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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十一章 新風
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二百六十七話 疑念と信頼

新法案が可決された議会から数日後。

今日はのんびりして良いと言われたので、朝日を浴びる為に外に出た。敷地内からは出ない様にしつつ、朝の新鮮な空気で深呼吸をしていた。

すると見たこともない知らない沢山の人達が敷地内に入ってきた。

何事かと思い眺めていたら、その人達のリーダー(?)らしき人が話しかけてきた。


「失礼。お嬢さん。この屋敷の当主様はどこにいますか?」


思わず首を傾げてしまう。今日は誰かが訪問してくる予定なんて無かったから。

とは言え、この人達には何かしらの理由があってこの家に訪ねて来たのだから理由を聞いてみた。


「何の用事ですか?」

「あー、そのだな」


話し難いのかな。

じゃあせめて誰からの依頼か聞いてみる?


「誰に言われて来たの?」

「国王様です」

「ふーん。それよりおじさん達、何者?」


そう質問しながら目の前の人達を観察する。結構身体の大きな男性達。身長的にも身体の幅的にも私の一回り以上は大きい。

怪しい人達ではなさそう。だけど目的が不明なのでなんとも言えない。


「あ、怪しい者ではないぞ!?」


私が観察していたのが良くなかったのか、慌てて釈明をするおじさん代表。

でもさ、怪しい人は皆んな自分の事を怪しくないって言うよね?

つまりそんなこと言われたら余計怪しく思えてくる。


「ふーん」

「一応、王室建築家と言う役を与えられている」

「ふーん。一応ね。証拠は?」

「これが」


差し出されたのは身分証。

言ってる事は嘘ではなさそう。この身分証が本物ならだけど。

だって、私が持ってる身分証。偽名使い放題だし、職業欄だって自称で埋める事も可能だったと思う。

王室建築家(自称)です。キリッ。てな感じ。

つまりやろうと思えば何だって出来るって事だ。むむ。怪しく思えてきた。


ジトー。


「ど、どうしたら良いんだ。行けば教えてくれるって陛下は言ってたのに」

「あやしい」


警戒心を高めていると背後からアイちゃんの声が聞こえた。


「ああ、来てましたか此方です」


私を置いて目の前の人達と会話をするアイちゃん。

軽く一言二言会話をして、屋敷の中へ案内している。知ってそうなアイちゃんが動き出す前にこの人達について質問してみた。


「誰?この人達」

「ん?あー、イヴは知らなくて良いです」


スパッと会話を切られてしまった。

一瞬話すべきか迷った素振りがあった。けれど話さないほうが良いと断定された。

ちょっとショックが大きくて小さく鼻を鳴らす事しか出来なかった。


すん。


誰も居なくなって静かな庭で佇む。

仕事をしなくていいと言われて久し振りにのんびりすると決めた。けれど今はそんな気分でもない。

何だか無性に身体を動かしたくなった。あと、身体の中から何とも形容し難い変な感情が湧き出てきてる。

それは無意識に声へと変換された。


「アイちゃんのばか」

「どうしたの?」


一人だけだと思って声を出した。けれどこの場に居るのは私だけではなかったらしい。

慌てて振り向くとフユがいた。

陸に上げられた魚の様に口を動かした。驚くと咄嗟に声が出ないものだね。


「そんなに驚かなくても。それよりアイちゃんと喧嘩でもした?」

「し、してない」

「珍しく怒ってたのに?」

「怒ってないもん」

「ふーん?ならまあ良いや。それより今日は暇でしょ?遊びに行かない?」

「えっ、でも。勝手に外に出たら」

「良いの良いの。私が居るんだし。何かあったら私のせいにしてくれたら良いからさ」


確かに今日は暇だ。

でも屋敷を出てしまうとアイちゃんに心配されてしまうかもしれない。私が出かける時は、行き先を必ず伝える様にと言われているくらいだ。


「お嬢さん。私とデートしませんか?」


凄くカッコいい振り付けをしながら片手を差し出す私の姉。

私の悪い心を見透かした様に誘ってきた。

当然断れる筈もなく手を差し出すと、グイッと引っ張られて、あっと言う間にお姫様抱っこへと早変わり。


「さあ、空の旅へとご案内。機長は白龍ことフユです」

「よ、よろしくお願いします」

「あいさ。お客様には快適なお時間を約束しまーす」




白色の翼を広げて気が付けば天空。

折角二人きりなので会話をしながら空の旅を楽しむ。


「ところでフユ?」

「ん?なに?」

「目的地は」

「ないよ?」

「ないの!?」


あっけらかんと目的がない事を認めるフユ。

それに思わず驚いてしまった。


「どこでも良いんだよね。イヴと一緒ならどこでも。あっ、それとも行きたい所とかある?」

「えっと」


少し悩む。

するとふと思い浮かんだ街がある。

かつて住んでいた街。住ませて貰っていた場所。


「あの街」

「ん。あー、ニーベルだったっけ?」

「えっ、何で知ってるの?」

「え!?あー、いやー、何となく?」


何故私が思い浮かべた街が分かるのだろうか。

フユが何か挙動不審になっている。

けれどそんな事よりも、私は思い出したあの街に想いを馳せる事で、その疑問はすぐさま霧散した。


私があの街を忘れていたのは仕事で忙しすぎたから。

本当は心の中でいつかは戻らなきゃって思ってた。けど、ちょっとだけ罪悪感があったから、先延ばしにしていた。


「行きますか?お嬢さん」


笑いながらそう言って問い掛けるフユ。


チャンスが生まれた。それなら行くべきだ。尻込みして逃げるのは良くない。

勿論。約束してたのに戻れなかったからとても怒られるかもしれない。

そして恐らく、より悲しませてしまうだろう事も頭に入れておかなければならない。

でも、先延ばしにするよりはずっと良い。


フユに黙って頷く。

いざ目的地を定めて方向を改める。


でも、ゆっくり目でお願いね。

覚悟を決める時間が欲しいから。

絶対泣きながら怒られてしまう。

もっと早くに行けば良かった。忙しい、忙しいって言って言い訳ばかり。その気になれば時間を作る事だって出来た筈だ。

だから会った時には言い訳はしない様にしないといけない。


「震えてる?」

「そ、そんな事ないよ」


思わず身震いをしたのだろう。

当然、身体が触れてるフユには気付かれてしまう。


「ゆっくりいこうか」


そう言ってくれるフユ。

それと共に頬を撫でる風の勢いが弱まった。


私の心が読めているのかと質問したくなるくらいに心が見透かされている。

姉だから。なのだろうか?

いや、違う。きっと、フユは優しいからだと思う。

私が単に読まれ易いだけだと思う。オルトワさんもそう言ってた。きっとそうだ。

でも別にそれは悪い事じゃない。だって、私はこんなに嬉しいのだから。

久々ニーベルへ。

覚えてない方へ一応。かつて少女が住んでた街ですね。修羅場か、それとも修羅場か。どうなるんでしょうね?皆目見当もつきません。


竜聖国に滞在していた期間は長いですね。話数的に言えば二百話位になりますかね。難しい数字はよくわかりませんが。適当で。

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