二十二話 別れ
吹っ飛んだ少女は木に吸われる様に飛んで行く。木で受け身をとって地面へと着地して左手を見る。傷は無かったので胸を撫で下ろす。咄嗟に魔力を流し込み守れたが距離では100mほど飛んだのだろう。戦闘音は聞こえるが姿は木々に遮られいまいち見えない。
状況確認のためアイちゃんに話しかけると
『どうしよう?ナイフ折れちゃった』
《あのグリズリーも魔力を持っているみたいですね》
『私なら勝てる?』
《‥‥‥一応勝てる方法はあります》
『どうやって?』
《龍化です》
『でもそれってみんなにバレちゃうよ?』
《だからそうならない為にも鍛錬して欲しかったのです》
『他にないの?』
《ないです。なのでもうみんなとはお別れです》
『そんなの嫌だよ』
《でないと2人を助けられません》
『魔法なら』
《無理ですよ。色々試しても覚えられなかったのですから》
『でも』
《見捨てるか、助けた後去るかしかありません。龍は‥‥‥知られる訳にはいきません》
『本当にそれしかないの?』
《はい貴女のためです》
目からは涙を流し覚悟を決めた少女がそこにいた。色々な事を考えながら意識を集中する
そして宣言する
「龍化」
辺りは輝き周辺の木々をなぎ倒し黒龍は立つ。四足歩行で翼を持ち、体長の三分の一程の長さの尻尾があり全体的にはかなりシャープな漆黒の龍である。特に目立つのが血よりも赤く輝く綺麗な瞳である。
そして龍は走る。先程の戦場へ。龍化させてしまった者へ怒りをぶつけに、大切な人たちを守る為。
それからは一瞬だった。右前脚の一撃でグリズリーを引き伸ばし念の為力を込めて押し潰す。およそ生物であったということしかわからない状態にして龍は2人の人間を一瞥し、そして羽ばたき空へと舞う。後ろは振り向かずただまっすぐに前へ空へ飛んで行くのだった。
少女は羽ばたきながらポツリポツリと溢す
「お別れ言えなかったな」
「ただいまって言う約束守れなかったな」
「アイちゃんの話を聞いて鍛錬すればよかったな」
考えれば考えるほど心が締め付けられる。自然と涙は流れ、置き去りにする
《貴女には私がいます。いつでもずっと》
『うん、ごめんね文句ばっかりで』
《いいえ、私は貴女を愛していますから》
『うん私もアイちゃん大好きだよ』
2人の少女は旅に出る。これからも恐らく困難に見舞われ、苦境に立つこともあるだろうが2人なら大丈夫と信じて前に進む黒龍であった
取り敢えずここまでで一章的な感じです。
タイトルつけるなら【優しき出会いと別れ】と言ったところでしょうか?
元々トライとアルバスとはいずれ別れる事にしていましたのでこんな感じになってます。




