五十三話 勘違い
結局昨日はリドさんと夕方ぐらいまでお話しをしてから集会所に戻り、身分証の入った封筒を受け取る。そのあとはまたリド防具店で着替えてから人目につかない様に宿へと帰り眠った。
朝起きてロビーへと向かうと、女将さんがご飯を持ってきてくれる。他の宿泊客と同様に朝ごはんを頂く事にする。食べようとすると男の人が近くに来た。そして
「やあ隣いいかい?」
断る理由もないので「どうぞ」と言う
「ありがとう。君はここで働いてるんだよね?」
「うん。夜だけ。是非夜ご飯も食べていってね」そう言って営業する
「ああ、暫くここに泊まってるから基本ここで夜は頂く事になると思う」
「そう」
これ以上会話を続けられるだけの能力は無いので話が終わる。と思いきや
「そう言えば君、リド防具店にいたよね」
そう言われて食べ物を刺していたフォークが喉に突き刺さる。
「むぐっ!」
何故知っているのかわからないが、取り敢えず冷静になろうと思考を動かす。が、咽せてそれどころでは無い。
「げほっ、ごほっ!」
「わっ、悪い!大丈夫か!?」
水を差し出されたのでそれを貰い飲み干す。取り敢えずどうして知っているのかを聞いてみる
「なっ、なぜそれを?」冷や汗を掻きながら問う
「あ、いやほら手甲を持って行った時にお願いしてくれたんだろ?店主さんに」
あーアレか、ではバレてる訳では無いのだろうか?確かに言われてみればあの時の冒険者さんだね。焦って損したよ。そう思い自分のコップの水を飲む。
「いやー防具屋に女の子が居たからあの時は結構焦ったよ」
「リドさんにはお世話になってるから時々行ってるの」
「へえ?防具でも買うのかい?」
問われて焦る。「そうだよ」なんて言ったらマズい。それはそうだろう、料理屋?で働いている女の子が防具屋に行くのは不自然だと今更ながらに気付く。なんて言い訳しよう??焦っていると
《困っていた時にご飯をご馳走してくれたという設定はどうでしょう?》
『それだよ!んで今はここで働きながら住んでるって言えば良いよね』
《ええ、中々良いアイデアです》
決定したのでその内容を冒険者さんに説明すると、何故だか知らないが周りの冒険者さんまで泣いている。ついでに言えば何故か女将さんに頭を撫でられている。
そして閃いたと言わんばかりの表情で女将さんが
「ああ、そうだお嬢ちゃん。買い物をお願いしていいかい?」
「えっと?良いですけど急ですね」
「ああ、野菜の在庫がきれそうでね。頼まれてくれるかい?」
「わかりました」
そう言うと女将さんが今書いたばかりのメモを渡してくれたので私は買い物へと行く。
そして少女のいない食堂兼ロビーではほぼ全員が女将さんの方に顔を向けている。そして高らかに女将さんが言う
「いいかい!お嬢ちゃんはあんなに小さい子共なのにとても頑張っているんだ。だから絶対あの子に変なことをするんじゃ無いよ!ミスとかもあるかもしれない。でも全部の責任はアタシにある。文句なら全部アタシに言いな!わかったかい!?」
その言葉を聞き、殆どの冒険者が頷きながら返事をする。ハッキリ言ってこの状況は色々とアブナイ。まるで宗教である。だが、当の信仰対象の少女は今はここにいない。
少女の預かり知らない所で大変な事になっているが恐らく今後知る事はないだろう。それはさておき少女は買い物を楽しむのだった
そう言えば主人公の年齢は12歳ですが、栄養の関係などで身長は約120cm程度です。この世界での平均は現実の平均よりやや低いものとして考えて頂けるといいです。(平均より−5cm)
因みに主人公の身長は予定では伸びません。なのでストンは改善する事はないです。なのでそこの成長を期待している方には申し訳ないですが諦めてください。