから止めないよ」

「おねえちゃん、でてっちゃうの?」

「リナ、仕方ないんだよ。クロには事情があるんだよ」

「じゃあ、わたしもいく」

「リナちゃん、私が行く所は危険らしいの。だから連れて行けない」

「それがクロの答えかい?」

「はい。この子には危険です」

「おねえちゃん!」

「ならリナ、外出は許可を出せないね」

「わたしもいくもん!」


許可が出なくて駄々を捏ねるリナちゃん。困った様に私に視線を送るイミナさん。それとは対照的にダンマリのバルトさん。

小指を差し出してリナちゃんに説得をする。


「約束。私は必ず戻って来るから。ね?我慢出来る?」


私がそう言えば固く口を結び、頷いて小指を出してくれる。黙って見つめ合い、沈黙が訪れる。

そして沈黙を破る様にバルトさんが話し始める。


「そうか、寂しくなるな」

「そうだねえ。クロ目当てのお客さんが来なくなって売り上げが落ちるかもねえ」

「まあ、お嬢ちゃんが決めた事だからな仕方ない。それよりも遠いんだろう?食事はどうする?」

「馬車で行く事になってますから食料を積んで道中補充したりとかですね」

「そうか。なら弁当を作っておこう。忘れるなよ」

「え!?で、でも」

「気にするな。今まで良く働いてくれたからな。体には気をつけるんだぞ」


その言葉を聞き目が熱くなる。若干滲み、すんでのところで堪える。しかし追い討ちをかけるバルトさん。


「帰って来たら感想を頼むぞ」

「私は色々と恩が返せていないです」

「なら、必ず帰って来て返してくれればいいさ」

「そうだねえ」

「おねえちゃんはやくかえってきてね?」

「うん。出来る、だけ、早く戻り、グスッ、ます」


気付いたら私は泣いていて、リナちゃんや女将さんまで泣いている。そして珍しく笑顔のバルトさん。笑っている所は見た事がなく、とても穏やかな笑顔である。それはとても印象に残る笑顔だった。


次の日の早朝。全員がまだ寝ている時間帯。バルトさんの言っていた弁当を取りに行く。すると朝早くから起きて私の為だけに、朝食とお昼のお弁当を用意してくれていた。私は泣きながら朝ご飯を食べ、恐らく二度と忘れないだろう。それ程までに美味しく、記憶に焼きつく程の朝食だった。丁寧に包まれたお弁当をカバンに詰めて、私はギルドへと向かったのだった。


目的地に近づけば3人は集まっており、少し遅くなってしまったのかと思い焦る。3人が手を振ってくれているので急いで合流する。


「遅くなりましたか?」

「いや?そんな事ないよ。時間より少し早いかな?」

「まだ旅馬車の御者は来てないみたいだね」

「時間通り。ルビー君は偉い」


何故か分からないがルルさんに撫でられる。すると丁度よく御者の方が来る。


「これはお待たせしました。馬車の御者を勤めさせて頂きます、カヴンと申します。リーダーさんはどちらで?」

「あーっと、私?でいいのかな?リリアです。カヴンさんよろしくお願いします」

「はい。それでは街や村を中継として目的地である都市リスパイムへと向かいます。基本は野営となりますが、距離が距離ですのでご理解願います」


全員は頷き御者の人の話は続く。


「また、道中魔物との戦闘が発生する恐れがあります。私は判断出来ませんので、リリアさんに指揮を託します。逃げるならば早く決断をお願いします」

「わかりました」

「最後になりますが、今回の目的地は竜聖国との国境に位置する都市となります。魔物の中でも特に危険度の高い竜種が居る場合があります。十分に注意をお願いします」


説明も終わり、全員が馬車へと乗り込む。御者席にリリアさんとカヴンさんが座り、荷台には私達3人が座る。食料等が積まれており、書類を渡される。大体目的地まで最低でも二十日程度かかると書いており、次の拠点までは三日程度かけて移動して、それを繰り返す事になる。


書類を読んでいるとルルさんが話しかけてくる。


「私が使える魔法を教える。火と水が使えるから君が使える魔法を教えてくれると嬉しい」

「えっと」

《風が使えると言って下さい。父の記憶から拾ったのですが、龍技の突翼が非常に風魔法と類似しています。とは言えかなり強いのであまり頻繁には使用出来ませんけどね》

「やっぱり駄目?」

「あ、風だけ一応使えます」


答えれば嬉しそうにしており、本当に魔法が好きな様だ。そう言えば2種類の魔法が使えるのは才能があるとかなんとか。なのできっとルルさんは凄い人なのかもしれない。


「危険なのであまり使えませんけどね」

「そうなの。凄いね。私は風はイマイチで岩が殆ど駄目」

「へえ、気になるなあ」

「それよりルルさんは凄いんですね」

「それ程でもない」

「うちのパーティーでもルルは凄いのよ?魔力視使えるのは希少で、4属性制覇してんだからね」

「そうだねえ。ルルがいなければCにはなれなかったなあ」

「私も拾ってくれて感謝してるからお互い様」


なんと全属性使えるみたい。本当に凄い人なのだという事だ。私も早く突翼が使える様になりたい。なんでか少し悔しい。対抗心が燃えているみたい。


会話をしていれば動き出し、日が顔を出す頃にニーベルの門を潜る。かなりの間過ごした街を出る。また戻って来ると決めているがなんだか感慨深い。

殆ど何も情報は無い。それでも父が居た国で何か手掛かりが見つかるかもしれない。私の目的を探す為にも、遠く離れた国へと出発するのだった。

冒険者ギルドなる物の主な役目を説明しますね。

現代で言う警察の様なものです。一応軍隊がいるので、警察よりは自警団的な?傭兵が近いかも?稼ぎはそこそこ良いと言った所です。あくまで誰でもなれるという基準から考えればですが。一応国家機関なので、軍隊で差し支えないかも。


割合的に女性は少ないです。少し昔の男尊女卑をマイルドにした感じで、あまり女性は社会進出しておりません。どちらかと言うと子供に厳しい人が多いと言う事です。まあフィクションですし、フワッとしたイメージでお願いします。気を悪くしたならば申し訳ないです。

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