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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
十章 再臨
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二百二十八話 届かぬ心配

私は刻々と過ぎる時間に心を焼かれながら人を待つ。

久しぶりにラーナちゃんに会える期待感や、王様に叱られるであろう事への不安感のないまぜにソワソワとしていた。


やがて近付く複数の足音があり、軽快な足音や、定間隔に統一された足音。どこか慌てている様な、しかしそれを隠そうとする足音。

三種の音がそれぞれ鳴り、音の主人が誰かを無意識に予想し、私の心音もそれに続いて高鳴る。

ガチャリと扉は開き、予測していた3名がそこに居た。


「お久しぶりです。イヴ公爵様」


リアーナ王妃様は笑いながら入室し、その後に険しい表情の王様、満面の笑顔のラーナちゃんが続く。

当然王様は怒ってるみたいで、ラーナちゃんの笑顔も怖い。王妃様の微笑みも。

私は緊張してるけど、返事もしないのは流石に良くないので、挨拶を返す。


「は、はい。お久しぶりです」

「外は楽しかったですか?」

「え、あ、それは」



あーこれ、ブチギレてるよ。明らかに皮肉だよね。怒られるの確定だ。

こんな状況で「楽しかったです!」なんて言えないよ。

やばい、涙が。



「うっ、ぐす」

「んんっ。ゴホン」


王様が咳払いをしながらこちらを見て言葉を発する。

私は私で感情の制御がうまくいかない。


「イヴ公爵様」

「ひゃい」

「申し訳ない」

「んぇ?」


気付けば王様達は頭を下げていた。

何が何だかわからない私。

何故謝られているのか。

むしろ私が謝罪をしなければならないのに。


「多大な負担を与えてしまっていましたから」

「責任を押し付けてばかりでしたね」

「イヴ様。どうか国を捨てないで下さい」


口々に私に告げる。



国?

捨てる?

ドユコト?



よくわかんないから訊ねる。


「あの?」

「どうかお考えをお聞かせ願いたいのです」



考えって言われても。

ただ、逃げたかったから。

足手まといが嫌だった。必要とされてない気がして。

それで、裏切ってしまったから、殺されるって思った。

それだけの理由。怖かっただけ。



「怖くて」

「ああ、やはり」

「逃げちゃった。でも、私が悪いの」


私がそう言ったら、2人は苦虫を噛み潰したような顔。

ラーナちゃんは悲しむ様な。


「よく分かりました。また、元気になりましたら是非、王家へお訪ね下さい」

「それって」

「イヴ様。ありがとうございました」


深々と頭を下げる王様夫婦。



あぁ、そう言う事。

仕方ないよね。そうなってしまったのは。

自分が選んだ道だもん。



私とオルトワさんは黙って部屋を出る。

これ以上は何も言えなかったから。


そして、2人の去った部屋で深く溜息を吐く3人。

その表情には絶望を浮かべていた。


「これから、どうすべきか」

「貴族の皆々に何と話すかが問題です」

「ぐぬ。我らの首で説得されれば良いが」

「イヴ様が国を出るのでしょうか?」

「当然フユ様も。そうなれば、黒龍様の加護の無い国は他国からも狙われるでしょうね」

「「「はあ」」」


暗い部屋で最悪の結末を話し続ける。

しかし、その結果を避ける方法は一切出ずに度々溜息は繰り返される。少女の存ぜぬ所で。






城を出てぽつぽつと溢す少女。

落ち込んでいて、力無さそうにうなだれていた。


「怒られる事すらなかった」


怒られればまだマシだった。

そう少女は思いながら暗く沈んでいく。


「逃げなければよかった」


後悔を噛み締めながら歩く。


「オルトワさん。どうしよう。これから」

「そう‥‥‥ですね。少し悩ましいですが、捜索願を取り消すのを忘れてましたね」

「あぁ、うん。でも、頼める立場では無いよ」

「そうですか。ところで、溜まっていた仕事はどうしますか?」

「仕事?」

「はい。もしくはお疲れでしょうから、ゆっくりと休むのも有りですよ」



仕事がある。

それなら、それをやり切ってからもう一度仕事を貰いに行ったらどうだろう。

せめてもののやる気アピールをすれば許して貰えるかも。

そうだよ。もうそれしか無い。



「やる!帰ったら仕事する」

「え!?急にやる気が、どうしたんですか?」

「休んでる場合じゃないよ!」

「ええ??」



明らかにオルトワさんは困惑してた。

でも、火のついた私には関係無い。

やるんだ。逃げるなんてあり得ない!



少女は燃えていた。

さっきまで落ち込んでいたのは何処へやら。

すれ違いの始まりだった。

少女は早速執務室へと篭る。

主人がこう言ってはどうしようもないので、メイド長は食事の準備や、いつでもお風呂に入れる様に準備を進める。

メイド長もメイド長で、なんだかんだで楽しそうに映る。微かに笑っているのだから。


そして、暫くしてから乙女が帰って来た。

寝室を覗きに行ったがそこに少女は居らず、偶々通り掛かったメイド長に話を聞く事にした。


「オルトワさん。イヴは?」

「おや?フユお嬢様。その、何と言いますか、仕事してます」


申し訳なさそうなメイド長。

眉間に皺がよる乙女。勿論声に出る。


「は?」

「イヴ様が、自らそう言いまして」

「‥‥‥そう」


目が座る乙女。

乙女は次の瞬間には消えてしまっていた。

思わず唾を飲んで呆気に取られるメイド長。

しかし、慌てて仕事を再開。と思いきや向かうのは執務室。


そこには疲れ果てて寝てしまっていた少女。

乙女の怒りは何処へ向かったのか。

メイド長は、その疑問を無理矢理記憶の片隅に押し込みながら仕事を再開するのだった。

主観は基本的に少女になります。

ですが、補足のためにコロコロ変わるかも。

‥‥構成が下手で申し訳ない。


まあ、のんびり気楽に展開できたらなあと思いながら頑張ります。

m(*_ _)m

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