五話 永遠の親友
因みに『』内のセリフが主人公で《》がもう1人の方です。またこのかっこは2人専用で2人の会話の時に使ってます。
辺りは少し寂れていて、手入れをされていない草木に一面覆われている。そんな、特に代わり映えない景色を抜け、ようやく辿り着く。
そこは、村である。少しずつ切り開かれている跡を感じはしても、全然開拓は進んでいない、そんな印象の村である。
『わかった』
「さあ着いたよ。クロ」
龍眼さんとの話を終えて、トライさんの声で目を開けると、気付けば村に辿り着いていた。第一印象は、物語の中の世界に入ったような気分で、まだ見ぬ生活にワクワクしながら辺りを見回す。
キョロキョロしていれば、私に話し掛ける、トライさん。
「取り敢えず、僕の家に案内するよ。ご飯とか食べないといけないだろうしね」
「なら、俺は村長に報告してくるわ。あと忘れてたが娘っ子に、これを渡しとかねえとな」
そう言って差し出されたのは、大の大人の掌くらいの玉である。完全な球体で直径20㎝くらいである。
「なにこれ?」
「さあな、嬢ちゃんを封印するのに使ってたものさ」
《吸魔の宝玉ですね。貴女の魔力がこめられてます》
アルバスさんと龍眼さんが同時に答える。片方は心の中でだが、気になったので質問してみる。
『この宝玉を何とかしたら私の封印解けるの?』
《いいえ?貴女の魔力を使って、周囲の魔力を吸収してから、魔物を寄せ付けない結界のような、何かの役割を果たしていたみたいです。なので、貴女自身の封印には関係がなく、むしろ貴女を守っていたようです》
『じゃあ、私を封印したのは、私のために封印してくれたの?』
《そこは何とも、わからないです。封印には記憶なども含まれているでしょうし、そもそも貴女はまだ黒龍にしてはかなり弱い方です。何故なら生まれたてと、同じくらいの能力みたいなので》
『生まれたてってことは、ずっとあの中にいたのかな?』
《その可能性がありますね》
それを聞いて心の会話を終了して、アルバスさんとの会話を再開する。
「ありがとう。こんな価値のありそうなもの貰ってもいいの?」
「確かに、そうかもしんねえが、嬢ちゃんを封印する為に使ってたんだから、俺らが勝手に持っていくわけにも行かねえだろ?預かってくれって言うなら、持っといてやっても良いけどな」
やっぱり、顔が怖くてあまり話さないけど、良い人なんだなって思った。顔は怖いけど。持ってても仕方ないかな?と思い。
「なら預かってて欲しいな。私には役立てそうにないし」
「これを加工して、武器にでもしたらどうだ?かなり良いもんが出来ると思うんだがな」
「お前は女の子に武器を薦めるなよ」
「あん?女だからって、戦わねえとは限んねえだろうがよ?護身用のでもあれば違うだろうし、そもそも封印されてたんだぞ?敵がいるかもしれねえじゃねえか」
「まあそうかもしれないが、それはまた後程、追々考えれば良いと思うけどね。まあ、それよりやっぱり風来亭に行こう」
「奢りか?」
「まあたまには良いだろう。それに嘘ではなかったしな。報告はいいのか?」
「言った通りだったろ?報告は飯食った後に3人でいけばいいだろ?」
そう言って、抱えられたままどこかへ連れていかれる私。おそらくは、食堂か何かへと連れて行ってくれるのだろう。なので、また龍眼さんと会話をする。
『ところで、あなたには名前はないの?』
《そうですね。おそらくですけど、意識だけの存在なので》
『じゃあ名前つけて良い?良い名前が思いついたの』
《はい。お願い致します》
『うん。あなたをね?これからは"アイ"って呼ぶね?どうかな』
《はい、わかりました。眼から取ったのですか?》
『うん。それと、知能という意味もあるよ?よろしくねアイちゃん』
こうして、同居人との自己紹介も終えて、またもや揺られながら他愛のない会話をしつつ、風来亭へと行くのであった。
いや、連れて行かれるのだった。
ちなみにアイちゃんは女の子です。