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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
一章 優しき出会いと別れ
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六話 看板娘のカナ

少し歩いて、(正確には、抱っこで連れて行かれて)辿り着いたのは風来亭と言う、何とも和やかな食堂である。

大きさだけでいえばこの村の中でも2番目に大きい。

とは言え、1番大きいのは村長宅なので比べるのも変な話ではある。

また、2番目とは言っても、あくまでこの村基準であり、丸型テーブルが8つ置いてあるだけの簡素な店である。良い雰囲気が、売りの店である。


それはさておき、中に入ってみれば昼時もあってか、沢山の人の話し声や騒ぎ声が聞こえる。

相席で食べるのが普通の食堂で、それでも空いている席は無いと思えるくらいには満席である。

因みに、この世界にある全ての村の中でも特にこの村は小さい部類である。


そして話し始める2人の男達。


「遅かったかな?かなり混んでいるな」

「あん?いっつもこんなもんだぜ昼は」

「そうか。確かに考えてみれば昼はほとんど来たことがないな」

「おっ?あそこだ。3人座れるな」

「本当だ。座ろう」


そう言って、私は2人の間に座らせられる。

すると、他に座っている人がトライさん達に話し掛ける。


「おい、遂に誘拐か?アルバスお前ってやつは。それにトライまで一緒に。特にトライ、お前はカミさんに殺されたりしねえのか?」

「バカ!ちげえよ。テメーと一緒にすんなガース。遭難してたから、村に連れてきてやっただけだよ。なあ、そうだろ?」

「ああ、そうだ。それにフレアには説明したかったんだが、家にいなくてな」

「ふーん?」


少し疑る様な目で、私を見るガースさんと言う人は少し苦手だと思う。なので、つい下を向いてしまう。

それより、フレアさんと言うのは会話の感じで察するに、トライさんの奥さんってことかな?

おっと、余計な事を考えたかも?それよりも誤解を解かなきゃ。


「はい。2人には命を助けて貰って有難うございます」

「うわ、小さいのに礼儀正しいな。悪いな疑って。それよりも、良いとこの嬢ちゃんかも知れねえが、どうすんのよ?」

「取り敢えず、トライのとこに預けるのが良いだろうな。また後で俺たちは、村長に報告しに行くから大丈夫だろう」


そう言って話していると女の人が近づいてきて


「いらっしゃーい。注文は何?って、何!この娘!?滅茶苦茶可愛い子じゃん!遂に誘拐?」

「お前らは全く。揃いも揃って同じことしか言わねえなあ」

「だってー?それはねえ??アルバスさんだし」


そう言って、アルバスさんとこちらを見る女性の店員さん。目線が私達を行ったり来たりしてる。

まあ、確かにアルバスさんは普通の人じゃないよね。見た目的に。

そんなことを考えていると、トライさんが会話を断ち切る。


「カナちゃん注文いい?」

「あっ!忘れてたどうぞ」


そう言って、各々注文していく。トライさんが私のも頼んでくれた。暫し、待ってから料理がきた。


「はい、お待たせ。お嬢ちゃんには、お姉さんからサービスでリンゴだよ。あと、名前は聞いても良いかな?」


と聞かれたので、出来るだけの笑顔で名前を答える。


「ありがとうクロです」

「可愛い。何この娘、ヤバいわ」


2人はその言葉を軽く流している。

それよりも、店員さんなのに一緒に座ってて良いのだろうか?

考えても、仕方ないのかもしれないけど。


少し悩んでいると、トライさんが優しげに喋る。


「それじゃあ食べようか」

「俺はもう食ってるぜ」


まあいっか。許可を頂いたので食事に集中しよう。っとその前に


「いただきます」

「あん?何だ、それ?」

「私の住んでた国の、ご飯を食べる時のお祈り?みたいなものです。多分?」

「何だか疑問系だな」


私も言っていて思ったけれど、やはり曖昧な記憶だよね。そもそも、いただきますってどういう意味なのだろう?


「何だか、忘れてはいけない気がしたので」

「えっ!?クロちゃんひょっとして記憶喪失なの?まずいじゃん!」

「まあ、そう言うわけだから、この娘には優しくしてやってくれると嬉しいな」


紹介までしてくれるトライさん。とても有難い。


こうして、村の人を覚えながらも、みんなと仲良くなれたら良いなあ、と思いながら食事を楽しむのであった。

ちなみにカナさんは厨房から怒られてました。


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