三十九話 毛皮売りの少女
漸く街に入ることが出来た少女は、親友に質問をする。
『何をしよっか?』
《そうですね、ではここでクロに少しお話をしましょう。何をすべきか迷っているならば、やらなければならない事を最優先に考えてみるのはどうでしょうか?》
『やるべき事?お金を返すかな?』
《ふふ、流石はクロですね。ではどうやってお金を用意しましょうか?》
『毛皮を売る』
《では毛皮を扱ってそうな所を探してみましょうか?》
『うん!わかった』
《しかし何をすべきかで真っ先に出て来るのがお金を返す事なのは、いかにもクロらしいですね》
『うん?どう言う事?』
《ふふ、なんでもないのですよ?気にしないで下さい》
『ふーん?』
なんだか釈然としないまま会話は終了して歩き出す。皮屋さん?を目指して辺りを見回しながら進む。
完全に側から見ればお上りさんなのだが
なんだかんだで商業区に辿り着き、毛皮のみを扱っているお店が無かったので、防具を扱っている人気の無いお店を選ぶ。
「ここなら毛皮も扱ってるようだしここにしよ」
《何故人が少ない所を選んだのです?》
『え?だって‥‥‥怖いもん』
《はあ、まあわかりました。入ってみましょうか?》
その言葉を聞き店内に入ると人は居ないが中はとても綺麗で、様々な手入れのされている防具が展示されている。そして感動で思わず言葉が出る
「わあ、すごい」
声が聞こえたのか奥から店主と思しき人が、出て来る。
「なんだ?ここは子供が来る店じゃ無いぞ?」
「あ、ごめんなさい」
「冷やかしなら帰ってくれ」そう言ってカウンターの前に座る
「違うんです。買い取って貰いたいものがあって」
「まあ、一応聞こうか?」
そう言ってくれたのでカバンの中から皮を取り出す
「うん?嬢ちゃんがやったのか?」
問われて答える「はい」
「まだまだだが、お嬢ちゃんがやったにしては上出来だな。わかった買い取ってやる。全部で銀貨8枚だな」
「えっと」
「もし今後も安定して持って来るなら少し色をつけるがどうする?」
「その、相場がわからなくて」
「ん?そうか。まあ相場ってのは物の状態にも依るから厳密にこう、てのは無いんだがまあ騙すつもりは無いから安心してくれ」
《ここは多少足元見られてでも売る事には意味がありますよ?もし騙されていたならば勉強代にするしかありませんけど》
「まあ不満なら他所を見に行って来ると良いよ。大体これくらいか、もしくは少し少ないくらいだな」
「じゃあ売ります」
「そうかい?助かるよ。実はな?最近魔物が付近で出現しなくなったらしくてな?毛皮の供給が若干不足してるんだよ。まあ皮なら魔物でも野生動物でもどっちも買い取るから、持ってきてくれると嬉しいな」
その言葉を聞き少しヒヤリと背筋が冷える。
『絶対に私のせいだ』
《ま、まあ過ぎた事は考えても仕方ありませんよ?》
そんな事を考えていると店主さんが愚痴る
「それにな?元々野生動物を狩る冒険者があまり居ないから、ただの毛皮とかはそれなりに需要があるんだよ。魔物の素材は高いから防寒着とかを作るだけなら普通の皮の方が人気なんだ」
「そうなんだ?」
「まあお嬢ちゃんが良ければ殆どの素材は買い取るから是非持ってきてくれ。出来る限り言い値で買い取るぜ」
取り敢えずお金の算段は付き、少し安心しながらバックをチラリと見て考える。
ひょっとしてアレも売るならば買い取ってくれるのだろうか?少し期待をしながらバックに手を伸ばすのだった