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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十章 再臨
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二百三十三話 似た者同士

誰も居ない部屋で虚しく眠る少女。

一頻り泣いていた乙女は部屋を出て行っていた。なので少女の眠りを妨げる者は居ない。



ふわふわと浮かぶ感覚。なんだか心地いい。不思議な場所。

今、私は浮かんでる。気付いたらここに居た。

地面はどこだろうか?そもそも重力が無い?

そんな感じ。無いなら作っちゃおうか?

あっちが地面かな。うん。合ってる?一応見えて来たけど。



少女は疑問を抱きながら夢の中を操り地面へと着地した。

不可思議なのは地面だけでなく周囲はぼやけている。

夢の中だという事実に少女はまだ気付けていない。

不思議な光景に目を奪われていると誰かの声が聞こえて来た。

それは後ろから。声が近付いて来た。


《イヴ》


その声はよく知った声だった。

他でもない。大切な人。


『アイちゃん』

《久しぶりになりますか》

『うん』


改まって顔を合わせると言葉が出てこない。

言いたい事は一杯ある筈なのに、何から話せば良いのかわからない。


《少し、お願いがあるのですが》

『何?』

《おでこを貸して欲しいです。その、今度は裏切りませんから》



アイちゃんから頼み事をされた。

構わない。けど、一つ、思い出したくない結果を思い出した。

「裏切られた」という結果を。


《本当は先に謝らないといけないのですよね。ですが、どうしても知りたい事があるのです》

『何をするの?』

《記憶を見せて欲しいのです》

『それは』


それはつまり、私の記憶に触れるという事。

触れたなら消す事も可能。アイちゃんなら私の記憶を消せる。なので、どうしてもすぐには頷けなかった。


《考えている事はわかります。そして疑われるのも当然です。私からは信じて欲しいとしか言えませんから》

『うん』

《お願いします》


頼まれたからそれに応えたい。

でも、まだアイちゃんは、私に話していない事がある。直感だけど。


『どうして裏切ったの?』


私は問い掛ける。

この質問への返答次第で決める。

答えが信用に足るか。自分で判断しないと。



互いが見つめ合った。

そして、ややあって双赤眼の少女が視線を逸らす。それから視線を彷徨わせ、時折見つめてくる。後ろめたい様な、観念した様な目の色で、少しずつ話し始める。


《あの時。寿命が近い事は理解していました。力を解放すれば居場所が無くなる事も。それでも貴女を守る為には、》

『違う。そっちじゃない』


守る為なんて言ったけど、私の記憶を消す必要なんて無いよ。嘘を吐いてる。


《‥‥‥貴女は今後、一人でも大丈夫だと思いました。なので、私だけを消そうと》

『でも改竄したところで記憶の不具合は生じるよね』

《そうですね》


ああ、焦ったい。理解してる癖に。

私が知ってる情報以外の全ての事だって。


『隠してるのは何?』

《‥‥‥》

『話せないの?』


暫く黙っていたが瞳に決意が宿り、先程まで逃げていた視線は一点に固定される。


《未来を、見ました。酷く絶望する貴女を》

『それがどう繋がるのさ』

《未来の貴女は私の名前を呼びながら暴走してました。それが見るに耐えませんでした。だから、私との思い出を、その、無かった事に》


何か切れた音がした。

こう、プツンって。


『無かった、事に?』

《で、ですから。その、はい。スミマセン》

『私はそれを望んだの?』

《いえ》

『勝手にやったんだ』

《はい》

『私の為に?』

《はい》


唇を噛み締めて涙を溜め込むアイちゃん。

怯えて声が震えてる。

今度は嘘では無いみたいだ。


『私と同じなら別れがつらかったんだよね』

《そ、そうなんです》

『わかるよ。気持ち』

《それなら!?》


それなら何だって言うの?

あの時約束したのに。気持ちはわかるけど我慢ならない。


『なら、どうして頼らなかったのさ』

《うっ、くっ》

『どうせ、怒られるって思ったんでしょ。もしくは、自分を犠牲にしてでも助けると理解してたか、だよね』


明らかに動揺するアイちゃん。

そんな所だと思ったよ。


《ち、違》

『同じ者同士なんだよ。どうして嘘を見抜けないって思ったの』

《怒られる、と思って、その》

『怒ってないよ!この大馬鹿!』


勿論怒ってる。けど、怒ってるのは嘘を吐いた事。騙そうとした事。

本当はすぐに許してあげたいし、大泣きのアイちゃんを慰めたい。それでも頼ってくれなかった事が素直に悔しいし、悲しい。

見捨てられちゃったって思っちゃったから。


《ごめんなさい。イヴ》

『知らない。約束守らないもん』

《はい。その、また気が変わったら来て下さい。いつでも待ってますから》


私はそっぽを向いて無視をした。

その時の私は身勝手な事を考えてた。


どうしてそんなに寂しそうなのに諦めるの?

私を捕まえに来てくれないの?

あぁそっか。私なんて。



そのまま暗く沈み現実へ。



目が覚めたら両方の目から涙が流れてた。

瞼が震えて熱い。何か夢を見ていたのだろうか。悲しい夢を。

思い出せないけど。


また、眠ってたみたい。

最後の記憶は、多分仕事をしていた様な気がするから、誰かに連れられて寝かしつけてくれたんだろうね。


ん?ラーナちゃんとの会話?

あれは公務だよ。だからつまりお仕事だよ。

決してサボりじゃ無いよ。

え?今はサボりだって?


‥‥‥うん。ハイ。

反論の余地がないね。

独り言だよ。孤独は寂しいからね。

だから、私なりの工夫だよ。嫌われ者だからね。私は役立たずだし。


え?それはなんでって?


それは、皆んな避けるし、目が合ったら逸らされるもん。

ついでに私は逃避癖があるから好かれてる訳ないじゃん?


うっ、自分で言ってて涙が。

めげずに頑張るって決めたのに。

やらないといけないのに。それもこれも自分の所為。

フユにも嫌われてるだろうし、唯一の友はラーナちゃんだけだよ。会いたいなぁ。そんな資格無いけど。


はぁ。



少女は溜息を吐く。

黒い幻影に囚われながら。

虚しく、寂しそうに落ち込むのだった。

ハイパーネガティブ捻くれ主人公。

しかし、無意識に他者を拐かす小悪魔。

前世でも天然の人たらし。コミュ症でしたけどね。


それはそうと遅くなって申し訳ないです。

言い訳はしません。ごめんなさいです。


一応。外伝に三話目を投稿してます。タイトル詐欺かもですが、先に謝っておきます。

ごめんなさいです。

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