二十四話 少女の選択
家を捨て少女は旅に出る。ここは未知なる場所。辺りを見回すと草花が生え小鳥の鳴き声が聞こえる。今は春の中頃冬を超えて一月と言ったところである。
少女はかつて野生動物に恐れられるほどであったが、少女は魔法で自身の気配を認識出来なくする事によって誰がどう見ても拙い少女に見えてしまう事だろう。
辺りを見回したが人目がない事に安堵しながら発見した街道に沿って歩き始める。退屈を紛らわす様に自然と話し始める。
『ここはどこなんだろうね?』
《そうですね街道がある以上、人間が通っているという事は間違い無いでしょう。いずれは人間と会えるでしょうけれど人と会いたいですか?》
そう言われてみてふと考える。そもそも私は人と一緒に暮らす事ができるのだろうか?
また黒龍と気付かれて逃げる様に旅に出るのがオチなのではないだろうか?私は何をやりたいのかもわからない。
『ねえアイちゃん私は何をしたらいいんだろう?』
《クロが決めた事ならなんでも良いのです。貴女自身が決める事が大切なのですから。例えば人と共に過ごすのも、たった1人で思うがままに生きるのも‥‥‥いえ貴女には私がいますから困った時はいつでも助けます》
『今更だけどさ、なんでそこまで助けてくれるの?』
《貴女に助けて貰ったからですよ》
そう言われても何をしたのかわからない。お世話にはなったが、お世話をした事はないと思うのだけど。結局具体的なものは決まってないけどまあいいかな?あと神様に何か頼まれた気がするんだけど思い出せないんだよね。
まあいっか!取り敢えずアイちゃんと生きてみる努力して、駄目そうなら村でも探してみようかな。
そう思いながら会話を再開する。
『ごめん思い出せないや』
《気にしないでください。それよりも何をやったら良いのか迷っているなら、何が自分に足りていないかを考えてそれを補う練習とかどうですか?》
『そもそも黒龍だとバレないためにはどうするのが良いかな?目立たない様にした方がいいよね』
《そうですねただこの前の様に龍化してしまう様な状況を作らない事が大事です。最善は龍化せずとも何でもできるのが良いです》
『鍛えるしか無いよね』
《もしくはどんな状況でも無視する事です》
『鍛える』
《わかりました。それでは当面の食事はどうしましょう?人間と合流するもしくは、山に篭るとかでしょうか》
『狩りをしながら鍛える』
《ならば人気のない山を目指しましょう》
そのアドバイスを聞き入れ街道を外れ見える限り遠くの山を目指し歩き出す。これは再び人に出会うまでの長い旅路である