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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十一章 新風
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二百五十六話 一欠片

「うーん。取り敢えず後で考えるという事で」

「そうですね。実際の所、コレと言った対策は無いのですよね。それこそ、人との関わりを避けさせる位しか」

「いやぁ、それは駄目でしょ」

「ですよね。はあ」


あーでもない。こーでもないと、軽めの言い合いを経て一つ溜息を溢す女の子。

不機嫌そうな表情はより一層険しく見える。悩み苦しんでいる様にも見えるかも知れない。


「てか、アイちゃん」

「ん?何ですか」

「色々龍について知りたいんだけど、それよりもアイちゃんの事の方も知りたい。今までの経緯とか」

「ああ、まあ大した事無いですよ?」


そう言って半眼で睨む女の子。特に怒っているという訳ではないのだが、どうにも目付きが悪い。

逆に乙女はというと目を輝かせて会話が始まるのを今か今かと待ち望んでいるのが窺える。


「それでは」


口を開き順を追って説明をする女の子。

それを黙って聞く乙女。暫し一人だけの声が部屋に響き渡る。





自我すら持たない頃。

それはつまり私が生まれて間もない頃。

唯一人だけの時を過ごしていた。態々それを唯一人と呼称したのには理由があった。

それは、理解した頃には既に、家族はいなくなっていたから。


それを自覚したのは記憶を貰ったから。いや、記憶だけでは無い。ありとあらゆる物を父から引き継いだ。父の死と引き換えに。

そして、そのお陰で私は死にかけていた所に短いながらも猶予を与えられた。



簡単に説明するとこうだ。

母が亡くなった。人間どもの所為で。父はそれに怒り、一つの街を滅ぼした。それによって母に手をかけた者を発見した。


当然父はその者を倒した。

しかし、その者は最後の仕返しとでも言うのか、娘である私に呪いを発動した。

龍の娘とあれど弱く、抵抗する意思すら無い私は防ぐ事も出来ず。


慌てて私の所に戻って来た父だったが、対抗手段も無く、その時嘆き苦しんだ。

例え術者を倒そうとも呪いは解けない。


一応対抗手段はあった。私の魔力を消せば呪いは解けるかも知れない。その代わりに私が死ぬというオマケ付きで。

長くは持たない。そう理解した父が、私に全てを託すと決断したのは早かった。


確かに寿命は延びた。

それでも呪いからは逃れられない。


「我の全てを捧げたとて恐らく無駄になるだろう。だが、我は願うのだ。少しでも其方が生きられる様に」


「我を恨んでくれ。其方一人を残してしまう事。其方を護れなかった事を」


「すまなかった」



知恵を得て、自我は芽生えた。

自我はさらなる知識を求める。

必然。記憶へと辿り着いた。

現状を知った。



私は生きている。死にかけていた事を知った。しかし今もなお、逃れられずに死に近付いて行っている。


【生きとし生けるものは最後に必ず死ぬ】


それは間違いないと言える。

しかし、龍は例外だ。不死身だから。

だが、解けぬ呪いを持っているのならそれもまた例外だ。


父に呪いは効かなかった。しかし、効いてしまっている私に、強大な龍の力が与えられても消す事は不可能だった。

そもそも龍の力を使い熟すには知識だけでは足りない。私の身体に馴染んでもいない。


仕方が無いから適当に時間を潰す事にした。

それしか出来ないから。






「そして何やかんやあって今ですね」

「っおい!説明飛ばし過ぎでしょ!?」

「それからあの子と出会って、まあ色々」

「その色々が気になるんですけど!?」

「今はこの造られた体です。自動人形(オートマトン)とでも言うべきでしょうか」

「あーそれね。作るの苦労したんだよ?」

「ええ。感謝していますよ」

「ムッフッフ。そうだろうとも」


鼻高々と言った様子の乙女。

それに何の他意も無く感謝を述べる女の子。


「未だ、誰にも話していない事なんですが」

「おん?何かな?お姉さんに話してごらん」


誰にも話していないと言ったのが、秘密を共有しているみたいで相当嬉しいのか、すっかり気分を良くしてしまった乙女が、少女の言葉を待つ。


「私は戦闘能力が一切無いです。それこそ人間よりも遥かに弱いです」

「っっんな!?マジなのですか!?」

「はい」

「えっ?でも、ホラアノ、魔力とか貰ってるから」

「生きる為に必要だからです。そもそも相当効率が悪いのです。満タンまで入れても数日しか保ちません」

「元、龍だし」

「今は違います」

「マホウトカ」

「使えません。仮に使えても魔力切れを起こして死にます」

「おおぅ」


思ったよりも重要な事でドン引きの乙女。

そこに追い討ちをかける女の子。淡々と言葉を吐き出す。


「魔力切れについても捕捉します。貴方達は魔力核の更に上の、言うなれば魔導炉とも言うべきものが核なので、基本死ぬ事は有り得ません」

「うん」

「しかし、私は龍ではありませんから簡単に死にます。魔力を補充しないだけでもです。つまり、私はお荷物です。負んぶに抱っこが必須です」

「いや、そりゃ大変では?」

「今の私はナメクジ以下です。死を避けるだけで精一杯です」

「あい了解。それはイヴにも言っておいた方が良いよ?」

「私から言います」


スッと立ち上がり、会話を切り上げる二人。一人の少女を追いかける為に、二人は歩き始めるのだった。

今後アイちゃんは強くなる予定ではありますが、今は弱いです。力を全部渡しちゃったので。

現状は残りカ‥‥‥生まれたてなので。

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