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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十一章 新風
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二百五十七話 未来を見透す眼

お久しぶりの投稿です。

怒り心頭。


今の私はまさにそんな状態だ。

私は不機嫌を隠そうともせず、無造作に椅子を引いてドカッと音を立てながら座る。

そもそも何故怒っているのかと言うと、アイちゃんの言い放った言葉が気に入らなかったから。


私にとっての大切な友人であるお姫様。その人は人間である。つまりラーナちゃんの事だが、私と仲良くする事は相応しくないらしい。

アイちゃんが言うには、だ。


理由はわからない。

理由を聞く前に頭に血が上って飛び出して来たから。

何かしらの考えあっての事だろうけど、そんな事は知らない。


私が龍だから?

人と付き合うのは不相応だって?

昔にも同じ様な事を言われた事がある。

あの時の私は「まあ、アイちゃんがそう言うなら」と、信じていた。


でも、今回は違う。私にとって、ラーナちゃんは大切な友達だからだ。

アイちゃんだって大切だ。ついでにフユも。

その時ふと、フユの顔が浮かんだ。


「私だけ雑じゃない!?」


なんかそんな声が聞こえた気がした。多分気のせい。


兎に角。

私には大切な人がたくさんたくさんいる。

離れ離れになってしまった人もいる。今でも大切に思ってる。そんな人達とお別れするのはとても辛い。

正直言ってもう二度と味わいたくない位だ。


「それなのに!」


声を荒げて机を叩く。

勿論、私の手が負けて痛みが滲む。

痛みは私の熱を冷ます。少しだけ冷静さを取り戻した。

そして何故、アイちゃんがあんな事を言ったのかと考え始める。


「どうして」


意味の無い事なんて言わない筈だ。

少なくとも今まで私に忠告してくれていた事はちゃんと理由があった。そしてそれは必ず私が、痛い思いをしなくて済む為のいわば、予言の様でもあった。


他でも無い。大切な家族からの忠告。

聞くのが嫌で逃げ出して来た。

あぁ、良くなかったよね。せめて理由くらい聞いてから飛び出せば良かった。

そうやって後悔していたら扉を叩く音がした。

いつもは直ぐに返事をして入室を促すのだけど。


嫌な沈黙が生まれる。


「イヴ。いますか?」


なんて言ったら良いのか判らなくて、咄嗟には返事が出来なかった。

でも、折角来てくれたのに無視をしてしまったら、もっと気不味くなってしまうと思って慌てて扉を開けようとした。


ドアノブを握ればその扉の裏側に居るのが分かった。

わたし自身。あんなにも大人気ない怒り方をしたものだから扉一枚開ける事すら躊躇ってしまう。

謝れば済む事なのに、その壁一枚を乗り越えられない。


「あ、開けなくても良いです。少しだけ聞いて欲しいんです」


「貴女はこの国をどう思っているでしょうか。貴女はこの国を守りたいですか?」


「それなら尚更、手を貸してはなりません」


何故?と、問おうとすればすかさず言葉が飛んで来た。


「勿論貴女が助けてあげたいと思う心も汲んであげたいとは思います。しかし貴女が全てを手助けしてしまったら」

「それの何が駄目なの」


最後を待たずに口を挟んだ。

会話のマナーとしては良くない。

それでも怒る事なく、優しく言い聞かせる様に話してくれる。


「貴女が居なくなった時、どうしますか?」

「居なくなんて‥‥‥ならないもん」

「貴女の所為で、国としての成長を止めてしまうとしたら?」

「それは‥‥‥その」

「そんな状況を見てしまったら、貴女はどう思うでしょうか。身を引く事を考えてしまうのでは?」


わからない。

そんな、事。


「貴女が竜聖国に来るまでの間。龍が居なくとも何とかなっていたのですよ。貴女のやるべき事はこの国を見守る事です。歯痒いかもしれませんが、それ以上は過剰なのです」

「でも」

「いざと言う時だけ助けてあげて下さい。少なくとも父は基本的に協力はしていません」

「それでも、やれる事はやりたいし」

「しかし距離を取る事は大事です。貴女の力は、他者を堕落させてしまう危険性がありますから」


堕落。無い、とは言えない。

これだけ真剣に忠告をしてくれてる。

信じるべきなのだろうか。


「ほら、フユを思い出して下さい。いつも昼寝ばかりしていますよね。アレは貴女の所為ですからね」

「ゴフッ」


アイちゃんが興奮して説明しているからなのか、咽せたような咳き込む音が聞こえた。


「仕事もせず、起きたと思ったら変な事ばかり。随分と自分勝手に行動する姉です。本人が居ないから言える事ですが」


ツラツラとフユへの説教?が始まった。


「どうか、無理はしないで欲しいのです。貴女にはもう少しのんびり生きて欲しいのです」

「何したら良いのかわからないよ」


そんな急に言われても困る。

今更距離を置くなんて。お仕事だって。


「何も急に関係を切れと言うわけではありません。しかし王女は貴女に依存しています。その証拠に、王女という身分でありながら、毎日貴女の元に訪れる暇などあるでしょうか?」


確かに毎日来てくれてる。

朝は教会で悩み相談の後に。私は最近自分の仕事が忙しくて全然行けてないけど。

偶に顔出しくらいはしてる。偶にだけどね。

それから夕方くらいまでお話しをしてる。

お昼は食べなくてもお茶菓子があるからお腹は空かないけど。


「優しいから来てくれてるんだもん」

「それは間違い無いでしょうが、それだけでは無さそうです」

「何が言いたいの」

「王家にとっては龍との繋がりは命綱です。しかし、この国に来る前。貴女は約束していたではありませんか」

「‥‥‥わかってるよぅ」


ニーベルという街で過ごした思い出。

少しだけの旅と言って飛び出した街。


「何故帰れないのです?それは誰の所為ですか?」

「わたしが」


約束をした。

でも、この国でこの国の為に頑張らないといけない。

あの街に戻りたいとは思っていてもそれは中々難しい。また会いたい。でも出来ない。

だから、守れない約束をした私が悪い。


「違います。貴女は悪くありません。貴女を縛り付けるこの国が悪いのです」

「でも、お世話になってるし」

「それ以上に貴女はこの国に与えています」

「そんな、事」

「では、少しの間だけでも良いです。ほんの少しだけ、手を出さないで下さい。そうすれば違ったものが見えてくるかもしれません」



明日の議会。

どうせいつも通りで、言いたい事も言えない。

でも、今回は違うかも。観察をする事。それが私には大事なんだと言う。

意味はよくわからないけれど、きっと無駄ではない。信じると決めた。他でもない大切な家族のアイちゃんが言うのだから。

実はコソッと外伝に一話投稿しました。

あまりに本編を疎かにしていると怒られそうですが、読んで頂ければと思いますです。


アイちゃん。妹に激甘です。

本当は誘惑が如何とか、それで人間がどうなろうともどうでも良いと思っているのですが、優しい主人公はそれで傷付くだろうと察して動いてます。


側から見れば嫉妬してる様に見えなくもない?

‥‥‥気のせいです。

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