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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十章 再臨
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二百四十二話 底の塊

何とかプレゼントを渡し終えてから逃げる様に家に帰って来た。理由としては会場の全員に注目されている気がしたから。

それも当然と言えばそうなんだけど、周囲の人に悪態をつかれたら、今の私は耐えられそうに無かったのが大きい。


‥‥‥うん。気が小さいよね、私は。ラーナちゃんはあんなにも堂々としていたのに。

それに比べて私は‥‥‥本当に。



少女は小さな溜息を溢しながら執務室の椅子に背を預けた。

そうすると自然に書類へと視線は流れて、半ば無意識に手を伸ばして書類を手繰り寄せる。

結論としては、考えたくない事は捨て置いて仕事の虫になる事で精神の安定を図った。


「西方侵攻計画。イヴ公爵への依頼」


そう書かれた王家の印の入った封筒が目に入った。

その瞬間。

慌てて目を見開く少女。封筒をひっくり返して裏面にあった差し出し日などを確認したりした。


「昨日?王様からの依頼。確認しないと」


少女は恐る恐る中を開けて書面を見た。

曰く、


「前回の侵攻をもう一度。総司令官は変わらず。部下も同様。全指揮系統も変更無し」


らしい。

つまり何も変わらない。今度こそ成果を出せと言う事。少女はそう受け取った。そんな少女の答えは‥‥‥


「うう。帰りたい。王様達にはお世話になってるけど、私には荷が重いよ。それに、もし、今度失敗したら?」


ふるふると身体を揺らす少女。

それもその筈。一度失敗しているのに、またも最重要な役職を任ぜられるのは、次は無いと言われている気がしてならないから。

期待されていると言われれば聞こえが良いが、それは重荷に他ならないのも事実。


「リナちゃんと離れてから丸一年。心配してるだろうし、かと言って王様達には記憶の無かった時にお世話にもなったし。アイちゃんの方もなんとかしたいし。手が足りないよ」



さらに他にも気になる点がある。

それは王家からの依頼分の下の方。


「北方の獣王連合国からの横槍も有り得る為、開戦から可能な限り迅速に平定する。或いは、北方の外交関係について良き案があれば助かります」



そんなのある訳ないじゃん。

「さっさと西を攻めてからすぐに帰って来い」

って事でしょ?無理だよ。そんなの。

戦争一つでさえこんなに手が足りないのに、アイちゃんがとか、リナちゃんがとかやってる暇が無い。


ぐぬぬ。

何とか全部を解決する妙案とか無いかな?

うん。無いや。取り敢えず‥‥‥戦争をなんとかしなきゃ。逃げるのも許されないし。

よし!そうと決まれば行動に。



少女がそう考えた瞬間。

神が訪れた。所謂女神が。銀の髪を下げ、宝石の様な輝きを放つ青い瞳の乙女が。

扉を勢いよく開け放ち、無作法すら意に介せずに少女に話し掛ける。


「イヴ。ちょっと良い?」

「え、なに?」

「良いから」


乙女は返事は待たずに、少し強引に手を引きながら少女を何処かへと連れて行く。

訳も分からない少女は困惑しながらも、抵抗せずに引かれるままについて行った。

そこは普段使う事のない屋敷の隅の方の部屋で、中に入ればそこには男性が居た。

その人と少女は何回か会っているのだが、あまり会話をした事はないので、少女が不安に思っているとその男性が話し始めた。


「改めましてイヴ様。お世話になっております」


そんな事を言われた。

しかし、お世話をした事はないので首を傾げる。


「その、雇って頂き」

「まだイヴには言ってない」

「な!?」

「まあ、どっちでも良いでしょ」

「し、しかし」

「それより本題」

「あ、う、はい」


よく分からないけど二人で会話してるから置いてけぼり。

そんな状況にポカンとしてたら、一つ咳払いを置いてから喋り始めた。


「アイ様の素体をお作りする為に幾つか必要な物がございまして、これから申し上げる物を御用立てして頂きたいと思ってます」

「ん?素体?アイちゃんを知ってるの?」


何だか知らない事が増えた。

どうしてこの人はアイちゃんを知ってるんだろう?

昔、魂がどうとかの変なおじさんだよね?この人。私に魂が二つあるのを知ってるのはわかるけど、何で名前を?

あ、フユが話したとか?それなら納得。


「ふ、フユ様?」

「それも話してない」

「あ、ああ、成る程」

「素体ってなに?」

「言うなれば魂の入れ物です。アイ様の身体であり、命でもある物です。それを作り、アイ様の復活をしてくれと頼まれたのですが」

「え!?」


なんとも信じ難い事に、このおじさんはアイちゃんを復活すると言っている。

でも、そんな事出来るのだろうか?

それに頼んだって言ったけど、まさかフユが?私達のために?あの球もその為の物?

前はフユを疑ってたけど、私はひょっとしなくてもとんでもない誤解をしていたのでは?


‥‥‥馬鹿だ。私の方がよっぽど。アイちゃんなんかよりも。


「‥‥‥どうしたら良いの?」

「妖精の雫という物があります。何処にあるかは判りませんが、それが必要です」

「それがあれば何とかなるの?」

「はい」


どうだろう。信じて良いのだろうか。

‥‥‥いや。信じる他無い。私に何とかする術は無い。それなら、駄目でもそれに縋るしか無い。

フユにも謝らないといけない。

謝罪で許される事は無いだろうけど。でも、謝らないのはもっと駄目だ。


「ごめんフユ。疑って」


あの時。アイちゃんに裏切られた時。あれから全てが敵に見えてた。だから、ミュエラの優しさがとても心地良かった。

本当はフユも変わらず優しかったのに、それに気付かずに仮面を被ってた。

あの旅はそれを誤魔化して目の前から背けてただけ。逃げただけの旅だった。


「気にしてない」


フユは短くそう言ってくれた。

でも、フユの表情には随分と複雑そうな模様が浮かんでた。

フユは許してくれた。それでも私は噛み締める。私は許された訳ではないと自戒を込めながら、自責の念に囚われるのだった。

随分と日が空きました。かなり中途半端な感じで止まってしまっていましたね。

本当に長々とお待たせして申し訳無いです。


そろそろ再開できると思いますです。

m(*_ _)m

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