四十六話 2つ目のお仕事
朝ごはんを終えた少女は、現在お出掛け中である。
少女が働くのは、冒険者さんの多い夜だけだが、毎日働く事で、三食と宿が付いてくる。
たまに仕事を休んでも良いが、休む日は要相談らしい。
とても破格です。
それはいくらなんでも条件が優しすぎると、私が言ってみれば、女将さん曰く、それでも元は取れるらしい。
どうやらあの宿はとても儲かっているらしい。
それはさておき、少女は何故出掛けているのかと言うと、この間の防具屋さんに用事があるからである。
用事というのは、今後毛皮を持ち込む事は不可能かもしれないと説明する事である。
何故説明が要るのかって?
アイちゃんと話した結果、この街の中で当面は暮らして良い事になったため、私は街の外へ出ないかもしれないからである。ナイフを貰っておいて約束を守れないのは申し訳ないので、取り敢えず事情を説明しに行く。
一度行ったことがあるので迷わずに辿りつける。
この前と変わらず人気が無いところがとても良い。
言ったら怒られそうだけど。店の中に入ると店主さんが居た。
「いらっしゃい。嬢ちゃんか」
「おはようございます」
「物を卸に来た訳では無いか」
「えっと、ごめんなさい」
「いや、気にするな。何か用事か?」
問われたので事情を説明する。
私の働く場所について。
今後毛皮を持ち込む事は難しいかもしれない事。
休みは取れるが、恐らく狩りに行くと言えば止められるであろう事も。
色々話すと店主さんは考え出して、待っていると質問して来た。
「嬢ちゃんは、それらがなんとかなれば、毛皮とかを持って来てくれるのか?」
「お礼もしたいですし、私にとっての日課だったので」
「ふむ、ならばこれなんてどうだ?」
そう言って仮面を取り出す。
「それは?」
「基本的に嬢ちゃんの出来る範囲で毛皮を持って来てくれれば良い。後はバレない様にする為に、顔を隠して冒険者登録して狩りに行くと言うのはどうだ?」
「顔を隠して登録出来るの?」
「身分証さえあればいけるはずだ。そもそも嬢ちゃんは物凄く目立つ。仮面をつけてもそこは変わらんが、これだけだと変人と思われるだけだ。嬢ちゃんを知っている奴は案外気付かないかもしれない」
「でも背格好が誤魔化せないよ?」
「それはうちに来て変装すると言うのはどうだ?身長は変わらんが、何か羽織る事で印象はかなり変わるはずだ」
どうするか考えているとアイちゃんが
《確かに変装はいいアイデアですね。貴女は人に気付かれると厄介な事にはなりますから可能な限り情報を隠す練習の為にも良いでしょう。今後冒険者として生きて行くのかどうかは別にしても、冒険者と言う立場は身分証明にもなりますからね。例え街から出ざるを得ない場合になっても役立つ事でしょう》
と言われたのでやる事は決まる。そして
「不定期になるけど出来るだけ頑張ってみる」
「わかった。助かるよ」
そう言われてホッと胸を撫で下ろす。約束が変わってしまったが店主さんは問題ない様なので、ナイフの恩を返す為にも今後も狩りを続けて行くことを決定したのだった。