七十七話 遠きよりの伝言
深い夢の世界。浅い意識が繋がった状態の私。ふわふわと浮かんで心地良い感覚に身体を預けている。するとそこにノイズの混ざった様な声が聞こえる。
「ザザッ‥‥さま‥‥」
「ん?だれ?アイちゃん?」
「黒龍さま!」
「え!?誰?」
「ああ!やっと繋がりました。いまお話ししてもよろしいですか?」
「う、うん?」
「いまどこにいますか?」
「えっと?お家?かな。それよりもあなたは?」
「こ、これは失礼致しました。私、第14代目竜巫女と言うものです」
「へえ」
「初めて繋がりました。あー良かったです。それよりも黒龍様は今何をされているのですか?」
「寝てるけど?」
「いつお戻りになられますか?」
「ん?どう言うこと?」
「私たちの国では黒龍様の帰還をお待ちしています。もう何年も戻られていないので民たちも不安で。宜しければあなた様の国、竜聖国へどうかお戻り下さい」
「私の国?」
「まさか、記憶が?」
「かな?」
「な、あ、失礼しました。その、であればこそ是非竜聖国へとお越し下さい。お待ちしています」
よく分からない人からの伝言は終わりそのまま意識が覚醒する。念の為アイちゃんに相談する。
『ねえ?聞いてた?』
《おはようございます。どうかしました?》
『あ、うんおはよう。聞いてない?』
《ふむ?わかりませんね。何かあったのでしょうか?》
『うん、竜聖国の竜巫女と言う人から帰って来てくれって頼まれて』
《へえ?恐らく父と勘違いしていると思いますね。ただまあよくわかりませんね。少し考えます》
『お願い』
取り敢えず竜巫女の事はさておき、リナちゃんと一緒にご飯を食べに行く。さて今日は冒険者ギルドに行く予定なので、食事を終えて直ぐに着替える。リナちゃんは一緒に行きたいみたいだけど、連れて行くと気付かれるので残念ながら私1人だけだ。
ギルドへと辿り着けば、相変わらず注目されていて慣れてはいるけれどなんとなく嫌な感じ。視線を無視してチルダさんの受付の所に行く。私が並べばチルダさんが他の人と受付を交代してから、私を会議室に連れて行く。
何故かそこにギルドマスターが来て話が始まる。
「お久しぶりですね。ルビー君」
「うん」
「今までどうしたんだ?Cランクになってから一度も来ていないだろう?心配したぞ」
「色々と忙しくて」
「今日は仕事をしに来てくれたのですか?」
「うん、一応」
「そうでしたか。ルビー君と一緒に仕事をしたいと言う者がいまして、どうしますか?」
「あー、辞めておいた方がいいぞ」
「なんで?」
「僻みかな」
「成る程」
「まあ、そうでしょうね。とは言え確証が無いから私からは断れないですし」
「一緒に依頼を受けるメリットは?」
「安全だな。人が多いからと言う意味で。だが僻まれているならメリットは無いな」
「断ったら?」
「余計僻まれるだろうな」
「厄介だね」
「でも、赤銅さん達なら多分違いますよ」
「誰?」
「女性3人のパーティーなんですけど」
「それは別の意味で僻まれるだろう?まあ本人は男の子では無く、嬢ちゃんだけどな」
「なんでも良い、けど僻まれるのは面倒」
「赤銅さん達と依頼を受けてみますか?」
「メリットは?」
「あなたの活躍次第で良い噂を広めてくれるかもしれません」
「わかった受ける」
「でしたらお呼びしますね」
「俺は仕事に戻るが、何かあったらちゃんと言ってくれよ」
そう言って2人は一度退室する。少し待ってから3人を引き連れてチルダさんが入って来る。よく見ればリナちゃんと遊んでくれてた冒険者パーティーの人達だ。3人だったのか、と考えていると赤胴の人達が話し掛けてくる。
「君がルビー君!?私達は赤銅と言うCランクパーティーのリリアです。よろしくね!」
「あ、はい。ルビーです。よろしく」
「アルカだよ」
「ルル。よろしく」
「はい、よろしくです」
「それでは依頼が決まったら私の所へ来て下さい。カウンターで私の名前を呼べば出て来ますから」
自己紹介も終わりチルダさんはそそくさと戻る。私達も依頼を探しにエントランスへと戻る。リナちゃんを妹に欲しいと言っていたのがリリアさん。どっちが良いの?と訊いていたのがアルカさん。話さなかった人がルルさんだね。ルルさんの印象は話さない人といった感じかな?気が合いそう。そんな事を考えていると会話が始まる。
「何にする?」
「念の為、簡単なのにするかな?」
「どっちでも良い。この子に危険が無ければ」
「あ、僕もなんでも良いですよ?」
「まあ、お手並み拝見って感じで緩めのにしておく?」
「そうだねー。まあギルドがCランク認定したなら多少は大丈夫でしょ?」
「ギルドは嘘をつかない。メリットが無い」
「あ、やっぱり。疑われてるんですね」
「あー、私達は疑って無いけどね。まあそう言う噂もあるね」
「僕と一緒で良いんですか?」
「関係無いよ?興味あったし」
「そうそう。まあ後はルルがね」
「ん?どう言う意味ですか?」
「なんでもない。君は気にしなくて良い」
よく分からないが敵意は無いらしく、このままなら依頼を頑張れば周りの評価も変わるかもしれない。しかし一月行かなかったけど、まさかこんな事になってるとは。サボりは駄目だね。まあサボっていた訳ではないけどね。
結構悩んだみたいだが、リリアさんが1つの依頼書を持って受注に行く。こうして試験を除く初めての合同依頼が開始するのだった。