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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
四章 竜聖国
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七十九話 目指す果て

少女は何者かと会話をしている。ここでは他に聞くものは居ない。


《本当に助けるのですか?》

『うん。アイちゃんは反対?』

《反対です。かの者の自業自得だと考えます。現に貴女は反応が出来ていた》

『でも、私を庇ってくれたんだよ?』

《だからなんですか?クロ、よく考えてください。回復魔法が存在するのかもわかりません。ましてや貴女の魔法であれば間違い無く目立つ筈です。あの幼子ならば問題無いでしょう。ですがこの者達は言うなれば他人です》

『だからと言って私に見逃せって言うの?』

《‥‥‥決めるのは貴女です。そして貴女ならば助けたいと言うのも解っていました。ですが人というものは‥‥‥この前の事で理解した筈です。いつか貴女に牙を剥く愚か者がいるやもしれません》

『私が負けるとでも?』

《そうは言っていません。ですが貴女はそんな者にまで情けを掛けるはずです》

『‥‥‥しないよ』

《そうですか?まあ良いです。貴女が決めた事ならば私に止める事などありません。可能な限り貴女を助ける事が私の役目ですから》

『ごめん』

《そんな貴女だからこそ私の予想を超えて行くのでしょうね》

『どういう事?』

《なんでもないです。さて、助けて貰ったのは事実です。お礼は言っておきましょう》

『うん』


そう言って会話を終える。そして私は両手を差し出してお礼を言いながら魔法を発動する。傷痕の周りが青く輝き、ルルさんの腕を治す。歯形は完全に消えて、思いっきり指圧を加えて感覚の有無を確認する。痛がったので治った様子だ。


「痛っ!うぁ」

「我慢して下さい。問題無いみたいですね」

「あ、ありがとう」

「え!?え?回復魔法?」

「僕の魔法です」

「な、成る程。それなら顔も隠すか」

「回復魔法って存在しないのですか?」

「い、いや。一応ある。けど熟練者でさえ応急処置位しか出来なくて、魔力も相当使うから存在しないと言って良いくらい少数だね」

「希少度が高過ぎてお国に保護される位には価値が高いよ」

「君程の腕前なら君を巡って戦争が起きるかも」

「そうですか。なら内緒でお願いします」


私がそう言えば3人共頷いてくれて、どうやら内緒にしてくれるみたい。どうなる事やらと思いながらも治したけれど結果オーライだよ。


「ごめんね。ルビー君。私の所為で」

「ううん。ルルさんは僕を庇ってくれたから」

「おやおや?何があったのかな?詳しく教えてよ、ねえ?ルル?」

「なんでもない」

「へえー?私も気になるなあ」


私を置いてけぼりで3人で盛り上がる。所謂これが姦しいと言うヤツだろうか?一応私も女の子なんだけどね。それよりも良いなあ。3人が仲良さそうで。私も仲間が居たらなあ。そんな事を考える。


《貴女には私がいますよ?》

『うん。わかってるよ。でも私は人じゃないからね。時々寂しくなるよ』

《そうですね。貴女の全てを受け入れてくれる人はいるかもしれません。それでもいない可能性が高いのですよ。苦しいと思います。それでも私は貴女が強く生きていて欲しいと願います》

『うん。ありがとう』

《力になれず、申し訳ありません》

『違うよ。アイちゃんがいつも私を想ってくれているのは知っているよ』

《はい》


悪い訳でも間違っている訳でもない。なのに私に謝るアイちゃん。お互いに寂しさを覚えながら黙る。ふと前を向けば3人が私を見ている。なんだろうかと考えると


「ねえ。今回の報酬どうする?」

「僕は‥‥‥一匹だけなので少しだけ頂ければ」

私がそう言ってしまえば、少し空気が固まってからリリアさんが話し始める。


「あーその、お願いがあるんだけどね」

「はい?」

「今回の報酬は君が貰うべきだと思うんだよね。それで良かったらその、私達のパーティーに入らない?」

「え?」

「報酬はさ、君が治療してくれた代金には遠く及ばないけど、内緒にもするしどうかそれでお願い出来ない?」

「えっとその、少し混乱してます」

「あ!いや、そのまあ、考えてくれると嬉しいかなーって」

「他の皆さんは良いのですか?」

「ルルを治療してくれたからね。その恩には変えられないよ」

「うん。仲間になって欲しい」


私みたいな我儘を仲間にしたいと言ってくれる赤銅の人達。でも私は‥‥‥どうしようか?何が正しいのかよくわからない。アイちゃんはどうだろうか?


《貴女が望むなら良いでしょう。貴女が揺らぐのならそれはきっと価値のある物です》

『うん、でもさまた、あの時みたいにならないかな?』

《どうでしょうね。ただ正解は無いのかもしれません。貴女はよく私を頼ります。それはとても嬉しいです。でも私と貴女の求める結果は、至る結果は違うという事でしょうね》

『難しいよ。どう言う事?』

《難しいのですよ。ですがまあ、悩む事も大事なのかもしれません》

『うーん』


聞いても答えは出ない。恐らくアイちゃんでも難しい事なのかもしれない。だから答えを出せないので


「少しだけ、考えさせて下さい」

「あ、うん!そうだよね。ごめんね急に。また今度でいいから」

「まあ仲間では無くても一緒に依頼を受ける事も出来るし、そんなに急がなくても良いからさ」

「うん。また良かったら。お願い」


結局報酬は4等分になり、4人は帰路に就く。各々は思考に耽り、少しぎこちない空気を纏いながら街へと戻るのだった。

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