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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十章 再臨
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二百四十八話 世代を超えた出会い

空を飛び始めて少しの時間が過ぎた。

地上には木々が立ち、凡そ森と言って差し支えない場所の上空に浮かんでいた。


「あの森の中?」

「そうです」


ミュエラ達が会話をしてる。

目を凝らせばエルフっぽい人達が歩いているのが見える。


「よし。行くか」

「ま、待って下さい!森には結界が張ってありますから」

「ん?あー、言われてみれば確かにね」

「解除しますから森の近くに降りて頂ければ」

「え?面倒。このままで良くない?」


フユは言うが早いか森の中に飛び込んだ。

例えるなら‥‥‥ジェットコースター?

そんな言葉が浮かんだ。兎に角、すごく速く飛び込んだ。


「いやーーーーー!!」


森の中にミュエラの絶叫が響き渡る。

何事かとこちら側を見つめるエルフのみんな。それを無視して結界をくり抜きながら真っ直ぐ飛ぶフユ。

着地の寸前にふわっと勢いを和らげエルフの里の中心に降り立った。


私達は無事に着地した。フユも私を降ろしてくれたので辺りを見渡す。

まず目についたことは、ミュエラが地面と睨めっこをしていた事。両膝をつけて四つん這いの状態。

落ち着くまでには時間がかかりそうだ。


次に目についた事は、エルフの里は沢山の木々に囲まれた空間に、木々を使った家が立ち並んでいる感じの村だった。森独特の青々とした匂いはどこか懐かしく思う。そんな感じの感傷に浸ってたらエルフの人達が一斉に弓を構えた。


「貴様ら!何者だ!?」


そう言えば、結界が張ってあるのにも関わらずそのまま侵入してしまった事を思い出した。

まずいと思ったけど、またもう既に手遅れで、矢の先端が私達を睨みつけている。今すぐ放たれてもおかしくないくらい空気が緊張している。一応エルフのみんなはミュエラに気がついた。


「里長?」


しかし、肝心のミュエラはヘロヘロだった。

呼びかけられて何とか立ち上がったけど足元が覚束ない。少し震えてる。

ちょっと可愛い。


「た、ただいま戻りました。この人達は私の客人です」

「客?里に人間を招き入れるのは規律に反するのでは?」


ひそひそ声で話し始めるエルフの皆さん。どうも私達は歓迎されてないらしい。弓矢を構えられてるから、もう理解はしていたけど。

まあ、私は人間じゃないけどね。フユも。

なーんてね。屁理屈だ。そんな冗談言える空気じゃない。


「今、そんな事を言ってる場合ですか!では何か良い案でもあるのですか!?」


ミュエラが怒った。聞こえちゃったんだね。


「我らには結界がある。いい加減里長も外に遊びに行くのは控えて頂きたいものですがね」


嫌味をたっぷりと込められた言葉がミュエラに投げ掛けられ、益々ミュエラがヒートアップする。と思ったけどその瞬間。フユが口を開いた。


「あ、結界?気付かなかった。そんな物張ってあったんだ?質が低過ぎて簡単に剥がしちゃった。ごめんね」


黙ってれば良いのに態々フユが煽り始めた。

私は怖いからパス。


ただ、気になった事があって、結界を解除したかどうかなんて向こうには判らないと言う事。ミュエラが開けたと思ってるだろうし、だからこそ勝手に招き入れたと思われてるだろうし。

そもそも結界には気付いてたよね。フユ。

まあ、私も態々言わないようにしとこう。喧嘩になるだろうし。もうなってるけど。巻き込まれない様にしよ。


あーだこーだ言いあってる。

フユはミュエラの支援をしてるのかと思えばそうでもないらしい。

エルフさん達側の一人が呆れながら何かを言ってる。


「里長。これは我らがエルフ族に対する反逆行為なのではありませんか?」


その言葉で周囲の弓矢を構えている人達から殺気を感じた。一触即発。

マズイかも。フユも魔力を溜めてる。


「例えそうであっても、私は皆を守る為に客を招いたのです。それともまさか、長である私の命に背くとでも?」

「そもそも人間など頼る必要がありません。信用も出来ません。如何に長の命だとしてもです」

「ならば妖精王様に会ってもらいます。妖精王様に認めて貰えたなら文句は無いですね?」


みんな同じエルフなのにすごい険悪な雰囲気。ミュエラ対、他のエルフさんと言う構図だ。ミュエラが優勢なのかな?

しかし、気になる単語が出て来た。聞き間違いでなければ妖精と言った。

もしかすると、此処に私の探していた物があるかもしれない。


その時。不意に頭の中に、何かが舞い降りた様な感覚を抱いた。

それは疑念。

あまりにも出来過ぎている様な。まるで、誰かが運命の道を用意しているみたいな。

その道を歩かされているみたいな感覚。


フユが私を見て笑っていた。


「来て良かったね。流石イヴだよ」

「フユは、知ってたの?」

「‥‥‥あ、うん」

「そっか」


本当に、私は‥‥‥馬鹿だ。どうしようも無い程の。

フユが用意していた。それを私に歩かせるために、道を。





それからミュエラに連れられ湖に辿り着いた。連行とも言うかも。

そこはとても綺麗な場所で、湖の周りには花が咲き乱れていた。キラキラと輝きが空を舞い、その輝きが私達に近付いて来た。

それはよく見ると小さな人(?)だった。


「綺麗な人が来たー」

「こっちの白いのも綺麗だよ。あれ?」

「遊ぼ、遊ぼ」

「何処かで見たことある!」

「最近会ったよー。うーんと、いつだっけ」


私達はあっと言う間に群がられた。

フユも扱いづらそうに手で引き剥がしてる。

私は手を取られてしまって引っ張られた。


「妖精さん。今日は忙しいのです」


ミュエラがそう言ったら、妖精さん達は絶望しきった様な顔になってしまった。

一斉に表情が変わったのは少し面白く感じた。

しかし、同時に申し訳ない気持ちも。


「それで、その。妖精王様にお会いしたいのですが」


ミュエラも私と同じ様に申し訳なさそうに頼み込んでる。


「うん。良いよー」


するとあら不思議。意外にも快く引き受けてくれて、弾ける様な笑顔に早変わりすると驚く程素早く飛んで行った。

ポカンとしてたら思い出したかの様に、先程の質問攻めが再開した。


「待ってる間遊ぼー」

「ねえねえ君は誰?」

「君、綺麗な瞳だね」

「何処かで会ったこと無い?」


終わったと思いきや、また引っ張られ始めた。

あちらこちらから質問攻めに遭い戸惑ってしまう。何だっけ。この光景、記憶にある様な。


「あーもう。寄るな寄るな。私の妹から離れて」


フユが私を庇ってくれた。手で振り払いながら私の前に立つ。すると今度は標的がフユになってしまった。


「じゃあ代わりにあそぼ」

「そうだそうだー」

「ええい、寄るな。子どもか、面倒くさいな」

「むー、子どもじゃないしー。妖精だしー」

「知らんわ!こっちは忙しいんだよ!」

「どうでも良いけど遊ぼー」

「遊びに来たわけじゃないって言ってるでしょーが!」


妖精さん達?とフユがじゃれあいをしてる。

あぁ、私を庇ったばかりに。



そして私達が揉みくちゃにされそうになったその時。一人の男性の声が割って入った。


「こらこら、あまり人を困らせては駄目ですよ」


とても綺麗な、とても聞き取りやすい声。

朗らかに笑う青い髪の男性が、私たちの前に現れるのだった。

もう直ぐこの章は終わります。

更新が遅くなってるのでちょっとアレですが。


がんばります。

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