三十八話 到着
4人組に案内してもらって漸くニーベルに到着する。それまでは良かったのだが中に入ろうとすると門番の人に止められてしまう。
「ちょっと待った。初めて見る顔だな?通行証もしくは住民カードはあるか?」
その言葉を聞き首を傾げながら答える
「なにそれ?」
聞いてみるとそれとなくリーダーが教えてくれる
「この街に入るには身分を証明するものが無いと入れないんだよ。あーもしかして?」
「うん」
「あーお前らは行っていいぞ、お嬢ちゃんは身分証を作らないといけないからあっちに行ってくれ」
そう言って奥の方を指差す。
気になったことがあるので門番の人に質問をしてみる
「身分証を作るのに必要なものはあるの?」
「犯罪歴が無いかの確認と、銀貨一枚が必要だがもしかしてお金も持ってないのか?」
「うん持ってない」
それを聞いてリーダーが
「それだったら立て替えておいてあげるよ」
そう言ってポーチの小袋から銀貨を一枚取り出し渡して来る
「でも」
「まあまた今度返してくれるといいよ」
「おう、後これ、バック」そう言って私のカバンを下ろして渡される。
そして4人組は門を潜り中へと入って行った。
《色々と売ったお金で返せば良いのですよ。折角の親切ですから受け取っておきましょう。》
その言葉を聞いて門の中の建物に向かうと、事務作業をしている人が居たので話しかけてみる。
「あの?身分証を作れと言われて来たのですが?」
「うん?それじゃあこっちだよ。そこに座ってちょっとだけ待っててくれ」
そう言って何やら棚に置いてある丸い透明な塊を取り出して私の目の前に置く。
「さあこれを両手で触ってみて」
言われた通りに両手で触ってみると特に何も起こらず、事務の方は透明な塊を見ながら書類を書き込んでいる。
「あの?これは?」
「これかい?個人情報を調べることが出来る道具だよ。犯罪とかの履歴が見れるのさ。とは言ってもなんでも見れるわけじゃ無いし、僕が見たものは本人への説明もしなくちゃならないから安心して」
「えっと」
「それじゃあ確認だよ。あなたは女の子で12歳、犯罪歴は無し、とまあ以上間違いないかい?」
それを聞き少し疑問に思い心の中で相談する
『年齢は知らなかったし、自分は女の子なのは間違いない。後は犯罪歴が無いのもまあわかるけど、この道具で見られてしまったのは本当にこれだけ?』
《まあクロは感知に対する耐性がありますから貴女から情報を盗める生物は中々居ませんよ?それにあの道具が大した物では無いのかもしれませんし》
『まあ取り敢えずの不都合は無いから良いけど油断は駄目だよね』
《ええ、その通りです。なのですがまあ折角ですからこの街を楽しんでみてはどうですか?この道具で見れないなら少なくともこの街では安全でしょうから》
『うん。わかった』
会話を終了して応答する。
「間違いないです」
「じゃあもう直ぐ身分証出来るから少し待っててね」
「はい」
こうして待つこと数分でカードが出来上がり、事務の方が大きなハンコを押して渡してくれる。
「さあこれで終了だよ。最後に手数料で銀貨一枚を貰うことになってるけど、払えるかい?」
「あ、はい」そう言って手渡す
「うん、確かに。それじゃあ改めて。ようこそニーベルの街へ!楽しんで行ってね」
「はい、ありがとうございます」
そう言って門の小屋から出て街へと向かう。新たなる場所に心を躍らせ、少しの不安も持ちながらニーベルに入ったのだった。