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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
四章 竜聖国
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八十二話 平行なる道

泣き疲れて落ち着いた頃には夜になり、翠木亭で働く。宿の客の殆どは冒険者であり、食事処としての客も同様である。では働けないのかと言えばそう言う訳では無い。視線は不快な物では無いので、問題無く働ける。とは言え怖い物は怖いので最初は恐る恐る出てきたがなんのことはない。冒険者の時とは違って優しい雰囲気に包まれ忙しなく働く。


凪の如く、心穏やかに働いていると大きな波紋を呼ぶ客が現れる。それはかの3人組。赤銅の女性達である。対応しない訳にもいかないので心臓の揺らぎを無理矢理押さえ込み向かう。


「い、いらっしゃいませ」

「3人なんだけど」

「ど、どうぞあちらへ」


席を案内すれば特に何事もなく、3人は席に座る。どうも3人組は不満が溜まっている様で、何かを口々に話している。つい聴き耳を立てる。


「はあー、あのヤロー」

「うんうん、許せないよね」


会話を聞いた少女は背筋を震わせ、表情が固まる。この変化に気付いた者はいない。よせば良いのだが、聞いてしまう。耳を閉ざそうとしても入ってくる為仕方無いのだ。


「次見かけたら、消し炭にしてやる」

「こらこらルル。まあマスターが叱ると思うけどね」

「そんなんで許せるの?」

「いや、まあ?」

「丁度杖を買い替えたかった」

「その杖最近買った筈だけど?」

「折れるまで行く。そもそも杖は殴る為の道具」

「「それだけは絶対違う」」


震えながら奥へと戻る少女。一応まだ会話は続く。


「アイツの所為でさあ?あの子がどっか行っちゃったんだよ?」

「うーん。報酬も渡しそびれたよね」

「魔法使い仲間が増えると思ったのに」

「そう言えばあの子が冒険者をやってる理由が凄いよね」

「うん。恩返しってマスターは言ってた」

「私達はお金の為だけどルルは?」

「あ!そう言えば聞いたことない」

「ん?そうだっけ?家族の為だよ」

「へ?」

「弟を養う為」

「なんかごめん」

「別にいいよ。いろんな人がいるから気にして無い」

「だからか」

「ん。でもそれは半分くらい。本当は魔力が見れなかったから強いだろうと思ったの」

「私達は見てなかったけど、倒す所見たんだよね?どうだったの?」

「殴って気絶させてた」

「え!?」

「その後直ぐにナイフで刺してから、その、怒られた」

「んん??」

「油断してると思って庇ったら、必要無かったみたい。私の反応速度よりも臨戦態勢への移行が速かった」

「庇って噛まれたのか」

「怒ってると思ったら、泣いてた。私の為に。良い子だった」

「つまりあの子は強いんだ?」

「ナイフと剣だからかなりハンデになるけど、あの子1人でもリリアとアルカよりも強いかも。近接戦闘なら可能性はあるかもとかそう言うレベル」

「え?嘘?」

「本当に?」

「それ程瞬発力がある。なのに魔法が使える」

「1人でヘイトタイガー倒してたっけ?それも傷跡が首元だけだったとかね」

「素材で頭骨を見た人がいるらしいけど、殆どが折れてたって話だよねえ」

「恐らくの死因は頭への鈍器。殴ったのかな?素手で」

「首のは?」

「血抜きだろうね」

「肉は殆ど問題無かったらしい。仕留めてすぐに血抜きしてる」

「益々必要だよね?」

「剣士2人に魔法使いは少しバランス悪かったからね」

「是非仲間にしよう」

「まあ、次会った時だね。でもどうだろうね?トラウマにならなければ良いけど」


少女の聞いていない会話は終わる。以降には少女の話題は出ない。仮に出たとしても少女が聞くことは無いのだから。

少女の異変に気付く者はいない。ただの1人を除くのだが。そして少女は働きながら何者かと会話をしている。


『やっぱり怒ってるね』

《ふむ、謝りそびれましたからね。どうしますか?》

『謝った方がいいかな?』

《そう思います。ですが貴女の決める事です。嫌ならば逃げるのも選択肢の一つです》

『逃げても怒らない?』

《私が怒る事はあり得ません。まあ貸しは無いのですから気にする事は無い筈です》

『でも、マスターも怒ってるって』

《そこが少しわからないです。トラブルを起こしたから?だとしても事情を知っているので仕方ないと判断する筈なのですが》

『回復魔法を使ったからだよね?』

《もし、それが原因ならばとても不味いですね。推定される未来の中でも最悪の結果です》

『どうして?』

《国から拉致されるかもしれません。或いは脅しとか?》

『え、?』

《とは言えそれは可能性としてはありますがかなり低い筈です。マスターとやらが怒っているのであれば問題無いと思います》

『そ、そう?』

《しかし赤銅が怒っているのがわからないのです。うーん?》

『やっぱりアイちゃんはすごいよ』

《何を言ってるのです?貴女の方が凄いですよ》

『そんな事ないよ』

《何もしなくても貴女には良い結果が付いて廻ります。私の考えなど無駄かもしれませんよ?》

『どう言う事?』

《考える必要など無いのかもしれませんよ》


途中からアイちゃんはよくわからない事を言い始める。自分で考えてみると約束したから必死に考えるも良い答えは出ない。その日を終えるまで思考を動かし続けるのだった。

目安として3人組の能力を書いておきます。

リリア=C- 剣士 アルカと幼馴染 奔放

アルカ=C- 剣士 聞き上手

ルル=C+ 魔法使い 小さい子に優しい、口数少なめ

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