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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
四章 竜聖国
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七十八話 優しさ

任務を受けた女性3人+男の子1人の冒険者パーティーが街の道を通っている。正確には全員女性なのだがそれを知っている者は本人を除いてこの辺りにはいない。さぞ周りの者の神経を逆撫でしている事だろう。まあ4人組には関係のない事かもしれないが。


さて今回の依頼はCランクの風狼の群れらしい。単体ではDランクだけど、群れるらしいからCランクの依頼になっている。群れのボスがいる事が予想されており、弱いながらも魔法を使うらしい。魔物は基本魔法が使えるから魔物なのだが、Cランク程度ならばそれ程脅威でも無い。とは言え当たり所が悪ければ死んでしまう可能性もある。ではCランク未満の魔物は弱いのかと言えばそうでも無くて、肉体強化が出来る魔物もいるから油断は出来ないみたい。私には関係無いけれど。


なんやかんやで街の外に出て、目的地へと向かって歩き始める。退屈なのかルルさんが私に話し掛けてくる。


「ねえ?君はなんで仮面をしてるの?」

「あ、その、色々あって」

「そう。なら魔法は使えるの?」

「いえ、魔法は苦手です」

「ふーん?」

「な、何か?」

「私魔力感知が出来るんだけど。君魔力が一切見れないから」

「え!?」

「魔法が使えなくても見えないのはおかしい。実は魔力を隠してない?」

「うっ!」


不味いと思い思考を動かす。どうやって誤魔化そうか?そう考えて取り敢えずアイちゃんに匙を投げる。


『どうしよう!?』

《まあ、別に問題は無いです。ただ使える魔法を教えては駄目です。四元素が使えないですから》

『肉体強化は良いの?』

《まあそれしか無いですね。誤魔化せそうになかったら肉体強化が使えると言うしか無いです》

『わ、わかった』

『魔力操作が上手過ぎると良くないのですね』


一旦アイちゃんとの会話を終えて、ルルさんに言う


「その、一応魔法が使えますが、内緒です」

「そう。やはり」

「まあ詮索してあげるなよ?ルル。困ってるじゃん」

「うん。困らせるつもりは無かったの。ただの興味」

「い、いえ」

「まあルルは魔法使いだから。君を誘いたいって言ったのはルルなんだ」

「ごめん」

「いえ、僕を疑っているのではないと言うのがわかったので」

「折角の協力なんだから、知っておきたいのはあったんだけどね。まあルビー君が内緒って言うなら仕方ないよね?ルル」

「うん。気になるけど我慢する」


私への質問責めは終わり話題が切り替わる。


「なら君のそのナイフ見せて欲しいなー」

「そう!私も気になってたんだよね」

「私は興味ない」

「えっと、では」


そう言ってナイフを抜き手渡すとルルさんが興味無いと言ったのに抜いた瞬間に表情が変わる。念の為嘘を織り交ぜる。


「え?何その魔力」

「わあ凄い。高そう」

「なんだか禍々しい物だね」

「黒龍の魔力が宿ってるらしいです。その、貰い物ですけど」

「それなら確かになんでも切れそうだねー」

「抜くまで魔力が感知出来ない?どう言う事?」

「黒く光ってる」

「それは街中で抜くと大変な事になりそうだね」


ある程度見たと思うので仕舞う。皆んなが無言になってしまったが仕方ない。私も会話が苦手だし。ある意味丁度良いかも。


目的地である森に着き、依頼の魔物を探す。対象は奥地に居るらしいので私含め武器を抜いて進み始める。ルルさんが指示を飛ばし目的地に向かう。どうやら魔力感知があれば魔物を探すのに苦労しないみたいだ。私の魔導認識操作によく似ているね。私のは魔力では無く、物が有るか無いかで判別するから根本的には違うけど。魔力の有無を調べるにも右眼を使えば良いから必要無さそうだなと考えていると、どうやら目で見えるくらいに近付いたみたいだ。敵さんにはもう既に気付かれている様子。匂いかな?と呑気に考えていた。


戦闘は群れの数匹が飛び込んで来る事で開始する。リリアさんとアルカさんが剣を使って巧みに捌いていく。単体は2人が倒して、固まっている所にルルさんが尖った水の塊を放っている。これは良いね!私やる事ないや。


そしてどうやら前衛2人も盛り上がって来たのか群れに向かって飛び込む。バッサバッサと薙ぎ倒す剣士2人。正直カッコイイ。私はやる事なくて退屈。2人が仕留め損ねたのをルルさんの魔法で補う。見事な連携で、ソロには無い良さを感じ取る。

そんな事を考えていると裏に回り込んだ一匹が私を狙っているのに気付く。やる事が出来て嬉々として身構えて迎撃態勢に移る。飛び込んで来るのもわかっていたので振りかぶる。


血が飛び散る。しかしその血はルルさんの血で右腕を負傷してしまった。私が斬ろうとした瞬間に私を庇う為右腕を差し出し、結果噛まれた。

すぐさまその狼の背中を殴って地面に叩きつける。気絶した狼にナイフで止めを刺してからルルさんを見る。

血が出て非常に痛いのか、苦しんでいる。

助けなくても良かったのに、なんで?と私はそう考え、問う。


「どうして助けたんですか!?」

「君が狙われてたから」

「私は助けなんて必要無かったですよ!」

「っ、!ごめん」

「どうして」


私は怒っているはずだ。でも何故か涙が流れる。そもそもなんで私は怒ってるの?助けてくれたのに。助けてくれた人にお礼を言ってもいない。なのに身勝手に怒って、謝られている。

そう、解っている。私自身が油断していたから。この怒りは自分に向いていて、ルルさんには八つ当たりだ。泣いているのも自分への情け無さだと。


「泣いてる?」

「ごめんなさい。助けてくれたのに」

「ううん。良いの。無事で良かった」


益々涙が溢れる。私に怒る事無く、未だ心配をしている。そして2人は異変を感じ取ったのかこちらに戻って来る。群れのリーダーを倒したみたいで、他の狼は四散している。


「ルル!無事!?」

「何があったの!?」

「ちょっとヘマした」

「ルビー君は?怪我は?ない?」

「はい」

「そっか、よかったよ」


そう言われて私は気付く。この人達は底無しのお人好しだと。この借りは返さなければ、そう思い両手をルルさんの右腕に当てる。

一言だけ、礼を言ってから


「ルルさん、ありがとう」


仮面を着けた少年の左目が青く輝き、女性の腕は光と共に傷痕が残る事無く完治する。女性は苦悶の表情から一変して驚きへと変化する。

痛みは和らぎ、まるで攻撃を受けたのが幻の如く消え失せてしまう。その神秘的な光はその場の全ての者を黙らせてしまうのだった。

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