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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十二章 黒龍飛翔
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二百八十九話 隔たり

統合知性ちゃん(?)と出会ってから半ば無理やり別れを告げさせられた。ラーナちゃんこと、王女様が不審人物だと言うから仕方なくだ。


不審、かどうかはさておき、統合知性ちゃんは不思議な子だとは思う。何であんなところにいたのか、お父さんのことを知っていそうだとか、そもそも透明な何かが意思を持っているのはどういった原理なのか。

興味が湧いた。

何者だろうか?


少しだけ口が悪かった。ラーナちゃんにだけ。私に対しては凄く丁寧だった。

何となく敵対的な感情は無さそうに思う。

悪い子ではなさそうだけど、ラーナちゃんとは相性が悪いのかな。

初対面から仲が良いのは難しいけど、逆に悪いのも中々だよね。

ちょっとアイちゃんに似てるところあるかも?特定の相手以外は拒絶する感じ。

私の感覚的には、基本的に他の人とは仲良くしようと考えるべきだと思うんだよね。もちろんお互いにね。


「全く!アレは何なのですか!?」


ラーナちゃんがぷりぷりしてる。

膨らんじゃって、私に同意して欲しそうに目線で訴えてくる。


「うーん、なんだろうねぇ」


ちょっと考え中。わからない事が沢山増えた。

質問したりすれば答えてくれたかもだけど、会話を放棄しちゃったからね。


「私達を下等生物などと馬鹿にして!」


私、には言ってなさそうだったけど。

そうだねえ。怒っちゃうよね。わかるわかる。煽られて頭にきちゃうのは仕方ないよねえ。


「イヴ様はどうお考えですか!?」

「えっ、私?」

「そうですよ。イヴ様の意見を聞きたいのです」


完全に愚痴を聴くだけの流れかと思ってた。

んー、そーだねー。強いて言うならばと


「お父さんの情報とか、知ってそうだった」

「あ、えっと。ごめんなさい」

「ん?何で謝るの?」

「折角の機会だったのを」


ああ。

会話を勝手に途中やめしたのが良くないと思ったんだね。まあ確かに、折角のお父さんについて知識を得る、貴重な機会だったとは思う。まあなんだけど、私一人で聴くのはどうだったんだろ。

私達家族の事に関する内容だと思うから、どうせなら三姉妹が集まってからの方が効率とか良さそうだよね。二人はお出掛け中だからね。

そういう事だからまた日を改めてから来ようかな?


ま、まあそれにね?知ってるとも限らないからね。だからラーナちゃん?落ち込まないで。


「気にしないで。知ってるかどうかも怪しいし」

「そ、そうですよね!見るからに嘘とか吐きそうですものね」


それはどうかなー。

真面目そうに感じたから嘘とかは言わない気がする。勘だけどね。

まあそれはそれとして、落ち込んでいたのは立て直せれたみたい。よかったよかった。


「はあー、色々と緊張していたので忘れていたのですが、その、あの」

「ん?」


何かを思い出したらしい、ラーナちゃん。

遠慮がちながら、私に言いたい事があるらしい。でも凄く言い難そうな様子。なんだろ。


「お花畑はどちらでしょうか?」

「それだったら入り口に戻ればて」

「そ、そそうではなくて!」

「えっと?」

「おといれを」

「トイレ?‥‥‥って、何だっけ?」


何だか微妙に記憶にあるような、ないような。トイレ。トイレって、何だったか。

んー。


「え!?トイレってアレですよ。トイレをする場所です」

「えっと、ごめん。わかんない」


そんな露骨に「知らないなんてあり得ない」みたいな顔しなくても。

トイレが何なのかはわからないし、その場所もわからない。わからないと言うことだけはわかる。つまりよくわかってないよ。ドヤ。

知らないくせにちょっと調子乗ってみた。


「あーもうまずいです」

「わからないから、さっきの子に聞いてみる?」

「あああ、何でも良いので早く」


そう言って私の服の一部を摘んで何かに耐えているらしい。

私は危機的状況を察知した。悠長に胸を張ってる場合じゃない。

という事でさっきの道をくるりんと逆戻り。戻ってきました。



「御早う御座います。黒禍」

「ごめん。急いでる」


さっきぶりだね。統合知性ちゃん。

丁寧な挨拶が始まりそうだったのでぶったぎりにした。

ピンチなのだ。プルプル震えてる。


「急ぎ、ですか。ご用件は」

「トイレ、どこ?」

「あちらです」


聞いたらすんなり答えてくれた。

て言うかあるんだ。

もしトイレが無かったら大変な事になってたのかも。

部屋の中にあった、幾つかの扉の一つから光が出ていて、ここだと主張している。

どうやらあそこがトイレらしい。

私はそれを理解して、理解したラーナちゃんは凄い勢いで突撃して行った。

間に合うと良いね。



「生命体には代謝があり、それらの処理が必要。相も変わらず不便極まりない」

「代謝?」


私たちはラーナちゃんを見届けた後、暇潰しにと会話を始めた。待ってるのも退屈だからね。


「はい。代謝とは、呼吸、発汗、排泄などと言った、生命体が生命を維持する為の、基礎的な消費活動の事です」

「うんうん」

「しかし我等が天帝には不要で、太古に誕生したその時より、廃れた機能です」

「ん!?」


ちょっと待ってほしい。代謝は生き物にとって生きるための大切な能力だと今教えてもらった。

しかしその能力(?)を、私は失くしてしまったという事らしい。生き物として必要なそれらが存在しない私は、文字通り生き物ではないって事?


「しかし代謝と似た機能は存在します。そもそも、代謝とはあらゆる消費行動を指し、不完全な生命体がそれらに依存して存在しているのです。しかし我等が天帝には不要で、単純な消費ではなく、単体で永久循環を行います」


代謝について説明された。

生命体。とは違う。生命体とは何か。私は。


「生命体って何なの?」

「定義付けるならば、寿命の有無です」

「寿命?」

「生命はその種に応じて、一定周期で代替わりが行われます。死があるからです。逆に言えば死がある故に生きていると言えます。しかし天帝に死はありません。完全なる存在なので」


難しい。けど、一つわかった。お父さんは亡くなった。それならその娘の私も死ぬ可能性がある。という事は私は生きていると言えると思う。

完全だと言われてるけれど、きっと何らかの穴がある。完璧ではない。

勿論、死ぬための方法を模索するつもりなんてない。別に死にたい訳でもないし、理由なく死ぬ意味もない。大切な人を護る為ならいいけど。


「ん?死なないなら盾になり放題?」

「黒禍天帝?」


とんでもない発見をしてしまった。攻撃を受け放題、やりたい(られたい)放題、喰らいたい放題だ。しーるどゔぁいきんぐ。


あっ、でも前に、フユと戦って負けた時は意識を失った。幻覚か何かかと思ったけど多分違う。何かが身体を貫通した感触はあったし。

目が覚めた時には傷跡とかなくて、アレ?ってなったけど。

あの時に死んでなかったので、夢か何かかなって適当に考えて納得したものだ。よくわかってなかったからね。

でも多分現実だったんだろうね。今思えば。


となれば死因になり得るのは、意識を奪われた状態で切り刻まれたりとかがダメになるのかな。試すのはちょっと怖い?

無意識で意識を取り戻せなかったらそれはつまり。


「まあ、最終手段かな。フユくらいの強い人がいたらって場合だね」

「黒禍天帝。先代にも進言申し上げておりましたが、我等を使役し問題解決を図るのは如何でしょうか」

「ん?」


‥‥‥別に特に困ってる事はないけど。


「我等が推測した結果。危険が迫っていると判断。でなければ天帝が盾になるなどと発言する意味がない。違いますか?」

「えっ」


まあ、確かにもう少ししたら戦争が始まっちゃうけど。別にそんなに。

でも味方が増えるのはありがたい?気もする。


「天帝の要求を全て用意するのが我等、統合知性の役目。今、再び役目を与えられる時が来た!」


うん。うん?

いや、別に、これ。

あっ、すごいやる気。でも何だか暴走気味で話が若干すれ違っている様な感覚がある。ちょっと不安な感じ。嫌な予感がひしひしと。


どうしよ。別に大丈夫だよとか言えない流れ?

そもそも何ができるかだよね。ほら、人それぞれ得意な事って違うものだから。

だからこう、色々と質問しながら、お茶を濁しつつ。


アーソーデシタカー。イマハダイジョーブデスネー。マタノキカイヲー。マニアッテオリマスノデー、アーザイシター。


「お待ちなさい!」


ででーん。

私が統合知性ちゃんに、何ができるのかを聞こうとしたらラーナちゃん来た。お帰りなさい。元気になったね。


「イヴ様、信用は危険です。あっ、それはそうとトイレはありがとう」

「‥‥‥礼は要らぬ。天帝の命に従うのみ」

「あらそう?」


見つめあってる?

統合知性ちゃんとラーナちゃんが。

統合知性ちゃんに目はないけどね。透明なガラスの塊だから。声とかどうやって出してるんだろうね。


「声とは音です。音を結晶から鳴らしているだけです。天帝と同様、我等はあらゆる言語に精通しています。音とは別の交流手段も持っていますよ。我等と、天帝は、"特別"なので」


すごい強調してる。特に特別。

というか会話をしなくても、考えている事が通じてる。


「ちょおっとイヴ様、よろしいですか!?」

「うん?わっ!」


ぐいぐいと押されて部屋の隅に。

ラーナちゃん怒っちゃってるっぽい。

こしょこしょばなしがしたいらしい。


「何ですかアイツ!?ムカつくんですが!」

「えっ?うーん。統合知性ちゃんが?私は別に気にならないよ?」

「んむむ」

「良い子だと思うんだけどね」


良い子だよ多分。多分。ちょっと不安な雰囲気だけど。

まあわからないけど。感覚だね。

こう、何となくだけど雰囲気ね。


「口が悪いです。気に食わないです」

「まあ、うん。ねえ?」

「王女なのに」


相手が王女だから、頭を下げたり言葉遣いを正すのは当然だ。

けれど礼儀正しいかどうかでは善悪の判断は出来ないよ。

言動はなんとでもできるんだもの。心とは切り離して使えるから。

統合知性ちゃんは、私以外に対してはあんな調子だろうと思う。悪気は無いと思うよ。きっと正直なんだ。


多分。種族が違うんだよね。どちらかと言うと私達(龍)側。

私の感覚がおかしいのかな?

本当は怒った方がいいのかな。ヒトとして。


でも。

ラーナちゃんみたいな怒りの感情が湧かないんだよね。まあ私には言ってない所為か。


それよりも問題は、私の姉達だよね。アイちゃんとフユ。

初対面大丈夫かな。

フユはコミュ力おばけだから大丈夫。


「へー!?とうごうちせー?よろしくう」


こんな感じになると思う。


逆にアイちゃんは危ないかも。


「へぇ。ふむ。興味深い」


あ、あれ?

意外と?問題なさそう?

まあいいか。なんとかなるでしょ。

こっち側なんだし。




結局戻ってきたラーナちゃんに、愚痴を聞かされながら連れ戻された。

あー、もう少しだけ統合知性ちゃんとお話しがしたかったかもね。

まだ沢山の秘密とかありそうだし。

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