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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十二章 黒龍飛翔
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二百七十九話 かつての主従

「んじゃ、行ってくるね」


フユとアイちゃんがレングラント王国へ。十日以内には帰ってくる予定だ。一人は寂しいけど仕方ない。調査は大事な仕事だからね。


二人が出て行くのを見送って屋敷の中へ。

竜聖国が蓄えていた獣王連合国の情報を確認しておく。アイちゃんが言うには大した情報は無いらしい。


えっと、なになに?


獣王連合国に行くにはそもそも大河を渡らないといけない。竜聖国の北は水に阻まれているから。現実的な渡河の方法は船。橋を掛けるのは難しいかな?


まあ、私は空を飛ぶから関係ないけど。


竜聖国は船の技術が皆無なのに対して、獣王連合国は複数の島国からなる諸島国家。そして一部の領土が、竜聖国のある大陸に掛かっている。

陸続きで国境が面しているので、侵略して来るかもねって事。獣王連合国は要観察だ。


船の技術に差があって負けてるなら危ないのでは?


そう思うけど何か大丈夫らしい。

アイちゃんがそう言ってた。

戦場は陸なので船の優劣は大勢に差はないとか。

ふーん。


時間があったら北に調査に行きたいね。

空を飛べる私達3人なら、川だとか、海だとか関係なく調査可能。

なんだけど私はお留守番。国を守らないとだからね。

龍が留守になっちゃうのはちょっとね。


まあ、お仕事もあるし。

退屈だけれど頑張らなきゃ。

そう思ったけど、仕事なし!

アイちゃんが一晩で全部終わらせちゃったみたい。


うん。やる事ないね。

鍛錬でもする?

しなやかな身体を得る為に。

魔法とか。練習してみる?

魔力はあるけど魔法は使えないんだよね。

魔法学の本には、魔力があっても魔法が使えるかどうかは、才能に依る所が大きいとか何とか。


うーん。

うん。

やっぱり筋肉だよ。

でもどうやったら鍛えられるんだろうか。筋肉。

オルトワさんに聞いてみようか?


「と言う事でオルトワさん」

「は、はあ。筋肉ですか?」


お仕事中(執務室の清掃に来た)のオルトワさんを捕まえた。

ごめんね仕事中に。


「うん。暇なの。だから筋肉」

「お嬢様が?筋肉?いや、辞めておいた方が」

「む、何で」

「勿体ないと言いますか。それに私との格闘訓練では十分に渡り合えていますよ?」


それはそうかもしれないけど、軽くあしらわれる程度には私と、オルトワさんの間には大きな差がある。

経験値の差とか、体格の差もあるけど、と言うかそこが殆どだ。小さい私は簡単に掴まれて投げられちゃう。



私のやる気に反して、オルトワさんは否定気味。私が強行すれば手伝ってくれると思うけど、オルトワさんが嫌がるなら辞めとこうかな。

となれば何したら良いのか。そんなループ。



あー、暇だな。

あ、アレしよう。

うーん。でも、やっぱり辞めとこう。

うん。この繰り返し。



一人堂々巡りの途中。客が来た。

礼儀正しくノックの後にラーナちゃんが。


「お、お邪魔します!イヴ様!アイ様」

「あっ、いらっしゃい」


とても緊張した様子だ。

昔はそうでもなかったのに。何でだろ?

キョロキョロ。誰か探してる?

あ、もしかして。アイちゃん?

今は居ないよ。


「あの、アイ様は?」

「ごめんね。今は出かけてる。暫く帰ってこないよ」

「そ、そうでしたか。ホッ」


あれ。

残念そうではないね。

あっ、うん。そう言う。


「アイちゃんの事、苦手?」

「は!い、いえ!?違うんですよ?」


慌てて取り繕うけど、流石に察するよ。


「うんうん。怖いもんね」

「そ、そうなんです。であいや、じゃなくてですね!?」


そっかあ。やっぱりそうなんだね。

うんうん。気持ちは分かるよ。

何時もつんとしてるもんね。アイちゃん。

何考えてるのかわかんないし。


「相変わらず王女殿下は感情を隠すのが下手ですね」

「なっ!失礼な。叔母様こそ失礼なところは相変わらずですが!?」

「叔母?」

「はい。そうですよ。お嬢様。私は王妃様の妹にあたりまして、ラーナ王女殿下との血縁関係があります」


ほえ。

そうだたの。知らなかった。


「何時もアレしなさい、コレしなさいだの言って」

「殿下を想えばこそです」

「全く手加減しなかったですよね!?」

「姉の命令は絶対ですから。厳しくしろと仰せつかっておりましたので」

「楽しくもない勉強を毎日毎日」

「当然です。王女たるもの、常日頃から万人に見られていると自覚を持って貰わねばなりません」

「ああ言えばこう言うし!」

「私程度、言い負かせられねば、貴族社会では苦労しますからね」

「私はそういう何かにつけて細かい所が嫌いなんです!」


んー?

でもオルトワさんが厳しいのは確かだけど、普通に良い人だよね。

ラーナちゃんが邪険にする程の事なのかな?

これは家族にしかわからない感覚とかかな。多分。


あっ!そうだ。

丁度良い所にラーナちゃん。

オルトワさんに否定された、あの筋肉についてラーナちゃんからの意見を聞いてみようか?


「あの、ラーナちゃん」

「は!ご、こほん。何でしょうかイヴ様?」

「私。鍛えようと思うんだ。どうかな」

「ど、どうと言われましても」

「筋肉で、こう、ムキムキ?」

「む、ムキムキ?」

「うん。えっと騎士さんみたいな」


一瞬固まって思案。

眉を顰めて顎に手を当て。続く言葉。


「ぜ、絶対ダメです!」

「え、ええ?」

「ぜぇったいダメ!認めません!ウルトラパーフェクトなイヴ様に筋肉など有り得ません!!」

「あ、ぅん」


駄目だった。ラーナちゃんからも反対。

そっかあ。そう言うなら諦めようか。


「有り得ません。有り得ません。素晴らしきやわらかなイヴ様のお身体が、もしも変わってしまったら。国が滅びます」


そんな事はないよ?

きんにく。だめ?

格好いいと思うんだけどなあ。


「しかし、イヴ様は何でまたそんな事を?」

「うん。暇だから。鍛えようと思った。筋肉」

「聞きましたか?王女様?イヴ様は王女様と違い頑張り屋です。立派ですね?」

「わ、私だって」

「おや?何か言いましたか?」

「くぬぬ」


ラーナちゃんと言い合うオルトワさん。

珍しくオルトワさんの素を見た気がした。

目の前で繰り広げられる諍いは、日常の様にも見えて、私は何となくそれを飽きる事なく眺め続けるのだった。

テレビ<キンニクハスベテヲカイケツスル!!


みーちゃん「きんにくってスゴイ。私欲しい」

???「ま、マズイ。コレハ教育シナクテハ。いま流行りの魔法少女キラキラ全五十話と劇場版二話を使う時が来た様だ。さあ、みーちゃん。このアニメを見ようねえ」

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