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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十二章 黒龍飛翔
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二百八十一話 西へ②

空を移動して街へ着いた。

一先ず情報収集という事で辺りを散策する事に。


「もう降ろして良いですよ」


人目につかない様に地上に降りたらアイちゃんからそんな事を言われた。

自分で歩けると言いたげだけど、私は何となく甘やかしてあげたい気分だった。


「えー?どうしよっかな?」

「邪魔でしょう?」

「そんな事ないよ?可愛いし」

「ん?意味がわかりませんが?」


邪魔だなんてとんでもない。

そもそもウチの妹はどちらもまごう事なき美人だ。垂れ目なイヴと違って、アイちゃんは、ややツリ目気味な所がチャームポイントだ。

機嫌が悪い時のあの親友とよく似た雰囲気で、睨みを効かせた表情もまた愛おしく思う。どちらも甲乙付け難いもので、これはこれで良いものなのだ。


しかしアイちゃんを抱き抱えた状態の難点を一つ挙げるとしたら、周囲から目立つ事だ。と言ってもそれの原因は私達が美人だから。

自分で言うのもなんだけどさ、それは仕方ないよね。そう思われてるんだからさ。人の心の中の考えまで訂正してもらうのは不可能だし。

アイちゃんを抱き上げている事が目立つって言うより、美少女姉妹ってのが大きい要因て感じ。うーん。困っちゃうなあ。


「フユ」

「何?」

「この国の軍事指揮官に会いたいです」

「探せばいいの?」

「あそこの兵士とかどうですか?」

「んー?」


アイちゃんがお求めなので、目についた兵士の心を読み取る。

娼館がなんとか。今日の訓練は怠いとか。

有用な情報がないな。下っ端らしい。


「駄目かな」

「そうですか。情報が集まりそうな建物とか探しますか?」

「オッケー」


そんな訳で冒険者ギルドへ。

この街にもあるんだ。取り敢えず適当に目についた人に話を聞いてみる。


「あの」


ウヒョー美人がこんな所に!

ん?よく見たらコブ付きか。しかし見た目15〜20くらいか?全くけしからん。その年で子供を産むとは。これだから女は。




‥‥‥。

そんな事を思われていた。


うわ。話しかける相手ミスったな。

てか読心切っておけば良かった。見るからに話しかけたらヤバイ人だし。もっと目を観察するべきだったよね。

胸ばっかりジロジロ見られてるし。不快だ。

まあ良いや。情報だけ集めてサッサと会話を終えよう。


「な、なんだ」

「領主の館てどこにあるの?」


偉そうな人に会えば多分解決かなと思ったので具体的な質問を。

偉いと言えば領主だよね多分。


「そ、それはこの街の一番大きい建物だ。ここから出て右に曲がって真っ直ぐで見えてくる」

「ふーん。そ、ありがと」


あまり会話をしていたくないのでそっけなく切った。けど


「あ、あの」

「はい」

「良かったら、その、食事とかどうかな!?」


困った事にデートのお誘いだ。

いや、お前さっき思った事を忘れたのかよ。

あと顔見ろ、胸見るな。失礼。

うわ。何考えてるか想像つくんだけど。


「あー、結構です。間に合ってるんで」


心底不快だ。

読心も切った。相手の考えてそうなのが分かるから見ないようにするのだ。

こうしてすたこら。


「モテますね」

「あ゛?」


イラ。

アイちゃんのいつもの皮肉だ。


「おや?何故怒るのです?」

「不快だからでしょ。嫌味か?」

「違います。美冬はあまりモテませんでしたから。貴女は男性を惹きつける何かがあるのでしょうか?」

「そりゃ、だってねえ?高嶺の花ってヤツ?近寄り難いんだよね。みーちゃん」


そもそも何考えてるかわかんなかったし。

儚く咲く一輪の花だよ。どう触れて良いのかもわからない綺麗過ぎる花。

私はそれに憧れたから友達を切って、みーちゃんと一緒に居るようになった。それでやっと理解出来るようになった。



とびきり美人で目を引くけど、女の子からは嫉妬で嫌われて、男の子からは話しかけ難いあの感じ。

でも会話をしたら滅茶苦茶優しい人でさ。照れ屋で、会話が苦手なだけで心の中にはしっかりと感情があってさ。

今思えば私の無茶振りだって精一杯応えてくれていた。とても誠実な人だよ。


でも、周りが理解出来ていないだけ。

みーちゃんが悪い訳じゃない。みーちゃん以外の人たちの頭が悪いだけ。私もそうだ。優しさに甘えて無茶をして、それでも許してくれるみーちゃんが。


「モテたくてモテてる訳じゃない」

「そういうものですか。すみません。貴女の気持ちも知らずに」

「良いよ。慣れたし」


結局大切な人に好かれなければ意味はない。

他の人に好かれたってそれは無意味だって。

けれど私は好かれる資格が無い。

謝ることすら出来ずにいるのだから。



想いを馳せて足を動かす。

やるべき事は忘れていない。けど、つい、ね。





「はあ!?通せない?」

「どこの馬の骨とも限らぬ者を領主様の元へは行かせられぬ」


領主の館に辿り着いた。

辿り着いたまでは良いけど、領主に会わせてくれない。警備の人が通してくれないから。

身分を明かせば通れるかもしれないけど、竜聖国の人間だなんて言ったら大変なことになってしまう。


という事で作戦会議。


「どうする。透明化して突撃?」

「領主よりも軍隊指揮の実権を握っている人に会いたい。最悪はまた後で来ましょう。時間はありますし」

「どうやって探すのよ?」

「兵士から情報を盗みましょう。目的がこの街に滞在していなければ更に西へ」

「マジ!?めんどいよ」

「つべこべ言わないで下さい。人との接触も最小限にすべきです」

「注文多いよー」



結局この街には居ないらしい。

軍事指揮官求めて更に西へ。目的地はレングラント王国の首都レングニアへ。

細かい作戦内容を話す気がない妹と共に。

空飛ぶタクシーことフユ。


ところで今更ですが、フユはもの凄く気が利きます。配慮の達人です。

一方アイちゃん。絶望的に配慮が下手です。

アイちゃん曰く、


汝らが我に求む其れは、我が汝らに求む其と相応に等しい。されど我は汝らに与えぬ。故に求めぬ。汝らが人であるが故に。

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