四十三話 お仕事
お金を返す事が出来たので少女は冒険者ギルドを後にする。日は傾きもうすぐ夜になるので帰ろうかと思っていた所だったが
《折角ですからこの街に泊まっていきませんか?明日は観光などどうでしょう?》
『良いの?』
《もう日が暮れてしまいますから。たまにはのんびりとしましょう。クロはいつもよく頑張っていますから》
『うんわかった宿を探してみる』
《聞いておくべきでしたね》
こうして2人が少し後悔していると偶然にも宿屋らしき物を視界に捉えたのでそちらへと向かう。なんというか民宿?の様な感じの建物に、食堂を足した様な内装である。所謂ロビー兼食堂である。そして一度体験したので今度は一切の迷いなく受付に向かって進む
「あの、一泊したいのですが」
若干声が震えていたのだがそれに気付いたのは親友だけである。そしてその言葉を聞いた女将さん?は答える
「あら?いらっしゃい。夜と朝の食事はどうしますか?」
「お願いします」
「でしたら鉄貨10枚です」
言われて銀貨を一枚差し出す。それを見て女将さんは受け取らずに話す
「と思ったのだけどこれから夜ご飯を食べにお客さんが増えるので、良かったらウチで働かない?一泊二食付きで無料にするから」
「え?でも私働いた事が無いです」
「いいのいいの。全て教えてあげるから。むしろお願いしたいのだけどどう?働き次第では給金も出すからお願い」
「えっと」
少し悩んでいると
《折角ですからやってみてはどうですか?何事も経験です》
『でも私人が苦手だよ?』
《何も人前に立つとは限りませんから。それに頑張ったらお金も貰えるかもしれませんよ?》
『じゃあやってみる』
「未熟者ですがお願いします」
そう言って頭を下げると、女将さんが笑いながら
「アッハッハなんだか丁寧な子だね。うんうんこちらこそよろしく頼むよ。早速なんだけど着替えをしようか?ちょっとその服では良くないからね」
確かに服は少しボロボロなので、また明日買いに行くことを決定する
「ほらこっちだよ」
店内の奥に案内され衣装ケースから女将さんが、中から制服?を取り出す。着せ替え人形にされていると、そこに男性がやってきた。
「ん?雇うのか?」
「ああ、人手不足だからね。勿論了承してくれたよ」
「そうか」
少し話しをしたと思うとすぐにまた部屋から出て行く。もうこの時点では着替えは終わっており、後は髪を押さえる帽子の代わりの三角巾を着けて貰っていた所である。
「それじゃこれで完了だね。もうお客さんは居るようだから働きながら教えるからね」
そう言って先程のロビーへと戻る。すると意外と時間が経っていたのかいくらかのお客さんがいた。もう日は沈んでおり夜ご飯を食べに来た冒険者達が入っている。
気合を入れて宣言する
「頑張ります!」
どうやら私の仕事は注文を聞く事と、料理を運ぶ事らしい。とても緊張しているのだけど不思議な高揚感に任せ、色々と教えて貰いながら注文を聞く。あまりに忙しかったのと緊張でほとんど記憶に無いのだが、およそミスはなくなんとか乗り切る。ある程度客足が収まると女将さんが晩御飯を用意してくれたので、制服のまま食べて良いとの事で頂くことにする。
食事を終えてから疲れていたのもあり、すぐに寝てしまった。だがとても楽しくお客さんも良い人たちだったので、また機会があれば頑張りたいなとも思い眠るのだった