七十五話 債務者?
自室へと戻って貰った箱を開けてみると見事なサファイアのペンダントが入っており、一瞬でお高い物だと判断出来る。鏡を見ながら着けてみる。見計ったかの様に扉が開きリナちゃんが立っている。そして
「おねえちゃんおかえり!」
「うん。ただいま」
振り返って返事をするとペンダントに気が付いたのか凄く見ている。そして予想はついていたが、次の一言が
「おねえちゃんキレイ!わたしもほしい!」
「う、でもこれ結構高くてね」
「わたしもほしいの!」
「うーん、また今度何か買ってあげるから」
「ちがうの!おねえちゃんとおそろいがほしいの」
「今度頼んでみるから、我慢出来る?」
「うん!あそんでくれたらいいよ」
どうやら我慢出来る様だ。しかし買ってあげる約束をしてしまった。勝手に物をあげたら怒られるかもしれないから、女将さんに後で言っておこう。
まあそれよりも本当にお金が無いんだよね。交渉の為に全財産出したから。向こうも卑怯な事ばかりしてきて引けに引けなくなったんだよね。まあそのお陰もあってか無事リナちゃんを保護出来たんだし、必要経費だよ。その事はなんとも思ってないけど、殆ど働いてないからお金が全く無い。
明日からは冒険者業も復活出来そうだし、夜は翠木亭で働く事にしよう。ダブルワーカーだね。最近は出掛けてもリナちゃんは問題無い、寧ろ家族仲を強くする為に外に出る様にしている。
まだ昼まで少し時間があるのでリナちゃんと遊んであげる。魔石を取り出しリナちゃんに渡す。
どうやらリナちゃんは魔法適性があるみたいで、魔石を使うと風魔法が出せる様だ。まだまだ弱くてそよ風かな?と言った具合だが、練習すれば強くなるらしい。
最近私は魔法の勉強もしていて、四元素は基本的に誰でも使えるみたい。ただし基本一種類で優れている者は種類が増えたり、肉体強化や特殊魔法が使えるらしい。私は四元素が全く使えないけどね。私に憧れて魔法の練習をするって言ってるけど、私もよく分かって無いからね。
取り敢えず危なく無い様に見守ってあげてる私。何かあっても治療出来るから私にしか出来ない事だよね。
少し魔法を使ったら疲れた様に眠りこけるリナちゃん。魔力欠乏は結構危なくて、人間だとその手前で眠ってしまうみたい。そこから無茶をすると体内の魔力核が傷付いたりして、下手をすると魔法が使えなくなるらしい。魔力欠乏は滅多な事では起こらないけどね。今もリナちゃんは魔力欠乏では無く、疲労状態なだけだから。
一応女神の祈りをして疲労を解除しておく。最近のコレのお陰で私の祈りには、精神と肉体を癒す効果がある事も解っている。まあ睡眠は解けないけどね。
膝枕で寝ているリナちゃんを撫でながら、一つの大きな問題を考える。
それはなにかと言うと、リド防具店で着替えられなくなってしまったと言う事。最近お客さんが増えてから私が入り浸る訳にはいかなくなってしまった。リドさんは歓迎してくれているのだが、あまり贔屓も良く無いと思い少し控える様にしている。贔屓云々は別にしたとしても、あそこで着替えるとそろそろバレてしまうだろう。主にその理由で冒険者業をどうするか悩んでいる。約束もあるからそろそろ復帰したいけど何も良い案が出ず、隅の方に投げていたのだが流石に不味い。
親友に相談しても良い方法は思いつかず、リナちゃんと遊ぶ事で現実逃避していた現在である。しかしどうにかしたいので親友に無茶振りをする
『ねえ?どうしよう』
《色々と考えたのですが、もういっその事女将さんに相談してみてはどうですか?》
『え?まあ考えてたけど、どうかな?』
《必ず気付かれるならば、まだ女将さんがマシです》
『なんとかなるかな?』
《やってみなくてはわかりません。万全を期しても思い通りにはならぬ事もありますから》
『了解』
そう言って会話を終えてから、昼まで少し待つ。お昼寝をしても夜眠れるリナちゃんはこの時間が大好きみたいで幸せそうに寝ている。幸せそうに寝ているリナちゃんを眺め、暫しの暇を過ごす。
昼、夜と働き、ある程度暇なタイミングを見計らって女将さんに話し掛ける。
「イミナさん、相談があるのですが」
「ん?大事なことかい?珍しいね」
「はい。少し困った事があって」
「ふむ?なら部屋に行こうか?」
「お願いします」
そう言って2人で私の部屋へと向かい、私の小さな秘密を打ち明ける。
「と言う訳なんですけど」
「そっか。誰にも気付かれ無い様に冒険者をやってて、その為の方法が今は状況が変わったと」
「はい」
「うーん、正直な話冒険者はして欲しく無いんだけどね」
「ですよね。なので内緒にしていたんですけど」
「リナは知ってるのかい?」
「内緒の約束をしています」
「そうかい。わかった。説得しても駄目なんだろうから、なんとか出来る様に考えておくよ」
「良いんですか?」
「まあ、クロの為だからね」
「ありがとうございます」
私がお礼を言って話は終わる。取り敢えず明日からの復帰は恐らく無理だろうが、女将さんがなんとかしてくれるかもしれない。私は毎度の事ながら助けてもらっている。どんどん恩が溜まっていき、返すのに何年掛かるのだろうか?そう思いながらその日を終えたのだった。




