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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十章 再臨
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二百四十四話 強権

周囲は自由に意見を言い合って収拾がつかなくなってしまっていた。この場に居る大勢が寄ってたかって一人の意見を否定する状況。


それもその筈で、王が反対派であり、ことさらに白龍も少し言い含んだものの概ね反対意見。上の二名がそう言ってしまえば、自ずと周りもそれに乗っかるのは当然だ。

誰もが助けを拒もうといった空気が流れ、王や白龍に追従すると言った雰囲気。



そんな空気の流れだからだろうか?

何も言えないまま、心がぐらぐらと揺れて周囲の雑音が小さくなって行った。

その時。私は自問自答を繰り返していた。



私はおかしいのだろうか?

助けを求めている人を助けたいと思うのは。

皆んなが否定をするという事はつまり、私が間違っているのだろうことは薄々勘付いている。

もし、仮にアイちゃんが居たならどう答えるか。

いつも正しい事を言うアイちゃんなら。


《助けた所で何の意味が有るのですか?助ける事によって貴女に災いが降り掛かるやも知れません。それでも、貴女は助けたいと言うのですか?》


あぁ、うん。だよね。

否定するのが目に浮かぶ。


《‥‥‥助けたいのですか?》


わからない。

わからないから言葉にならない。

口を噤む事しかできない。周囲を割って意見を言う事さえも。そんな意気地なしの私だ。反論すらできない。

そんな、無音の世界に取り残された一人ぼっちの私はただ項垂れていた。


場違いなんじゃ無いかって。

私は無力で、弱っちくて、助けが無ければどうにも生きていく事すら不可能なんだと。

そう思い込んでしまう。


「イヴはどう思う?」


不意にそんな声が聞こえた。


フユが私に訊ねていた。

別に何とも思わない。どうせ無駄なんだから。私なんて。

そう思っても、声には出ないんだけどね。


「まあ、答えは知ってるけどね」


ニヤリと笑うフユ。

きっと、フユは私も反対するだろって思ってるんだと思う。笑ったのはそう言う意味だ。多分。


「ほら、聞かせて。イヴの考え」


私の腕は引っ張られ、皆の前に吊し上げられてしまった。これでは私の意見を言わないという選択肢すら無くなってしまった。折角隅の方に隠れてたのに。


「あっと、その」


何度経験しても慣れない視線の中心。

幾つかある種類の中でもとりわけ苦手なヤツだ。

言葉を絞り出すのは大変だが、それでも早く喋らなければもっと大変な目に遭う。

だから思い切って言葉を練って口を開けた。

その瞬間にふと、助けを求めていた人の事が気になって見た。



練った言葉は消し飛んだ。


そこに居たのは金の髪のエルフ。

よく知った顔のエルフがこちらに驚いた表情で見つめていた。


「ルビー?」

「は、あ、え?」

「この子はルビーじゃないよ。イヴ」


ルビーは偽名でイヴが本名。

フユが間違いを訂正してくれた。

しかし、私の偽名を知ってるという事はそういう事だ。

間違い無い。ミュエラだ。


「し、失礼しました。イヴ様」

「あ、うん」


一緒に冒険した時は呼び捨てだった。

それが今は距離を感じる。少し寂しい。


「一応。イヴの意見は?」


すっぱ抜けて忘れてしまっていた事を思い出した。

そうだ。言わないといけない。

けど、深刻そうなミュエラの表情を見ればとても断れない。

視線が注がれて怯みそうになる。けど、私は何と言われようと、


「助ける。助けたいと思う」


王様は無表情。周囲の人は眉を顰める。同様にミュエラも。白龍は少し表情を崩して笑う。


「だろうね。そう言うと思った」

「え?」

「それが、イヴ様の意見ですか?」


王様がジッと見つめて問いかけて来た。

きっと王様は怒っていると思う。けど、こうなったら自棄だ。私は逃げない。


「はい」

「し、しかし、陛下!」

「イヴ公爵の願い。確かに聞き届けよう」

「え?」


周りは反対一色だった。

現にミュエラも驚いてるし、周りの人達もそう。何故かフユは笑ってるけど。


「な、何故?」

「ん?どうしましたか?イヴ公爵」

「あ、いえ。先程は駄目だって言ってたので」

「ふむ。そうですな」

「怒ってないですか?」


急な温度差が理解出来ず、皆んなは反対なのに、どうして私の意見だけで決定されたのかがわからない。


ひょっとして黒龍だから?

こんなちっぽけな私の意見を聞くの?


「フユ様はどうお考えですか?」

「ん?あー、うん。イヴがそう言うなら良いと思う」

「イヴ様。そういう事です」


え?余計分からない。

私の意見をフユが賛成だから?

でも、反対派の方が多いから理由にはならないと思う。

もしかして、フユが賛成したから王様も続いたって事になるのかな。実質私の我儘は聞き入れるって事になるから、それは良くない気がする。偏るよね。


予想通り反対派の意見が飛び出た。


「陛下!何故その様な決定になるのか、納得のいける説明を願います!」


ほら。やっぱり皆んなは納得してない。

それはまあそうだよねとしか。


「イヴ公爵と白龍両名の賛成である。理由は以上だ」


うーん。微妙に説明になってない?


「こんな、小娘の意見を聞くのですか!?白龍様の言葉なら理解します。しかし、こんな小娘に白龍様が仕えているのにも納得していないのに!」

「は?誰に向かって口聞いてんの。私の大切な妹に偉そうに言ったからには勿論、覚悟は出来てんだよね?」


フユがブチギレた。一瞬で空気が凍りついた。寒気がする程に。私を小娘って呼んだ貴族の人は怯んでるよ。

別にそんなに気にしてないんだけど。


「ふ、フユ様!?落ち着いて下さい」

「鬱陶しい。どうせアンタらには関係無いでしょ。陰でコソコソと不満を述べるだけの癖にさ」

「ぐっ!」

「アンタらよりも余程イヴの方が頑張ってるよ。役立たずの癖にイヴに僻まないでくれる?」


フユが言いたい事を言ったら静かになった。

フユも言い過ぎだと思うけど。

とは言え、流石に静まり返った所に口を開けるほど私は頑丈な心臓は持ってないよ。


「ゴホン。あー、エルフの長殿は助力を願っておりましたな。イヴ公爵にお任せするので要望はイヴ公爵を通して伝えて下さい」

「感謝致します」


深々と頭を下げて感謝を述べるミュエラ。


「さて。皆の者。ご苦労であった。エルフ殿は少々お待ちを」


王様の一声で議会?は片付いた。

続々と皆は去って行ったけど、私は気不味さを感じたまま立ち尽くすのだった。

時折出てくるアイちゃんは偽物です。

主人公の勝手なイメージです。

本人なら必ず最後には折れますから。


あと、フユは別に否定はしてないですね。あくまで自分の意見を言っただけで、主人公の意見に絶対賛成です。

‥‥‥嫌な顔はするかもですが。どちらにせよ主人公は最強の切り札を持っているので。

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