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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
九章 追い、追われる者
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二百二十話 奇跡の準備②

乙女はギルドに依頼を出して次にやるべき事に取り掛かる。

それは、


「働かないと」


言葉通り仕事探し中だ。

何故かと言えば、今現在は文無し。さらに言うと、乙女の出した依頼への報酬は足りていないので、Cランクの依頼を物色する。求める条件は討伐であり、報酬額の高そうな物を。つまりは稼ぎが良さそうで時間のかからなさそうな物。

基本的には危険度が高ければ報酬は良いので、そういう物を探せば自ずと希望通りの物が見つかる筈だ。


そして、視線を走らせれば丁度良い物があった。

近くの遺跡に多種の魔物が棲息しており、その遺跡を調査する為の護衛を頼むという内容だ。報酬は金貨3枚。

だがしかし、募集条件は最低でも4人以上のパーティーだという事。

この依頼はとても難しいと予想されているが、その理由は魔物との連戦になる恐れがあるからであり、乙女の様に仲間がいないからと言った理由の者は存在しない。そもそもがパーティーを組まない人が稀有だからだと言えるから。


「チッ」


乙女はこの依頼の報酬額を見て思わず飛び付きそうになったが、条件を見て舌打ちをした。

側から見れば、美しい貴族の令嬢様が依頼を眺める事は変で、しかも何やら急に舌打ちをするものだから、なんとも微妙な空気が流れている。

この乙女がギルドに入った時から続いている事なのだが、誰も彼もが乙女の行動を逐一観察している。


乙女はというと、そんな事も知らずに(正確には見られている事は理解しているが無視)稼ぎの良さそうな依頼を探す。

しかし、全員が黙って乙女を眺めていたのでは無く、ある人達が乙女に話し掛けた。


「ちょっと良いですか?」


話し掛けられれば当然応じる乙女。

しかし、切羽詰まっている乙女の雰囲気はとても剣呑な空気を纏っていた。


「なに?」


声と共に振り返ればそこに立っていた者達には見覚えがあった。

それは記憶を覗いた時。親友のお世話になった人達。かの赤銅のパーティーの面々だった。


「あ、邪魔してごめんなさい」

「リリア?本当に誘うの?」

「いや、でも、多分」

「魔力量も多い。多すぎて目眩を感じる程」

「ルルもこう言ってるし」



なんだか知らないが3人組がひそひそと会話をしていた。

けど、無駄なんだよね。読めるから。

ふむふむ。端的に言えばスカウトか。このルルって人が私の魔力量を見て提案した。それでリーダーのリリアさんが私に話し掛けて来たと。

アルカっていう人は反対か。得体の知れない、と言うか見るからに貴族には近寄りたくないってねえ。

いや、違うんだけど。私貴族違う。生まれも育ちも平民だよ。ほんとだよ。



乙女は自己催眠を施していた。

そんな折、覚悟を決めたのか3人組は乙女へと提案をする。

そしてその提案は周囲の人々から見れば無謀もいいとこなのだが、その提案とは。


「良かったら私達の仲間になりませんか!」


リリアの声が届き、その時乙女は思わず心を読む。

乙女は無意識の癖で、誰かから話しかけられた時に心を読もうとする傾向があった。

そして、この提案に対しての裏が無いかを探った。



どうせ断られる。

けど、強そうだし。

でも、なんか、寂しそうだな。



乙女は人を疑り、人を恐れてしまう。

そんな癖があった。


乙女の思う他人とは、ごく一部を除いて悪だと認識していた。

それなのに、今回の人達が妙な親切心を持って誘ってくるとは思ってもいなかった。

一応、本音の中には利益を求めようとする心も透けていた。だが、それは別に変ではない。

むしろ変なのは、悪感情が一切無かった事。

ただ、純粋に仲間が欲しいらしいのだ。



親友の記憶の中にあるこの人達のイメージはとても良い人達だった。でもそれは、あの子の目線から見たもの。悪を知らないあの子から見れば、他人は全て善人に映る。

だからこそ私は、どうせあの子の目が間違ってたんだろうと思っていた。

私は心が読めるから、真実を見てやろうと思ってしまった。



あの子は正しかった。



私の様に心が読めるとか関係無い。

あの子には必要無いんだ。そうだよ。

私は読むだけ。でも、あの子は変えてしまう。

それ程の影響力があって、変えられたとしても不快感が無い。気付く事も無いし、暖かく包まれてるみたいで、優しくなれるんだ。

あの子の側に居れば浄化される。この私の悪い心も。

早く戻りたいな。ううん。早く戻らないと。



「ど、どうですか?」



リリアの二言目。

それによって、乙女は現実へと戻って来た。



別にどっちでも良い。

あの依頼を受注出来るというメリットがあると言えば、まあそう。

もう一つは、あの子が恩返しを願ってた事。

優先度が私とアイちゃんに集まってるだけで、お世話になった人に会いたいらしい。

それならまあ、仕方無いか。ちょっとだけならね。短い間だけどね。



「良いよ。手伝って欲しい事があるから、お願い聞いてくれるなら」


私は提案した。

相手の返事も知ってる。飲んでくれるってね。

だって読めるんだもん。


「よろしくお願いします!!」


笑顔で私の手を取るリリアさん。

ああ、良い人と出会ったんだね。



乙女はある人の幸せを祝った。

少しだけ悲しそうに。

空を飛べる乙女ですが、流石に街中で飛ぶと面倒事になりますね。

竜聖国内なら問題無いのですが。


さて、次の章からどうしたものか。

章分けが少々面倒なのですよね。作者の都合の良い脱線とか出来ませんし。

無くしていいですよね?

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