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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十二章 黒龍飛翔
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二百八十五話 豹変

昨日のはなし。


王女様ことラーナちゃんが我が家に訪ねてきた。

ここ数日は逆の皆勤賞を更新していたので久し振りのお目見えだった。

お仕事もないので、ほぼ一日中のんびりと会話をしながら過ごした。そしてラーナちゃんが帰り際に、明日もお家に来たいと言っていた。

けれど何やら竜巫女のお仕事があるみたいで、今日の昼頃に訪ねるとか。お仕事があるのを思い出して、とても悔しそうな表情だったのが印象深い。

表情が急激に変化するのはなんだか面白かったね。




さて、ここから今日の話。


私は現在暇です。

西の調査が終わるまでお仕事がないのです。

なので教会へ行こうと思う。あのアレです。教会のてっぺんにドラゴンの像が鎮座してる違和感ありありの建物です。


元々私は竜巫女補佐の仕事も貰っていた。

最近忙しくて行けてなかったけどね。

忘れ‥‥‥コホン。いや、うん。別に居なくても変わらないから。

ら、ラーナちゃんもほら、参加できるならって言ってたし。う、うん。行けたら行きますって言ってそれっきり。

今日は暇だし、暇つぶ‥‥‥コホン。仕事しないとね?


まあ、そんなこんなで教会へ。

一応オルトワさんには一言伝えて出てきたよ。黙って出て行くと大捜索が始まるからね。


さて、着いたけど。着いたんだけど。警備の騎士さんが居る。大丈夫?通してくれる?


「あっ!君!待ちなさい。関係者以外は立ち入り禁止だよ!」


ダメだった。あっ、お疲れ様でーす。みたいな感じで通りたかったんだけどね。

えっと、なんとか通してくれない?ダメ?

目で訴えてみた。じー。


「コラコラ、通ろうとしても駄目だぞ」

「あの、私巫女の、補佐でその」

「ん?関係者なのか?いや待て。君みたいな子は見た事がないし、通せと指示されてないぞ」


うう。やっぱりダメだ。一応関係者だけど。

まあ駄目だよね。今までほぼほぼ不参加だから。覚えられてるわけない。

今日も飛び入りだもんね。


「どうした?」

「あっ!先輩!この子が中に入ろうとしていて注意をしていた所です」

「ん?」


丁度良い所に??騎士さんの先輩が現れた!

いや別に知り合いとかではないです。

どうしよう。めちゃくちゃ真剣な眼で睨まれてる。

うう、怒られちゃう?

ガン見だよう。


「イヴ様?」

「ハイ!?」


名前を呼ばれたのでつい返事しちゃった。

て、あれ。私をしってるの?先輩騎士さん。


「やはり。彼女は大丈夫だ。通して良い」

「し、しかし!?」

「いや。大丈夫なんだ」


なんだかよく分からないけど先輩騎士さんが説得してくれてる。良いの?通っても。

えっと、良いらしい。念の為いっぱいお辞儀しておこう。ぺこぺこ。


ごめんね。お仕事の邪魔しちゃって。

と、通るね?ほんとに行っちゃうよ!?


良いらしい。



何とか教会内部に潜入した。目的地に着くまでちょっと考え事。

うん。あの変な建物について少し。十字架の上に龍が乗ってるあの前衛建築。どう見てもおかしいと思うんだよね。誰も何とも思わないのかな?ツッコミとか。

私だけなんだろうね。この疑問は。だって聞いた事ないもん。それについての話題すら。

まあ、どうでも良いか。



さて今回のミッションはラーナちゃんに会う事です。

このミッションは難しいのかどうかですが。

いやまあ、別に普通にいるんだけどね?

凛々しく周りの人達に指示をしてる。今日も格好良いね。うんうん。

それに綺麗な金髪だから見つけるのには苦労しないね。

よし。こっそり背後からもしもし。

偶然こっちに気付いていないから背後からになっただけ。特にそれ以外の理由はない。


「ラーナちゃん」

「はい。何でしょ!?ぁっ」


あれ?固まった。

すごい既視感。こんな事、前もあった様な。


「ななな、何故ここに!?」

「えっと、ひ‥‥‥手伝いに来た」


危ない危ない。暇って言いかけた。それは良くないよね。巫女の補佐も大事な仕事だから。大事とか言いながら今までサボってたけど。


「そ、そそそうなのですか。ではもうすぐ始まりますので、こちらに立っていてください」

「立っておくの?」


補佐という仕事なのに立ちっぱなし。居るだけの簡単なお仕事です。

こう、何というか手伝う事とかないのかな。

だってアレでしょ?ラーナちゃんは国民のお悩み相談に応じるっていう役割があるのに、私は斜め前で眺めてるだけだよ?

まあ今までもそうだったけど、私って居る意味がないね。参加しなくても良かった事の証明になるね。


「ハッ!イヴ様を立たせておくなんてとんでもないです!す、すぐに椅子をお持ちしなさい!」


慌てて大人の女性に指示を飛ばしてる。

そして、なんか椅子に座ることになった。

いや、私が言いたいのはそういうことじゃないんだけど。

こう、浅めの階段があって円形の壇上に教卓的な物が置いてある。その卓の隣に座っていれば良いらしい。


私。居る意味ある?

なんか、こう、マスコットと勘違いされそうだよ?

う、うーん。まあ間違いではないかもだけど。【一撫で三百円也】って書いてあるプラカード提げとく?

これがホントの看板娘ってやつだね。

ホラ、貴重な黒龍触れ合い体験的なね。

需要ある??


いや、でも国民の皆んなに私が黒龍だって事は知られてないし、黒龍という存在は秘匿事項だし、王家の人しか知らないから意味ないけどね。

なんか女の子が座ってるなーて、思われるだけだよね。


うすらぼんやり。

半ば自分を無理矢理納得させて置き物になりきる覚悟をキメてた。

そんな感じで色々考えてたら何やら女性陣の会話が耳に入ってきた。


「今日の巫女様は張り切っておいでですね」

「ホラ、アレよ。ラーナ様が普段お話しされてる大切な友人様よ。お友達の前だからネ」


へー。

大切な、友達。ね。

ふーん。


「ああ、この娘がそうなの?」

「そうよ。巫女姫様にとって父君よりも大切だってこの前、御本人が」


‥‥‥嗚呼。おうさまぁ。

かわいそうに。


「コホン!余計な会話はしない事!」

「あらぁ、良いじゃないですか。聞こえない様に小声で話してるんですし」


うん。バッチリ聞こえてるよ。

ナイショ話はもう少し小さな声でした方が良いね。


「そうですよ巫女姫様。あ、それとももしかして、聞こえたら恥ずかしいとかですかぁ?大丈夫ですよ小声ですから」

「おバカ!イヴ様は大変耳が良いのですよ」

「え、あら。聞こえましたか?」


ふるふると首を振っておく。

聞こえてないフリ。うん。聞こえてないよ。

だから安心してねラーナちゃん。


「ほらあ。ね?巫女姫様」

「ほらあ、じゃありません。絶対聞こえてるじゃないですか!」

「えー、巫女姫様は考え過ぎですよ?」

「じゃあ何でイヴ様は確信を持って首を横に振れるのですか!?聞こえていないのなら、何が?と普通は首を傾げるでしょうが!」


ぐは。鋭い。嘘がバレた。

私は嘘が下手だった。


「大体何でそんなに笑顔なのですか。あーもう」


えっ、別に笑顔じゃないし。

何を言ってるのやら。嬉しいとか、そんなんじゃないし。

まあ、大切な友達だよ。それはお互い様でしょ?

色々お世話になったもんね。


「良いじゃないですか。ねー?」

「ねー。本当の事なんですからあ」

「べ、べ、別に私はイヴ様の事が好きとかそんな」

「そうなの。私はラーナちゃん好きなのに」

「えっ!?」

「あらあらあー」

「ですって。巫女姫様」

「あっあっあ」


ここまで言わせておいて、自分は口をパクパク動かして誤魔化すだけ。

むう。何だか私だけ損した気分だ。まあ良いけどねー。


「で、今日。来るの?」

「えぁ、あの、にゃにがですか」

「昼から。来るって言ってた」

「ええ!?あらあらあらぁ」

「おやおやおやぁ。それはつまり。少し話しを聞きたいですねえ」

「ああもう!煩い!不敬ですよ。答えませんからね」

「王女様トッケンだー。ずるーい」

「そうですよー。私達は詳しく聞く義務があるー」


そうだよ。私にも詳しく聞く権利があるよね。


「「さあ!巫女姫様!!」」

「た、助けてください。イヴ様」


二人の大人の女性に詰められ怯み慄くラーナちゃん。かわいそう、可愛い。

ハッ!危ない。助けを求められたなら応えないと。

ギュッとラーナちゃんの手を握る。味方アピールは欠かせないのだ。

うんうん。大切な友達だからね。


「あらあらあらぁ」

「いやー、巫女姫様もそろそろ結婚という年頃ですのに、中々そう言った歯の浮く話がなかったんですがそう言う事ですかあ」

「あ、あなた達だって結婚してない癖に人の事を言えないでしょうがあ!?」

「「いえいえ。私達は良いんですよ」」


わあ。息ピッタリ凄い。

それよりも、ラーナちゃん軍の援軍として来たんだけど、あんまり役に立ってない?

ごめんね。でもこの二人あんまり悪い人じゃないと思うよ。いや、うん。勘だけどね。

だからまあ。私は居ても居なくても変わんないと言うか。ね。


私を含めた女の子四人組での漫談を楽しんでいると騎士さんが話しかけて来た。


「あの、そろそろ」

「ああん!?」

「ヒッ!」


先刻まで楽しく会話が盛り上がっていた所に、女性陣の2名がややお怒り気味に応答した。

それはもう凄い豹変っぷりで、騎士さんがドン引きしてる。怒りの矛先が此方を向いてない分、まだマシで耐えられるけれど、すごい怖い。

ラーナちゃんは慣れてるのかその豹変に対しては特に何も感じていないみたいだ。と言うか何処か安堵した様子で、ラーナちゃんは怯む騎士さんに感謝を示す。


「そうですか。ありがとう。では始めましょう開けてください」


既に仕事モードのラーナちゃんがそこには居た。

私が今日会う前の、凛々しくも格好可愛い姿と立ち振る舞い。

遊んでばかりは駄目だよね。そう思って私も負けじと気合を入れ直すのだった。


「ふう。危ない危ない。助かりました。しかしそれよりも本番はここから。気合を入れないと。情け無い姿は見せられませんから」



そんな言葉を小耳に挟みながら。

次の一話を挟んで本格的に政治絡みへ。


もう一話だけまったりと。

まったりし過ぎて怒られそうですが。

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