八十三話 交わる点
考え事をしていれば気付いたら眠っており、今は夢の中に居る。浅いのか分からないが何処かから声が聞こえる。
「‥‥‥様」
「ん?ひょっとしてまた?」
「黒龍様!」
「なに?寝てるんだけど」
「す、すいません!」
「まあ良いけど、何?」
「その、竜聖国に危機が起こっています」
「ふーん」
「なのでどうか、お戻り願います。貴方様無しではどうにもならないのです」
「どんな危機が発生したの?」
「クーデターと他国の侵略が併発しているのです」
「大変ですね」
「な、なので!」
「うん。色々と考えるから頑張れる?」
「は!?あ、はい!。黒龍様のお言葉でした。望むならば己で切り拓けでしたね」
「う、うん?」
「も、申し訳ありませんでした!ですがもしもの時はお助け願います」
「あ、うん」
「では、失礼致します」
そう言って会話は終わる。それから間も無くして目が覚めてからアイちゃんに相談する。
『なんか竜聖国がマズイって』
《うん?また何か来たのですか?》
『うん。この前の竜巫女って人だと思う』
《ふむふむ。何なのですか?》
『クーデターと、戦争だって』
《へえ?それはまた大変な事ですね》
『うん。それで助けに行こうと思うの』
《へえ?何故ですか》
『困ってるらしいから。反対?』
《いいえ?特には。ですが貴女に1つ条件を出します。まあ、大した事ではないですが》
『何?』
《ある事柄で迷う事があるならば、メリットとデメリットをしっかり考えるべきです》
『えっと。メリットはわかんないや』
《デメリットは?》
『面倒とか?』
《色々なタイプの面倒が存在しますね。ですが大きい事は国家に肩入れをすると言う事です。それはメリットでもあり、デメリットでもあります》
『うん』
《親切心を食い物にする者もいます。だからこそ考えて行動しなければ痛い目に会うかもしれないと思うのです》
『わかってる』
《助けたいのですか?》
『勿論』
《わかりました。ならば色々調べましょう。時間はあまり無いかもしれませんが、場所もイマイチ分かりませんから》
『ありがとう』
そうと決まれば早速変装をする。今冒険者ギルドに行くのは少し嫌だが仕方ない。情報を得る為に、ここよりも適した場所を私は知らない。案外あの人達とは会う事は無いかも知れないから。
冒険者ギルドに入ればチルダさんも、赤銅もここにはいないみたい。適当な受付に並んでから順番待ちをする。自分の番になったので、竜聖国について尋ねる。
「竜聖国の情報が知りたいんだけど」
「り、竜聖国ですか!?」
「うん。何か?」
「そ、そのあの国は非常に危ない国です。出入りする者は管理されており、許可がなければ逮捕されたりしますよ?」
「関係ない。場所は?行く術は無いの?」
「場所は遥か西です。国境の街まで馬車が一応あります」
「成る程。幾らくらいかかる?」
「近くの街までの派遣なら、依頼として存在します。それならば馬車はこちらで手配しますので無料で行けます」
「本当!?」
「ただ、その募集要項が、言いにくいですが最低4人です。内容はその町のギルドの依頼をいくつかこなす事ですね」
「うぐっ!」
「どうしますか?」
「えっと」
悩んでいると声が聞こえる。その声は私に話し掛ける物だった。
「おはよう」
咄嗟に振り返る。聞いた瞬間分かったが、声の主は赤銅のリリアさんだった。
「あ、おはよう、ございます」
そう言ってお互いに顔を合わせてから沈黙する。そして
「「ごめんなさい!」」
同時に謝る。何事かと反応する周囲の人達。お互いに固まる光景は少し面白い。だが分からない事が多いので質問をする。
「あの?何故?」
「あ、いや。昨日はごめん。泣いてたって聞いたからさ」
「い、いえ。僕こそ優しくしてくれたのに、そのお礼も言えず」
「でさ、報酬も渡せて無いから、借りを返したいんだけどね」
「あ、いえ。それは別に」
「良く無いよ!今少し話聞いたんだけど、4人じゃ無いと駄目だって?その、良かったら私達とパーティー組まない?」
「でも、それは。迷惑を掛けてしまいます」
「まあ、ルル次第だけど。ね?悪い話じゃ無いはずだよ?」
「で、でも」
そう言い淀んでいれば他の2人も合流する。敵というわけでは無いがこのままだとマズイと判断する。いやまあ別に負けるとかそう言うのでは無いのだが。
「あ!なになに?ルビー君捕まえたんだ」
「確保。リリアナイス」
「ふふん。流石は私でしょ?」
「あ、とやっぱり怒ってますよね」
「「「え??」」」
「その、迷惑を掛けてしまい」
そう言えば3人が首を傾げ、沈黙する。ひょっとしてただの考え違い?でも確かに昨日は私に怒っていた筈。翠木亭では確かにピリピリしていたが。
「あーいやそれは無いよ」
「怒る理由は無いよね」
「それよりも並んでる。早くしてあげた方がいい」
「あ!すいません」
かなり並んでいるのに話し込んでしまい、周りに謝れば1人の冒険者が口を開く。
「たく。早くしてくれよ?」
と言いながら笑っている。昨日の人とは違い、案外優しい人も居るみたい。怒ってる人はいないらしい。
「でさ‥‥‥て訳で」
「おっけ」
「うん。構わない。数日帰れなくても」
「で、上手くいけば、仲間に」
辺りに気を取られていると、3人組がコソコソと話している。時折頷き不自然に笑顔になる。そしてリリアさんから
「ね?私達でよければ手伝おうか?」
「え?」
「その依頼。私達ならオッケーだよ?」
「で、でも」
「じゃあ、貸しにするから。私たちが困ったら助けてくれると嬉しいな」
「あ、で、では。わかりました」
そう言って臨時パーティーは再結成される。どれだけ断ろうとも言い包められるだろう。アイちゃんに相談しようとしても、何故か話は聞いてる筈だがアドバイスしてくれない。まるで私に言い負けさせようと、或いは勝つ術はアイちゃんですら無いのかもしれない。
何はともあれ私の目的である竜聖国へ行く術は整う。しかし何もかもが人の手助けであり、少し悔しいながらもその優しさに感謝をする。暖かい心に身を任せて準備を進めるのだった。
前回のタイトル詐欺ですね。でも訂正はしません。と言うか中々喧嘩させるのって難しいんですよね。両者の喧嘩ってお互いに正義があって、その中でもすれ違いがあって、というので無いとあまりにどちらかだけが悪いと言うのは不自然ですから。まあ敢えてあのタイトルにしたと言う事にしときましょう。そもそもやっぱり仲良しが良いと思ったのでこの話です。