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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十章 再臨
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二百四十九話 振り返り

色々な事があった。

始まりはただ、願いだった。平凡な願い。

それが、最も大切な物だったから。





私達の前に現れた男性。

妖精さん達が今度はそっちに群がっていた。

それでもまだ私の周りには沢山いるけどね。


「さて?僕に用事があるみたいですが?」


妖精の王様(?)が私達に話しかけて来たので応じた。


「こんにちわ。えっと、イヴです。よろしくお願いします」



何が"よろしく"なのだろうか。挨拶ってこれで良いのだろうか。何もわからない。今までほぼ全ての事を適当に誤魔化しながら生きて来たからだ。


あの頃は良かった。


その都度"正解"を教えて貰っていたから。

だからこれからやる事は、いや。あの時から正しいのかも、道と言っていいのかもわからない道を手探りでなんとか歩いて来た。多分そう思っている事がそもそも間違っているんだろうけど。


それでも確かな事はある。

変なおじ、じゃない。あのおじさんが必要だと言った妖精の雫は此処にある筈。

だからそれを貰う事が出来れば、私の大切な"答え"を手に入れられる。


上手く交渉できるかな?

失敗‥‥‥したら、どうしよう。

龍は嫌われている存在だ。竜聖国内ならまだしも、此処は国外。交渉すらさせてくれないかも。

嫌にうるさい心臓の音。

もしも、そう考えてしまうと怖くて仕方がない。


「あー、君はもしかすると」


妖精王様が、私を見て少し気不味そうな声で喋り始めた。

もうバレてる。隠し通すのは無理だった。


「あれはいつだったかな?二十?いや、三十年程前だったかな。タイミング的に、君はあの女の子の娘かな?」

「え?」

「うんうん。素質があったから加護を与えたけれど、既に僕を超えてしまっているね」

「あの?何の話し?」


黒龍がどうとかそう言う話じゃない?

娘?もしかしてお母さんの事かな。


「おっと!失礼したね。所で何の様だったかな?」


思い出したかの様にそう言った妖精王様は、私達に訊ねた。

妖精の雫が欲しいです。そう言いかけたけどミュエラが先に言葉を発した。


「この方達が信頼出来るかを妖精王様に見て頂きたいのです!」

「ん?ふーむ。ふむ。成る程。ミュエラ、君の意見はどうなのかな?」

「え!?わ、私ですか?」


質問に質問で返され、予想すらしていなかった事を問われたミュエラは、少し慌てて此方に視線を走らせる。

信頼されるだけの努力はした筈。


「エルフを除けば、最も信じられる人です。なので、この里に滞在する許可を下さい」


懇願し、私の為に必死に頭を下げてくれたミュエラ。慌てて私も頭を下げた。


「わかった。孫娘の頼みとあれば当然だね」

「え!?ま、孫!?」


お礼を言う前に驚きが噴き出てしまった。

妖精王様とミュエラは孫と祖父の関係らしい。とても見えない。パッと見、父娘にしか見えない。そう思えるくらいに妖精王様はとても若い。


「おや?そんなに驚くかい?」

「あ、その、失礼しました」

「いやいや。気にしないでおくれ。どうもエルフと言うのは急に老化が止まったりする事があるみたいなんだよね」

「お祖父様はもうかれこれ400歳ぐらいでしたでしょうか」

「えっ、でもミュエラは、15歳くらい?だよね?」

「し、失礼な!?もう22よ!?」

「そ、そうなの!?」


見えない。良い意味でも悪い意味でも。

それもそうだけど、ミュエラのお母さんがいくつなのかも疑問だ。間を取ったら200とかなのかな。


「今、私の事を子どもっぽいとか思ったでしょ!?」

「お、思ってないよ!」

「なら何で驚いたのよ!」

「ち、違うの」


やいのやいの私達は言い争い?あった。

その間、フユと妖精王様が会話をしている。

残念ながら私には聞こえてないけど。


「久しぶり、かな?」

「あぁ、違うよ。私は借りただけ。本人ではないから貴方の事は知らない。まあ、あの子の保護者であるには変わりないけど」

「そうか。君は、一度亡くなってるね」

「それがどうかしたの?」

「良かれと思った事だった。無理はしない様にしなよ。彼に口出しをするつもりはないけどね。心が傷つくと使えなくなるから」

「‥‥‥わかった」


気が付けば話題は変わっていた。

私は引き続き説教を受けている最中だけど。


「大体ね!公爵って何よ!?もっと早く言いなさいよ」

「で、でも、聞かれなかったし」

「まさかあんな所でミルクを飲んでいるのが公爵だなんて誰もわからないわよ!」

「勝手に勘違いしたんじゃん」

「ぐっ、うぅ」

「ミュエラは人の話聞かないもん」

「そ、それは、イヴだって無言なのが悪いでしょ!?」


グサッ。

確かにもっと色々話しておくべきだった。

とは思うけど、つい嫌われるのが怖くて、結局話さず終い。何せとっておきの秘密を、未だに打ち明けられていないから。


「お二人さん。もう良いかい?」


妖精王様の言葉で一時停戦だ。

ありがたい。ぶっちゃけ押されてたから。

無言で頷いた。


「イヴ君と言ったかな。君にお願いがあるんだが、どうだろうか?聞いてくれないかい?」


なんだろう。お願い?

私もお願いしたい事がある。


「交換条件なら、良いです」

「ふむふむ。何かな?」

「妖精の雫。貰えるなら」

「‥‥‥わかった。と、言ってもこれからお願いする事に繋がってるから、君にも利益があるね」

「それは?」

「世界樹の復活をお願いしたいんだ」



妖精王様はそう言って笑った。

私を真っ直ぐに見つめながら。

遅くなりました。ほぼ二ヶ月ぶりです。


がんばります。

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