三十六話 断てない繋がり
重要な情報も手に入ったし、この辺りで話は終了かな?と判断を下そうとしていた時に2人は思い立った様に話しかけて来る。
「そうそう、一人暮らしは不便じゃないか?」
「ん、特には」
「そうか?良かったら狩りとかで得た肉とか皮とかをニーベルに売りに来ないかい?」
「うーん」そう言っていると
《良いですね。食事も飽きて来たでしょうし、何よりこの前のミスリルを加工出来るかもしれません。それに衣類等はいくら代謝がないとしても最低限必要ですから》
『まあ確かにナイフは一本しかないし、服とかも大分ささくれてるね』
《では決まりですね》
『アイちゃんこの前はあまり乗り気じゃ無かったのに?』
《まあどちらがクロのためかと考えたら、今は行く価値があります。行くのが怖いですか?》
『そんな事ない』
と言いつつも内心では、また拒絶されるのでは無いのかと考えてしまう。一度思うとどんどん悪い方向へと考えてしまうから、できるだけ忘れる様にしているけれど、中々そう割り切れない自分もいる。何より村の人達にはお世話になりっぱなしで何も返せず、別れも言わず飛び出して来ているからより申し訳なくなる。
そんな考えを読んでなのか
《大丈夫ですよ。いつまでもそばに居ますから。困ったらいくらでも頼って下さい。》
その言葉を聞けば不思議と胸が暖かくなり、自然と笑いがこみ上げて来る。
『いつもありがとう。アイちゃんと一緒なら頑張れる気がする』
こうして笑いながら2人の人達に告げる。
「うん行ってみる事にする」
「そっかそうと決まれば、数日ほどこの山に居ても良いかい?調査が終わったら一緒に行きたいんだがどうかな?」
「直ぐじゃないの?」
「まあ仕事があるからこなしてからが良いんだ。済まないねこちらの都合で」
《まあ一緒に行ったほうがいいですね。ないとは思いますが家などを荒らされては困りますからね。監視も含めて一緒に行きましょう》
「ううんいいの」
「じゃあ戻る頃になったら訪ねるよ」
「わかった」
こうしてニーベルへと向かう決意をする。人から完全に離れてから生活するのはどうあっても難しい事であると理解した少女は、少しずつながらも人との関わりを持つ様になる。他人が苦手でも避けて生きて行くことは不可能であり、持ちつ持たれつの関係を築くしかないのだから