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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十章 再臨
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二百四十三話 大事なもの

「んで?イヴはこれから何をしようとしてるのかな?」


そう言って、私に問い掛けるのは白龍のフユ。

私達は変なおじさんとの会話を済ませてから執務室に戻って来た。

正確には私達で部屋に戻るつもりでは無くて、私だけが部屋に戻る予定だった。けど何故か、フユがついて来た。

まあ、それ自体は構わない事だ。


「仕事」


私は目の前に広がる書類の山を眺めながらフユに短く答えた。

勿論、私としてはそれ以外の他に何かあるのだろうかと訊ねるかの様にだ。至極当然だよね。と、そんな感じで。


「ああ!もうっ!そんなの良いから!」


何故だか知らないけれど、フユは怒ってるみたいだ。私から仕事を取り上げてしまった。

フユは「そんなの」と言ったけれど、私にとって見れば大切な仕事で、私の存在意義に等しい物だと思った。

だから私はお預けを無視して仕事に取り掛かろうとするも、フユに妨害された。


「ストップ!今日はノーワークデーだよ!」

「何で?」

「なんでも!」

「理由になってない。拒否」

「ああっ!この分からずや!」


フユは引き下がるつもりはない様だ。

言うまでもなく私も。


「どうして邪魔するの」


私がジトリと睨めばそれに全く怯む様子もなく、私を見つめてきた。


「そりゃそうでしょうよ!来る日も来る日も仕事仕事。一体いつ休んでるのさ!」

「昨日はよく寝た」

「そう言う事じゃない!」


また怒られた。

今日のフユは理不尽モードなのかな。

何をしても怒りそうな気がして来た。


「良い?毎日働いてばかりだと身体を壊しちゃうよ。だから、適度に休日を作るべきなんだよ」

「でも、仕事があるから」

「ええい!口答え禁止!」



そして私は捕らえられてしまった。膝の上という名の特等席を宛てがわれ、逃がさないよと言わんばかりの両腕でお腹を押さえつけられた。


「大体さ、妖精の雫はどうするの?」

「‥‥‥仕事の片手間に」

「そんな暇あるの?」

「‥‥‥」

「すぐにすぐは必要無いよ。でも、早い方がいいよね?」

「それは、まあ、そうだけど」

「だったらさ、今から雫を探しに行かない?」

「でも、仕事が」

「ああ゛!」

「ヒッ」


ど、どうやらフユには仕事という単語は禁句らしい。私は一つ学習した。けど、自分勝手な理由で仕事を放棄したら今度こそ。

王様に怒られるのも怖いし、かと言ってフユも怖いし。私どうしたら。


そんな感じでまごまごしてた時に、メイド長が訪れた。

何か用事がある様で、いつもは丁寧な挨拶なのに、今回はそれを省略して扉のノックだけで入室して来た。

この事から結構な大事があるのは窺える。


「イヴ様。と、フユ様も。少し宜しいですか?」

「うん」

「何?」

「王家からの使いが来ておりまして、王城に参内して欲しいとの事で。詳しい事は判りませんが、急ぎの様です」


仕事が舞い降りて来てしまったみたいだ。

仕方ない、よね?フユ?


私はチラリとフユに視線を送れば、その顔には明らかに嫌そうな感情が描いてあった。とは言え、一応解放はしてくれるみたいで、私達は急いで王城へと向かった。






城の中に入れば、勝手に進んでも良さそうな雰囲気なので(具体的には警護の騎士さん達は、私が敷地に入ってもお辞儀をしてくれて、通せんぼする気は無さそう)玉座の間にコッソリとお邪魔した。

忍んだ理由としてはどうやら会話中らしく、会話を遮っては良くないと思ったから。


王様と誰かが会話をしているのが聞こえ、私が耳を澄ませば、なんだか聞き覚えのある様な声が耳に届いた。


「‥‥‥ませんが」

「それであれば快諾とは行かぬ」

「か、必ずや対価はご用意致しますので」



‥‥‥あんまり雲行きは良くないのかな。

女性が何かを頼んでいて、王様が渋ってるみたい。

周りの人達も良い顔はしてない。


え?私?


私は話の流れがよくわかんないから。

と言うか、よく見えない。前の人が壁になってて見えないよ。でも、何だか聞き覚えがあるんだよね。この声。何処だったっけ?



私が唸っていると王様がフユには気が付いた。

多分。私はバレてない。


「ん?フユ様。来て頂けましたか」

「一応。しょうもない話だったら帰るけど」

「は、はい。理解しております」


声だけでも王様が引いてるのが判るくらいタジタジだ。フユはとても怖いもんね。気持ちは分かるよ。王様。

フユは何でか不機嫌だし。


「で?って、あっ」

「‥‥‥白龍様。お久しぶりです」

「はあ。何でここに居るの?あ、いや。説明は要らない」

「え?」



会話を聞くだけでもフユのマイペースは感じ取れる。と言うか、私、呼ばれたんだよね?

あれ?

なんだか忘れ去られてる気がする。何だかなあ。

まあいっか。聞き耳だけ立てとこ。


「今は何も出来る事は無い。それでも里を守る為に力を貸してくれってね。んで、それに対して何を差し出せるかって話か。うん。至極当然だね」

「‥‥‥はい」

「呼んだのは私達の意見を聞きたかったから。それなら、うーん。私の意見はどっちでも良いかな。好きにしてって感じ」

「それがフユ様の考えですかな?」

「うん」

「で、ですが、必ず」


微かに感じる違和感を覚えながらも会話を聞く事に徹した。

話の流れ的には女性が、王様やフユに食い下がる感じかな。しかし、どうしてフユは話しが理解出来るんだろう?

私と同じタイミングで参加した筈なのに。

あっ、アレか。私のいない所で会議とかを頻繁にしてるんだろうね。


流石フユ。信頼されてるんだなあ。私と違って。

凄いなあ。



私はポカーンとしながら薄らぼんやりとそんな事を考えながら会話を聞くのだった。

信頼度に関しては少女の方が上です。

乙女はどちらかと言うと恐れの方が正しいですかね。ビビられまくりです。

特に今、機嫌悪いですし。何故か。


少女の方は親しみやすいのも理由にあります。

雰囲気とか、表情とか。

まあ、それがかえって良くない事もありますが。

何事も、良い面も悪い面もあると思うのです。

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