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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十一章 新風
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二百七十七話 精神安定剤。略して、

誕生日を迎えて次の日。

またいつも通りの日常が始まる。

さて、昨日で晴れて十五歳となりました。どうも。イヴと申します。ぺこり。


そして、隣に座って私に色々と教えてくれるのはアイちゃん。私の双子の姉です。

普段から何を考えているのかは分かりません。と言うかそもそも知らないことだらけです。でも信頼してます。優しくて、頼りになって、あとあと、えっと。すごいです。


脳内語りをしてたら唐突にアイちゃんに叱られた。


「手が止まってますよ?」

「は!?ごめん」

「いえいえ。良いんですよ。ゆっくりやりましょう」


そう言って優しく接してくれるアイちゃん。


なでなで。

何故かすごく優しくなった。昨日から。

そうそう、昨日と言えば色々と会話をしたよ。改めて私の出自とか。予想はついてた所もあるけど、それも含めて色々と。




先ず、私はこの世界の住人では無かった事。

とある世界で人間として生まれて寿命を迎えて此処へ。死因は病死。享年17。

アイちゃんが言うには、どうやって此方側に来たのかは断定出来ていないが、なんらかの方法によってアイちゃんと接触。そして魂の共有により双子として存在している。


魂を分け与えた事で瀕死だったアイちゃんは助かったらしい。そうだった様な気もする?

覚えてないもんね。仕方ないね。


それから目が覚めるまでの12年間はアイちゃんとお勉強。よく覚えてない。そうだったっけ?

その間に魂の主格が私に。龍の権限とか能力とかを少しずつ委譲した。



『何で?』


《これから話します。順番です》


『うん』


ほぼ滞りなく完了。

その頃私が目を覚ました。はじめての人間との出会いは男性二人。トライさんとアルバスさんだ。服もなくて大事なとこを隠せてない。今思えば結構恥ずかしかったかも?

ま、まあまあ、人間の姿は仮初だから見られてもオッケー。


な訳ないよ。


初めて会った人達が良い人だったから良かった。そういう事にしておこう。


危険な魔物と出会い、村の人達を守る為。私達は本当の姿を見せた。その村では黒龍は忌み嫌われた存在。私が黒龍だと知られた時点で村には帰れない。二人は黙っていてくれたかもしれない。もしかすると受け入れられていたかもしれない。

けれど、私もアイちゃんも理解していた。

そう思うのは危険だと。


私達は旅に出た。

誰も知らない遠い場所へ。森の中で人との接触を断ち、二人だけで生きていた。

でも、人間と会話をして興味が湧いた。だから街へと行った。アイちゃんが許可をくれたからね。駄目だって言われると思ってたけどね。


街で過ごしていたら帰る場所が出来た。

仲間も出来た。家族も出来た。けれど私は黒龍で。

全てに対して一線を引き、距離を置いた。知られたらまた遠くへ逃げないといけなくなるから。


その頃。死期が近付いていた。

その最後の時に間に合う計算で、アイちゃんは全てを調整していた。でも何か知らないけど助かったらしい。私が奇跡を起こしたとか。

知らないよそんなの。


折角助かったならと色々やりたい事を探した。

手掛かりを求めて竜聖国へ。


わたしはきぞくだった。

偉いらしい。しらないよ。えらくないよ。

今でもそう思う。


王様の依頼で西へ。竜聖国が攻められてるから助けて的な感じ。

仕方なく助けに行った。


出会ってしまった。お父さんとお母さんの仇。

それを倒す為にアイちゃんに任せた。

信頼してたアイちゃんが裏切った。

けど私は抵抗した。アイちゃんを捕らえて私の中に幽閉した。らしい。

その辺の記憶が曖昧。仕方ないよ。私も必死だったし。


そこからしばらく眠った。そしてこの前のアイちゃん復活。それがアイちゃんの知り得た情報。


『何で私に譲り渡そうとしたの?』

《どうせ死ぬならと思い。ならば私の全てを貴女に託そうと思いました》

『記憶を消そうとした理由は?』

《貴女は私が死んだ事を忘れられず、必死に自分の務めを全うしようとします。そして私の意思を継いで、人類と敵対します》

『えっ?』

《全ては滅びます。唯一人。貴女を除いて。その未来を避ける為に記憶を消しました。私の痕跡を消せば上手くいくと思って》

『そっか』

《結果は失敗。貴女を信じられなかったが故にです》


少なくともその時のアイちゃんにとっては最善の方法だった。そして私の事が嫌いだとか、黒龍の力を返して欲しいとかは全く思っていないらしい。

だって、


『黒龍の力は返した方がいいよね?私のじゃないし』

《え?何故ですか》

『だって、私が奪った力でしょ?』

《‥‥‥違います。私が好きで贈った物です。それにもう受け取れません。貴女に定着していますから》


返却不能。いくら返しても返却の返却をするらしい。困った。

まあでもやっぱり、アイちゃんは裏切ってなんかないって事だけはよく理解したよ。


そうそう。一つ気付いた事があった。

それは、私はアイちゃんに憧れているって事。

憧れているからこそ、私は常にアイちゃんの事を完璧だと思ってた。完璧なアイちゃんがミスなんてする訳ないとも。

そう思ってたけど、私が気付いていないだけでやらかしてるらしい。知らなかった。


《私は、人間が嫌いです。そう言った私の良くない感情が生き続け、貴女に影響を与えてしまう。しかしイヴ。貴女は貴女の思うがままに生きて欲しい》


そう言って私の頭を撫でるアイちゃん。

心がじんわりあったまる様な感覚だ。心が繋がって、優しさを受け取って、昔を思い出す。ずっと、ずっと、足りてなかった物が今、満たされた気がする。




私の想いをアイちゃんに贈りたい。

この感情をどうにかしたい。

そもそも私は、アイちゃんにお世話になりっぱなしだ。でもでも何が良いかな。喜んで欲しいし。


悩みが一つの景色を映し出す。



「心が込もっていれば何でも嬉しいよ。大好きな人ならね」

「そう言うのが一番困る」

「いやー、ホントだってば。みーちゃんからなら何でもうれしいなあ」

「キスでも?」

「え!?良いんですか!?」

「‥‥‥え、嬉しいの?」

「い、いやまあ、うん。別にまあその、何でも良いケドネ」



何かの記憶?

その景色から離れて目の前。

近い。アイちゃんのほっぺがすぐ近く。

何となく、こうすべきだと思った。


チュッ


「お、おれい。た、たんじょうびの」


物凄く恥ずかしい。やっておいて何だけど顔から火が出そう。あつい。

その場の勢いでやったから、ああもう変な空気に。

アイちゃんが呆れてるよ。


居た堪れなくてそっぽを向く。

顔が真っ赤になってると思うし、恥ずかしいし。目を合わせられない。


「では、私からもお返しです」


チュッ


私なんかとは違ってスマートなキス。お返しされた。お返しのお返しはズルだ。卑怯だ。

これだと私が貰ってばっかりだよ。うう。



不意を突いてもアイちゃんの方が一枚上手。

必ずやり返される。私はいつだって敵わない。

でも、別にいいんだ。私達は助け合って生きていく。例え、何があっても乗り越える。大切な家族と共に。


そう、決めたんだ。

色々とこう、シリアスな所がありましたね。スローライフとはと言った感じですが。完全に原因はアイちゃんです。


さて。ちょっと長くなりましたが(リアル時間的に)今話でこの章終わりです。

今後はまあ、その、三人でイチャイチャ出来たら良いですね。

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