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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十章 再臨
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二百三十一話 【奪う】以外の方法

「‥‥‥だと思うのですよ」

「うん」


少女達2名が床に座って会話をしていた。

金の巫女は笑顔で語らい、それに相槌を打つ少女。

相槌を打つとは言ったが頭がフラフラしている。さらに言えば、先程から返事は「うん」としか答えていない。



ぽふっ


気付けば少女が巫女の胸に倒れ込み、漸く少女の異変を察知した金の巫女。


「イヴ様?」

「すや」

「寝てますか?」

「‥‥‥」


金の巫女が延々と話し続けていたせいか、少女は眠ってしまった。

しかし、巫女がこの部屋に入室して1時間も経過していない。それ程長話をした訳ではない。

その事を不思議に思っていると扉が開いて誰かが入って来た。


それは全身真っ白のドレスを着こなす乙女。

その姿は透き通る様な綺麗さだが肌の色は見えておらず、如何にも神々しいと言わしめる振る舞いだった。


純白の乙女を見て、思わず緊張してしまう金の巫女。

巫女を見つめながら話し始める乙女。


「眠ってしまったんだね」

「はい。疲れているのですかね?」

「あー、うん、まあそうね」


いつも意見をスパスパと言い切る乙女が珍しく煮え切らない返事。

その事に疑問を抱く巫女。



あれ?

白龍様が珍しいです。

いつもお父様やお母様には躊躇う事無く話されているのに。

悩み。とかでしょうか?


私は考えました。

するとフユ様はそれに答えてくれました。



「違う違う。あ、違わないかも。話すべきかどうか」


何の事でしょうか。

ひょっとして、イヴ様の事?


「そうだね。あの子の秘密」

「秘密ですか!?」


イヴ様の秘密。

思わず声が大きくなってしまいました。

とても気になります。


「うーん。どう言ったら良いかな」


とても難しそうな表情です。

フユ様ほどの方が迷う様な事が。

聞いては良くないのでしょうか?


「あの、難しいのであれば無理にとは」


なんだか聞いたら取り返しがつかない気がしますし、良くない事なのかも。

聞いて後悔するくらいなら聞かない方がマシかもしれません。悪い事だと聞くのは怖いですから。

黒龍様であるイヴ様の話というのは気になりますけど。


「とは言え話した方が良い気がするし、とは言えなあー、悩むぅ」


グギギと聴こえそうな表情。

やはりそれ程悩むと言う事は危険な事!?


「話さなかったら取られるし、それを邪魔したら多分‥‥‥はあ」


凄く暗い表情です。

イヴ様絡みと言う事は国にも影響が出る事なのかもしれないです。国に関わる大事。

聞かないとならないですよね。王族ですもの。


「フユ様!いえ、白龍様!お話し下さい。何なりと受け止めるつもりです!」


そうです。逃げも隠れもしません。

王女としての務めを果たさねばなりませんから。それに、イヴ様の事なら尚更です。


「あ、ああ。いや、そう言う話では無いけどね」

「は、はあ?」

「はあ。嫌味なしにそれだもんなあ。私ってばホント」

「あのー?」

「はあ。‥‥‥あの子の事なんだけど」


フユ様の表情が変わりました。

真剣そのもの。大切な事なのでしょうね。

しっかりと聞かなければなりません。


「あの子。今魂が半分しか無いんだ」

「半分?」


魂。

その人の生命力とも言える物。

それが、半分?


「そう。黒龍は二人いるんだけど」

「二人!?」


ど、どういう事でしょうか。

あ、イヴ様の父君とイヴ様の事でしょうか。

確か先代様はイヴェトラ様とお名前を聞いた事がある様な。


「あー違う違う。双子なの」

「双子!?」


え!?どういうことですか??

イヴ様ともう一人。つまり黒龍様が二人。

あれ?先代様も含めれば三人?あれ??


「ちょっと驚き過ぎ。落ち着いて」

「はわわ」

「取り敢えず深呼吸しよ?」

「は、はい。スーハスーハー」


しっかり息を吸って呼吸を落ち着けます。

でもやっぱり意味がちょっと。いえ、全く理解不能です。


「イヴは双子の妹で、もう一人を助ける為に魂を分けたの」


成る程。それで半分。

ですが、魂が半分になったら良くないのでは?


「そうだよ。だから今弱ってるの」

「そうだったんですか。もしや、眠ってしまったのも?」

「当たり」

「ああ。それは大変な事です」


秘密を知ってしまった。

弱ってしまっているのでしたら来ない方が良いのでしょうか?

無理。させてしまったかも知れませんし。


「それでなんだけどさ、この子に会いに来てくれる?その、定期的に」

「え!?」


来ても良いのですか?

でも、迷惑ではないでしょうか。

勿論いつでも訪ねたいですけど。


「弱った魂には会話が大事だからさ。その、この子に刺激を与えてあげて欲しいんだよね」

「そういう事なら」


イヴ様の為になるなら幾らでも構いません。

どんな時でも会いに行きます。

例え、敵となろうとも。


「でも、一つだけ」


フユ様がこちらを見つめながら、私に指を差して不敵な笑みになりました。

それはどこか幼く映り、宣戦布告の様な何かを発します。


「絶対に負けないから!」


何の事かはわかりませんでした。

恐らくはどちらがイヴ様を大切に想っているかの勝負ですよね。

白龍様からの宣戦布告。本来であれば頭を垂れなければなりません。

ですが、如何に相手が白龍様であっても逃げる事は出来ません。勿論負けるつもりも。いえ、負けたくありませんから。


「フユ様。私も何があろうとも負けません」


互いの気持ちを伝え合い笑顔で応じる。



一人の少女を巡る戦い。


血で血を洗う戦争。とは行かないが、お互いの譲れぬ物を賭けて戦う。

少女の知らない処で生まれた戦争。

その戦争は、大切な物の為だけのただただ優しい勝負となるのだった。

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