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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十一章 新風
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二百五十二話 眠りの姫

暖かな日差しがカーテンの間を縫って降り注ぐ。暑さは折り返し地点。徐々に気温が下がっていく時期。今は秋に入って直ぐの頃だ。

私は目を覚まして自分の感覚と意識を繋いだ。

すると目の前には整った顔立ちの、まるで人形の様な人が寝ていた。艶々とした黒い髪。長いまつ毛。それらとは真反対なくらい白い肌。柔らかそうなほっぺに、ほんのりと桃色の可愛らしい模様。


自慢じゃ無いけど私の大切な双子の姉だ。

名前はアイちゃん。

双子だけど違いは見た目だけでも幾つかある。

例えば肌。私はこんなに白く無い。

次に髪。私の方が濃い色。アイちゃんはほんの少し灰色っぽい。けど誤差。

他には、今は見えないけど瞳の色。燃える様な赤色。両方とも。

後は、関節とか?繋ぎ目がある。


結構あったね。

双子なのに私より可愛いんだよ。ずるい。

でも、そんなアイちゃんにも弱点くらいはある。

それは‥‥‥眠るのが怖いらしい。何でもアイちゃんが言うには


《龍は寝なくても生きていけます。そもそも睡眠の必要性を感じません》


とかなんとか。そう言ってあんまりにも頑なだから私も譲らなかった。

だって‥‥‥全然休まないんだもん。執務室に引きこもって何かやってると思ったら、仕事をするか、本を読むかで一切寝てなかったから。

だから私は、心配して休む様に言ったんだ。

まあ、アイちゃんは私の話しを適当にはぐらかすんだけどね。それが数日続いたから、私は遂に怒った。


『アイちゃん!今日こそはちゃんと寝ないとダメだよ!』


私がそう言ったら、流石に私が本気なのを察したみたいで、アイちゃんは遠慮がちに悩みを打ち明けたんだ。


《私は、眠れないのです》

『なんで?』

《意識を手放した時。それからもし、目が覚めなくなったら。そう思うとその、怖いのです》


私にはわからないけど、アイちゃんには何かがあるらしい。


『それなら、私が手を握っててあげる。怖くなったら私に抱きついたら良いよ。もし、アイちゃんが起きる事が出来なかったら起こしてあげるよ』


昔やった様にアイちゃんの中に意識を繋げば、目を覚まさせてあげる事も可能な筈だ。

ちなみに手を繋いで寝るのは、私が側に居る事の証明。恐怖を和らげる為にね。

それで本当に眠ったままになったらって、ちょっとだけ不安だったけど、結果的には上手くいった。



そして、今も私の手を握ったまま眠ってる。

一度眠ると中々起きないアイちゃん。あと、アイちゃんは起きるまで手を離してくれない。眠ってるのに器用だ。


そろそろオルトワさんが起こしに来る頃だ。

アイちゃんを起こしておこう。

そう思って、アイちゃんに話し掛けながら身体を揺らしてあげる。


「起きてー」

「ん、朝ですか」


アレだけ深く眠ってたのに眠そうな素振りは無い。不思議だ。


「おはよ。アイちゃん」

「ええ。おはようございます。イヴ」


折角早く起きたから着替えておこうかな?

オルトワさんに手伝って貰う手間も省けるし。そんな考え事をしていると、唐突に扉が開いた。


バターン!


誰かと思ったらフユだった。

オルトワさんは扉を乱暴には開けないから一瞬びっくりした。


「さあさあ!目覚めの時間だぞ!!」

「あれ?フユ」

「もう起きてますよ」

「ありゃ、起きてる。まあいいや。お着替えタイムだよー」


何故かフユが私達の着替えを持ってる。

ちゃっかりフユは着替え終わってる。推測するにオルトワさんに無理を言ったのだろうね。

手伝ってもらう程でも無いけどね。私達お揃いのワンピースに下着だけだし。それがドレスとかだったら一人だと大変だっただろうけど、今日は出かける予定も無いし。


「いえ。この格好でいいです。着替える理由が無いです」


開口一番断るアイちゃん。


「まてまて。それはダメでしょ」

「流石にパジャマはね」

「何故?理解ができません」

「そう言う物なの!」


フユはあっと言う間に私達からパジャマを剥ぎ取っていった。アイちゃんは小言を言ってる。私は特に抵抗せずに、着替えと着てた服とかを交換して貰った。


着替えが終わったら食事。

アイちゃんの食事だけ後で。食べ物を食べられないから、代わりに魔力を分けてあげるのが、アイちゃんにとっての食事だ。


オルトワさんには、アイちゃんが今日も食事はしないと伝えると悲しそうな表情になる。

アイちゃんの席も用意されているけど、未だ使われた事は無い。

いつかはアイちゃんにもご飯が食べられる様にしたいな。


食事が終わったら執務室にいたアイちゃんを捕まえて、魔力の受け渡しを行う。

アイちゃんがどうしてもと言うから、抱きついて魔力の譲渡を行う。アイちゃんが言うには、身体が触れてる範囲が広い程、受け渡しの効率が良いらしい。確かにそんな気もする様な?

毎日する程でも無いけど、いざと言う時に動ける様にと、出来るだけ満タンにして欲しいと言われているので、コレは日課になった。


アイちゃんの食事が終われば朝のお仕事が始まる。

アイちゃんが手伝ってくれる様になってからは書類の山は無くなった。今日は色々教えて貰いながら仕事を片付ける。それでも一日分なんて大した事ないから、すぐに片付く。


アイちゃんが来てからと言うもの、仕事が早く終わる様になった。手伝ってくれるのも理由としては大きいけど、色んなことに詳しいから一々調べなくても済む。歴史とか、家の過去とか調べてたら時間がいくらあっても足りないし。そう言う事に関しては、アイちゃんはとても詳しいんだ。

た、多分。執務室の本。全部読み込んでるよね。


まだ二ヶ月しか経ってないのに。

私は改めてアイちゃんの凄さを実感した。

そして、私は改めて頑張ろうと思うのだった。

何処かの誰かは、誰かの為に努力します。

その誰かは、情報の大切さを理解しているので勉強します。寝る間も惜しんで。

しかし、もう既に若干弱点が見えてますが。


外伝にはその弱点とかについて書こうかなと思います。いつ投稿するかは分かりませんが、気長に待って頂けたらと思いますです。

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