表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
四章 竜聖国
74/292

七十三話 想い

さて、今回から第四章です。(暫定)タイトルは「竜聖国」です。一旦節目の章も終わり、心機一転といった感じです。どうぞ楽しみにして下さいませ。

風は落ち葉を攫い、少し寒い。日は出てから半刻、朝の秋模様である。木々に葉は残っているので夏を越えて直ぐ、と言う所だ。


さて、とある宿に住み込みで働く姉妹がいた。血が繋がっている訳では無い。だがその絆でお互いを大切にしていて、本物の姉妹となんら遜色ない。殆ど何時も一緒で、今もご飯を共に食べている。何を思ったのか妹の方が姉に向かってご飯を差し出す。


「おねえちゃん、あーん」

「え!?な、なに」

戸惑っている姉を見て、少し不満げに頬を膨らませてもう一度繰り返す

「あーん」

「えっと、でも、恥ずかしいし」

「たべてくれないの?」


妹は悲しそうな表情で姉を見つめる。その顔が効いたのか、姉は観念して食べる。まだ大して寒くは無いが、湯気が出そうなほど真っ赤になっている。その状況を眺める宿泊客達や女将さん夫婦。笑顔の絶えぬ宿である。

様子を見ていた女将さんがやって来て言う。


「全くもう、朝から何やってんのさ」

「すいません。イミナさん」

「あ、ごめんなさい。その、お、おかあさん」

「まだ慣れないか」

「ふふ、良いのさ。ゆっくりで。それよりもクロもうちの子にならない?」

「昨日お伝えしましたが、私の親はただ2人だけです。その、ごめんなさい。でも、嬉しかったです」

「仕方ないね。まあいつでも歓迎するからさ、気が変わったら言って欲しいね」


とても優しい言葉を掛けられ目が潤む。昨日やっと正式にリナちゃんの親権を女将さんに移す事が出来た。それに伴って昨日はお店を休みにしてから色々と会話をした。女将さん達はリナちゃんを快く引き取ってくれたので、昨日から家族になっている。その際に私も家族にならないか誘われていた。でも私は断る事にした。リナちゃんは納得出来ていないみたいだが仕方がなかった。その場では適当にはぐらかすしかなかったが、その一月ほど前にアイちゃんと話したから。私はその会話を思い出す。


《クロ、貴女は昔何者だったか知っていますか?》

『昔?前世と言う事かな?人だったんだと思うけど』

《ええ、そうですね。ある世界から来たんですよ》

『ふーん』

《驚かないのですね》

『時々そうかな?って思う事があったから』

《そうでしたか。では、貴女の親についてです》

『父は黒龍だよね?』

《そうですね。そして母が恐らく女神です》

『え!?敵同士だったんじゃ無いの?』

《確証は無いですが、貴女の力を抑える程です。ほぼ間違い無いでしょう。例えば銀髪碧眼と言う情報も貴女の左目と一致します。他には‥‥自分で見た方が早いでしょう。右眼で己を覗いてみて下さい》


そう言われて右眼の力を使う


体力 300 /300

筋力 266

敏捷 107

防御 53

魔力 2702 /2706

耐魔 281

魔法‥‥魔導認識操作 肉体強化 女神の祈り

状態‥‥封印 対認識

特殊能力‥黒龍の眼 龍化/人化 龍鱗 

     不可視の歪衣 魔力回復II 龍技I

     蒼神の導き


能力がかなり伸びているのはさておき、二つほど項目が増えているので右眼で詳しく見る。


女神の祈り‥‥‥傷を治し、安らぎを与える。効果は使用者の優しさに左右され、自身には使用出来ない。愛情溢れる者の象徴。


蒼神の導き‥‥‥神の加護。神へと至る素質。神に類する能力が宿る。


あれ?いつの間にか神になってるよ私。なんでだろう?あの魔石を光らせたからかな?そう考察しているとアイちゃんから否定が飛んで来る。


《違いますよ。アレのほんの少し前です。女将さんに励まされてた時です》

『どんなだっけ?』

《辛くても貴女は他人の事を思っていました。その時に吹っ切れたのでしょう。貴女から優しい光が出て私を包んだので、その報告も兼ねてお話をしているのですから》

『成る程?』

《あの子が寝てしまったのは女神の祈りの効果ですね》

『そっか』

《話を戻します。次は封印についてです》

『うん』

《分かりやすく言います。封印者は私です。封印が解けたら私は消えます。以上です》

『え?』

《分かりましたか?》

『え、いや?ちょっと待って。封印者はアイちゃんだよね。それよりも解けたら消える?』

《何か?》

『本当なの?』

《はい》


その言葉を聞いた私は一瞬頭が回らなくなっていたのだろう。そこから少し会話が止まる。その後の言った言葉は少し後悔してる。でもまあ、お互いに本音を言い合えたのだから結果的には良かった。

つまりなんと言ったかと言うと


『アイちゃんの馬鹿!!』

《ば、馬鹿とはなんですか!?》

『馬鹿だよ!この大馬鹿アイちゃん!!』

《な、な》

『あー時々悲しそうにしてたのはそれだったんだ。まさか黙って消えるつもりだったんじゃ無いの?』

《そ、それは》

『はい、ぷっつーん』

《え?》

『今からそっち行く』

《え?と?どう言うことですか?》

『大人しく座って待ってて。逃げたら許さないから』

《は、ハイ!》


何故かは知らないが、アイちゃんの居る空間へと行ける気がしたので接続する。するとそこには私に瓜二つの少女が居た。違いと言えば両目とも赤だと言う事だけである。どうやら言われた通り、と言うか正座して怯えている。


《ど、どうやって来たんですか?》

『さあ?神の力だよ。多分ね』

《お、怒ってますか?》

『うん。それはもう』


そう言って抱きしめる。涙をこぼし泣き始めるアイちゃん。初めてアイちゃんに勝った気がする。それよりもお説教タイムが始まる。


『どうして黙っていたの?』

《嫌われると思って。わ、私は嘘つきですから》

『ふーん。私が嫌いになると思ってたんだ』

《ごめんなさい。黙ってて》

『もう、良いよ。許す。でも困った事があったら助け合おうよ?私とアイちゃんは2人で1人なんだから』

《私は貴女の偽物です》

『そ、じゃあアイちゃんの気持ちも偽物なんだ』

《そんな訳ないです!》

『なら、それで良いじゃん』

《うっ、》

『私アイちゃん好きだよ?だから黙って消えないで』

《すみま、せん》

『うん』


そう言って2人抱きしめ合う。話をする流れでは無く、もう暫く少女達はこの時を過ごすのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ