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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十章 再臨
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二百四十一話 舞い降りた天使

周囲の人達がラーナちゃんに話し掛けようとした瞬間。


私は動いた。


その場に居た誰よりも早く、ラーナちゃんの目の前に躍り出た。

そして話し掛けるのだが、肝心のラーナちゃんは、まるで鳩が豆鉄砲を食らったような驚いた表情だった。


それもその筈。つい先程までの王女はと言うと。




………。


パーティー会場から歩いて少しの距離にある小さな部屋に王女は居た。

「メイクを整える為」と、会場から失礼した王女様。それはあくまで体裁であり、本当の所は、貴族同士のただただ退屈で無駄なおべんちゃらの擦りつけ合いを避けるため。

そう言った物が特に面倒に感じる王女様は、つい先程逃げる様にして、念の為の体裁を取り繕いながらこの部屋にやって来た。

そして開口一言。


「死ぬ程退屈ですわ」


とても王女様とは思えぬ言葉遣い。

斜め後ろに控えるメイドも苦笑を浮かべるものの、何かを言う事はない。

ここには王女様の暴言を止められる者は居ないのだ。


「あぁ、イヴ様」


王女は敬愛する友人の名を呼ぶ。

その友人は、今回のパーティーには来れないと思っていた。

聞くところによると体調が悪いらしく、そもそも来れないだろう事を見越してこの誕生会を決行したのだ。既に他の貴族には招待状を送っていたのだから、呼んでおきながら「やっぱ無しで」とは急には言えない物で。

来ないとなれば自らの役目として徹する事が出来る。諦めがついていたのだから。

だからこそ、心を無にして臨んだと言うのに。


それが、来てしまった。


勿論来てくれた事は素直に嬉しい。

嬉しいからこそ、折角来てくれたのに会話が出来ない事が煩わしく感じるのだ。

手に届かぬなら諦められる。だが、目の前にそれがあるとしたら?


感情が猛り狂いそうになる。

役目なんて忘れてしまう程に。


そもそもどうしてこんなにも少女優先なのか。

それは、王女には友人と呼べる者がおらず、王女というだけで身の回りの年上でさえも恭しく接して来るのだ。

つまり下から見上げられる事はあっても、王女自身にとっての対等もしくは、見上げる存在はいなかった。

母や父は一応そう言った存在だが、なんとなく距離を感じてしまう。


単刀直入に言えば同年代の友達が欲しい。たったそれだけのこと。そんなちっぽけな願望を、まさか王女ともあろう者が欲しているとは誰も思わず。


今回のパーティーには多くの貴族が参加している。しかし、参加しているのは大抵その家の当主なので殆どが大人。同年代は少ない。

しかも序列的な物を重視しているのか、話し掛けられる順番みたいな物まで出来てしまっていて、恐らくその数少ない同年代が王女に話し掛ける機会は回ってこないだろう。

それなら公爵家の一人であるその友人は、王女に真っ先に話し掛けても良いのではないかと言えばそうではなく、周りの貴族がその公爵の邪魔をしている。

勿論表立って邪魔をしている訳では無いが、休む間も無く会話を持ちかけられるので、流石に王女は察した。

それが続いて思わず視線を友人に向ければ、まるで諦めたかの様に食事をしていた。




それで何とか逃げて来た。

しかし、それももうおしまい。

早く主役は戻らなくてはならない。

主役なのに。一番楽しめていない気がする。

そんな愚痴を誰にも聞こえない様に溢しながら元の広場へと戻った。



戻って早々。誰かに話しかけられた。


「ラーナち、王女様」


その音はよく聞き慣れた声。透き通る様な、或いは天使の福音にも勝るとも劣らないと思える様な声。

先程までの苦悶が一瞬で消し飛んでしまった。代わりに焦りに呑まれてしまうのだが。





さて。話し掛ける事には成功した。

でも、こう、改まってプレゼントをするのってなんだか気恥ずかしい。

そもそも喜んでくれるかどうかも不安だし。

うぅ。変じゃないよね?安物だって思われたりしない?

あれだけ作ってる時はノリノリだったのに、「いざ渡すぞー」てなると緊張しちゃう。

こうなったらさ、パパッと渡しておしまい!

てな訳にはいかないよねえ。うん。

ええい!私。覚悟を決めろ。フユにも手伝って貰ったんだ。その頑張りを無駄にするつもりか!?

さあ!早く。渡すんだよ。私。


「その、王女様にプレゼントを。大した物ではないですが」

「え!?イヴ様から、私にですか!?本当に?」

「は、はい」


何だか知らないけれど、ラーナちゃんも緊張してるのか、そのせいで私もますます緊張してしまった。


ハイ。生まれたての子鹿が二人分。


お互いにガッチガチに固まりながら、プルプルと震えてプレゼントの小包を手渡した。

そんな感じで受け取ったラーナちゃんは、恐る恐る私に目を向けて問いかけて来た。


「あ、開けてもよろしいですか?」

「ど、どうぞ」


私の言葉に続いて包みを解き、それを見て驚きを隠せずに、プレゼントを凝視するラーナちゃん。


「これは」

「髪飾りです。綺麗なラーナちゃんに似合うかなっておもったから‥‥‥」


そう言いながら急に恥ずかしくなってしまった。だって、ラーナちゃんが顔を赤に染めながら照れるんだもの。


「ほら、着けてあげたら?」

「い、良いんですか!?」


フユが提案を掲げ、それに食い気味に釣られるラーナちゃん。凄く必死だ。

そんなに私に髪飾りを着けて貰うのが嬉しいの?

よくわかんないけど、私がその質問をする側では?


「まあ、ラーナちゃんがどうしてもって言うなら」

「どうしても!」


わあ。凄い。返事に1秒もかかってないよ。

まあ、そこまでお願いされたならと思い、とても緊張している人が、とても緊張する人を近くで眺めながらプレゼントの髪飾りを着けてあげるのだった。

更新遅れてますね。


読者様。神様。暫く更新ペースが落ちると思います。

申し訳ないです。m(*_ _)m

何でもするので許してください。


少し。いえ、ガッツリ今後の展開で悩んでます。

主にアイちゃんをどうするかですね。能力とか、思考の部分とか。3人の絡みとか。


ぐぬぬ。悩ましいです。


あ、ちなみに主人公枠。つまり、龍が増える予定は無しです。3人がメインになると思います。

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