二話 少女の名前と記憶
声が聞こえる何処かから。誰だろう?男性2人組の話し声かな?
あれ?なんだか体が重くなってきた。フワフワした感覚が、ゆっくり少しずつ離れていくようなそんな感じ。
そして意識が覚醒して、自然と言葉を口にする。
「あれここは?‥‥‥どこ?」
そう言って私は考え始める。
私は誰?‥‥‥わからない。
ここはどこ?‥‥‥わからない。
私は自分の記憶を探る。そうだ。私は一度死んでいる。そして死後の世界で女神様と出会った。多分。
女神様は家族と私のお願いを聞いてくれた。そう、私を蘇生してくれた。
しかし、それだけ理解出来ていても、他の事は何も思い出せない。記憶を探り続けていると、つい聞こえてきた男性2人の声に反応してしまう。
私は咄嗟に質問をした。
「あなたたちは誰?」
そう言って私は、青年とコワモテの2人組の名前を聞いてみると、青年は少し驚いた顔をして答えてくれた。
「俺はトライ、こいつはアルバスって言うんだ。お嬢ちゃんは?」
質問されて気付いたのだが、自分の名前が思い出せない。だから、私は無意識に、自分自身に名前を聞いていた。
『私は誰?』
《名前はありません。参考までに貴女の種族は黒龍です》
突然聞こえてきた声に驚く。しかし興味が先走り、つい訊ねてみる。
『何?どういうこと?あなたは何者?』
《私は貴女の力によって、貴女の中にいる太古の黒龍の力の一部です。つまり従者のようなものです。はじめまして》
『はじめまして。名前ってどうすれば良いかな?』
《お好きな名前を名乗ってはどうでしょうか?》
『ふーん、それなら』
黒龍という種族から名前をもじって名乗る。
「私はクロ」
「そうかよろしく。取り敢えず、羽織るものを渡すよ。あとは、君を俺たちの村まで連れていくけれど、問題ないかい?」
そう言いながら、青年は服を渡してくれた。とても有難い。案内してくれるのは正直助かる。私は記憶が無いから、何をしたら良いのかも判らないし。そうだお礼言わなきゃ。
「ありがとう」
私がそう言うと、青年ははにかみながらも笑ってお姫様抱っこをしてくれた。
この人優しいなと思い、もう一度お礼を言う。
「ありがとう」
私は既視感を覚え、無意識に考える。私ってお礼言ってばかり。なんだか昔と変わらないなあ‥‥‥ん?あれ?昔?どう言うことだろうか?
私は不思議な感覚について、考え始める。しかし何も分からないので諦める。
そして青年は歩き始める。言葉と共に。
「どういたしまして気にしないで良いよ」
「おうそろそろ戻るぞ」
こうして私の生まれ故郷?を出たのだった。
いや出してもらったのだった。