二十一話 男達の戦い
2人はBランクの魔物を相手にかなり善戦している。だがやはり魔物は強く無傷とはいかない。アルバスの盾は傷つき辛うじて肉体への怪我はないが、トライは擦り傷がある。それでもCランク2人ならよく戦えている方だろう。だが相手にダメージを与えられない為精神的疲労は徐々に蓄積し、紙一重の攻防は終わる気配がない。
突如森が揺れ地震かどうか間違えかける様な振動を感じ、とっさに2人は距離を取る。そしてズシンズシンと言う足音のようなものが響き渡る。震源に向かってグリズリーは意識を向けているので2人もそちらを振り向くと、そこには大きな竜が存在していた。それは間違いなく誰が見ても竜だと答える漆黒の巨獣がそこに居た。
そしてその竜は何かの怒りなのかグリズリーを斜めから押し潰し、そして完全に止めを刺している。それに満足したのかこちらを少し見てそのままどこかへと飛んで行く。2人は目が合った気がした。その瞬間に何故か少女を思い浮かべる。確かにその瞳には悲しみの感情が浮かんでいる様に見えたのだ。
竜が去りその状態に呆然と立ち尽くす2人の男達はどちらともなく話す。
「嬢ちゃんだったのかなアレ」
「そう思うか?」
「ああ」
「念の為探そう」
「おう」
そして当然少女は見つからず、木々が倒れた広場の様なところを発見したがそこにもいなかった。2人は無言で村へと帰ったのだった
そして少女のことを2人は悩んだが死んだ事として報告した。この事は2人だけの秘密となったのだが1つ大きな問題があった。少女が死んだと聞いたフレアはトライに怒って遂に喋ってしまう。事の顚末を聞いて一応納得するのだが、それまではこの夫婦の仲はかなりの修羅場となる。だが結局はそこから広まる事はなく、時折3人が彼女の話でお酒を飲む日が生まれたのだがそれはまた別の話である