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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
三章 慈愛
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七十二話 幼女神の奇跡

タイトルは「ようじょしん」ではなく、

「おさなめがみ」です。まあどちらでも良いですが。

これはとある女の子と触れた者達の物語である。



日の出る前の早朝。そこで会話をしながら沢山の料理を作る夫婦が居た。その夫婦は家兼、宿屋であるお店の大将夫婦である。ほんの少し前まで料理が美味しいことで有名なお店であった。立地が良く、冒険者の集会所が近い事で人気のお店である。


そのお店には最近働き始めたと言う少女が居る。色んなものが小さな(背丈や声などなど)看板娘が、大変可愛らしくその娘が目当ての客が増えている。最初の頃は興味本位だけの客も、その少女の事情を聴いた事で常連となる者が増えている。中々人間関係は苦手なのだろうが、妹が出来てからは雰囲気が良くなっている。元々人気ではあったが、それに拍車を掛けた少女は女神の加護とも言うべき影響力であった。


少女は恩を感じているのだが、それは間違い無くお互い様であると夫婦は考える。最初はただの従業員のつもりだったのだが、日に日に少女は馴染み、教えた事は直ぐに吸収する。とても賢く思いやりがある。そんな少女が愛されない訳が無い。今では少女無しは考えられぬ程には感謝をしている。しかし夫婦は最近悩みがあって、子供が欲しいと言う事である。なので夫婦は姉妹共々望めば家族にしてあげようと思うのだった。



日は山に掛かり、暑さの残る時間帯。カウンターに肘をついてぼんやりとしている男性がいる。ここは一応お店である。閉店時刻は未だ来ていないが店主の男性はだらけている。別に店主は怠け者と言う訳では無い。寧ろ度の過ぎた真面目である。

ではこのお店は全く客が来ないのか?と思うだろう。

まさにその通りである。だが一つ訂正をしておく。全くと言う訳では無い。昔ならばその言葉が正しかったのだが今はそうではない。ある事がキッカケで優良店だと認識されている。それは他でも無い。ある少女を助けたと言う噂が広がり、少しずつではあるが客は増えて来ている。助けたと言うのも間違いでは無いのだが、一部誤認がある。まあ客からすれば大して変わらないのだが。


元々このお店は商品が綺麗で、派手さは無いが丁寧さでは他店の追随を許さない。だが悲しいかな目立たないのだ。故に客は来ず、並ぶ人が居なければ目立たない。その悪循環に陥っていた。常連客を少しだけ持っていて、その者らは他店よりも良いお店だと知っている。それはそうだろう。客観的に他店と比較すれば、安く質が良い。


そしてリド防具店に通う少年が話題になっている。新人が一週間足らずでCランクに昇り詰めたのはひょっとしてこのお店のお陰なのでは?と言う事である。まあ検討外れの幻想だが、思い込みの効果は出ている。いずれは加速度的に人気は出るだろう。しかし未だ成らずと言った状態である。


店主は少女に感謝をしている。それはお互い様だとどちらも感じているのだが。それはさておき、少し前まで値段を安くしなければ目にも留めて貰えなかった。入店した冒険者らしき者は、黒髪少女や変な格好の少年の話題を話しながら買い物をして行ってくれる。その2人が同一人物だと知っている店主は、最近では仕事が楽しく感じている。


藁にも縋る気持ちで、正に神頼みの半ば諦めで少女に色々してあげた。その結果がこれである。店主はどうにか恩を返したいので仕事中にもかかわらず、少女に良く似合うリボンをイメージするのだった。



そこには一つの魂が居る。この世界の中では時と言う概念はかなり希薄である。望めば進み、願えば戻る。限定的な情報を取り入れる事が可能で、唯1人のための部屋である。この中は酷く退屈で、眠る事も何かをして遊ぶ事も出来ない。1人泣きながら喋り始める。


「ああ、貴女は本当になんて事を」

「偶然ですよね?だってこんな事って」

「覚悟を決めていたのに。揺らいでしまうでは無いですか」

「まだもう少しだけ貴女の側に居られる」

「どれだけ考えても、記憶を探しても、貴女には敵いません」

「クロ、大好きです」


そう言って誰も聞こえぬ部屋で自身の女神へと想いを告げる。泣いているのに悲しみは一切無い。寧ろ表情があったなら間違いなく笑顔で、泣きじゃくっているだろう。

嬉し泣きをしている魂は考え始める。


私は消滅の危機に瀕していた。殆ど諦めていた。それでも私は怖くて方法を探した。でも見つけられなかった。貴女の怒りによって黒龍の力の封印が解け掛けてしまった。覚悟したのに。母の力ですかね?だとしても奇跡を起こしたのは貴女自身です。そう、女神の力。慈愛に満ちた貴女だからこそ覚醒出来たのです。私には不可能だった事。だって私は貴女以外の人間は嫌いですから。父と母を奪った人間が憎いです。ですが貴女には話しておかなければなりませんね。どうか、嫌いにならないで欲しいです。


魂は自身の女神に全てを伝えることを決意する。少しだけ、頭の中を整理して少女へと繋ぐ。



優しき光に照らされた2人の女の子たちは幻想的な世界に酔いしれる。どうやら安心したのか、幼女は少女に体を預けて眠り始める。

少女はリナちゃんを抱きしめて撫でてあげる。心地良いのか起きる気配は無い。仕方ないなと思っていると、親友がいつもと違う雰囲気で話しかけて来る。


《クロ、少し良いですか?》

『ん?どうしたの?少し慌ててる?』

《ええ、まあ。重要な話です》

『わかった。この力についてかな?』

《はい。まずは》


親友は少女に話し始める。それは2人の出会いから始まり、父母の想い。封印についての説明。少女の力について。そして最後に寿命と親友の気持ちを告白するのだった。

いかがだったでしょう?今回で三章は終わりです。


色々と説明したいところもありますが、長くなると悪いので1つだけ。


少女の感情が不安定だったのは魂の結合が進んだからですね。戦えば成長しますがそのかわりパワーバランスが崩れ侵食が進むと言った具合です。かなり早くにアイちゃんは気づいたのですがそれはいつからでしょうね?



さて本編関係ないですが、最近予約投稿なるモノを試したのですけど、コレ良いですね。中々どうして素晴らしいと思うので基本0時投稿に統一します。気付かなかった作者は少し恥ずかしいですが、今後とも読んで頂ければと思いますですm(*_ _)m

19時に変更しています。度々お騒がせして申し訳ないです。

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