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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十章 再臨
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二百三十四話 少女のいない時

少女は目を覚まして周囲を確認する。

よくよく見ればどうやら今は夜らしい。

近くに置いてあったランタンらしき物を手に取って廊下に出れば、真夜中では無いらしい。静かだが明るいので、自分以外は多分起きているだろう事を理解した。


私がどれだけ寝ていたのかわからないので、誰かしらに話を聞く為に人のいそうな場所を求めて歩く。

そうすれば一人のメイドに出会った。

それはリスタと呼ばれるメイド見習い。この屋敷に戻ってから会うのは初めての相手。

向こうは驚いていた。正確には表情に書いてある。


「あ!イヴお嬢様!」

「えっと、こんにちわ」


リスタさんが嬉しそうに駆け寄って来た。

夜に大声を出してたらまたオルトワさんに叱られちゃうよ。

そんな感想を抱いたけれど、嬉しそうな反応が、私にとって本当に嬉しくてそんな些細な事は気にならない。


「あー、このプニプニほっぺ。懐かしいですう」


急に抱きついたと思ったら私の頬を触り始めるリスタさん。


イヤ、そっちかよ。

私のリスタさんに対する好感度がほんの少し下がった。

私は露骨に不機嫌になった。


多分それを察したリスタさん。


「あ!も、勿論戻って来てくれて嬉しいですよ!?一応メイド長から帰ってきたとは聞いていたんですが、中々タイミングが無かったです」

「そうだね」

「それはそうと、どうかしましたか?」


屈託の無い笑顔で用事を聞いてくれるリスタさん。

問われて私は思い出した。元々人を探していたんだ。

私は別に何をしたかったとかは無いけど。強いて言うなら、会話をしたかった。


「私が居なくて、皆んなはどうだったの?」


思わず訊いてしまう。

悪い答えが怖い癖に、聞かずにはいられなかった。


「皆んな。ですか。私は少々退屈でした」

「そうなの?」

「はい。お嬢様がいなければ仕事が無くて。‥‥‥あ!」


何かを思い出したかの様に、突如として叫ぶリスタさん。


「実は、大変だったんですよ。お嬢様が居なくて」

「え!?」


どうやら私が居ない所為で大変だったらしい。

益々、罪悪感が湧いてくる。


「そのですね。フユお嬢様とメイド長が喧嘩したんですよ」

「ほぇ?」


私はてっきり、直接私に関わる問題が発生したのかと思った。そうではないらしい。

とは言え、喧嘩も一大事と言えばそうだし、私が遠からずの原因の可能性もある。

何にせよ聞かなければ。


「それは、どんな事なの?」

「はい。メイド長がいつも通り食事を持って行ったんですよ。そしたら、フユお嬢様がピリピリしてたのか拒絶したんですよ」


あー、それ聞いたかも。

オルトワさんから直接聞いた。

なんだけど、態々話してくれてるのに遮るのは良くないよね。

黙って聞いとこう。相槌を挟むのも忘れずにね。


「するとメイド長が怒っちゃって。ならもう作りません!って言っちゃったんですよね」

「ふむふむ」

「でも、なんだかんだで作ってあげてて、今更1人増えたところで手間は変わらないって言ってました」

「へえ」


なんだかんだで優しいんだよね。オルトワさん。


「流石にフユお嬢様も悪いと思ったのか、食堂には顔は出さなかったんですけど、食器だけは部屋の前に置いてあって、一応食事は摂ってたみたいですよ」

「ふーん」


私が家出したから機嫌が悪かったのかな?

なーんて。まさか。自意識過剰。


「あっと、それよりもですよ!」


またもや急に大声を出すリスタさん。

また何か思い出したみたい。


「フユお嬢様が男性を連れて来たんですよ。その方は結構年齢は上だと思うんですけど、ひょっとして、フユお嬢様は年上の方が好みなんですかね?」

「う、うーん?」


なんとも言えない。

人付き合いは人それぞれだから、私が何か言える様な事は無い。


「あ、でも、別部屋なので流石に。いや!人前ではそう言って健全に見せ、夜には‥‥‥キャー」


何か知らない間にリスタさんが盛り上がってる。

どうしたんだろう?

‥‥‥なんか、話し合いをする空気じゃ無くなっちゃったな。


「ごめん。リスタさんこの辺で」

「あ!そうですね。スミマセン。話が脱線してしまって」


そう言ってリスタさんは戻って行った。

廊下の角を曲がった瞬間。リスタさんの悲鳴と話し声が聞こえた。


「はう!?メイド長!?」

「ちょっと宜しいですか?ねえ?リスタさん」

「い、いえ。よろしくないです!」

「まず‥‥アナタは‥‥ながら」

「痛いです!離して下さい‥‥んです」


あからさまにオルトワさんの機嫌が悪い。

矛先が向いてなくても判る位には。

何かあったみたいだ。静かになった。

多分、騒がしかったから人が集まったのかな?

まあ、気にしない様にしとこう。

さて、仕事でもしようか。退屈だもの。幾らでもあるし。うん。そうしよう。コツコツやらないと終わんないからね。


私はそう思って取り敢えず自室に戻った。


するとそこには有り得ない光景が。


私のベッドが蠢いていた。正確にはベッドの中の布の塊が。勿論布団が生きているとか言う常識外れな答えは聞いた事がない。

さらに私の部屋にはベッドは一つなので、アレは私ので間違い無い筈。

つまり、私以外の何か。それも生物が隠れていると見て良い。


私は意を決して、その正体を探る為に布団を捲れば、布団の蠢きよりもさらに驚いてしまう存在がそこに居たのだった。

さて、ホラー展開です。

布団が生きている。ナニカが隠れている。何者かが遠隔で操作している。


の、どれかです。

これは難しいですね。


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