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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
九章 追い、追われる者
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二百十三話 仲介者

村長さんから許可を貰い、ミュエラと共に再度森の中へ。

蜘蛛さんの姿は目立つとは言え、隠れるのが得意みたいで、気配は感じるのに見当たらない。


「蜘蛛さーん」


私が呼び掛ければ、ガサッと音を立てて降ってきた。目の前に。


「わっ!ビックリした」


どうやら木々の葉っぱに紛れていたらしい。

当然ながら大きい身体なので隠れ切る事は不可能だけど、上の方には目が行かないので、そこを利用して上手く隠れていたのだ。

偶々目が行っても、白い模様かな?で終わってしまい見逃すのだろう。

現に私は視界に捉えた筈なのに見逃した。


「こんにちわ。蜘蛛さん」

「急に降ってくるのはやめなさいよ。警戒してしまうでしょ」


文句を言うミュエラ。

多分真上に居ただけなので驚かすつもりは無かったと思うけど。


【モウシワケナイ。ツイ、キガハヤッテシマイ】


うん。謝ってるし、悪意はないらしい。

早く会いたかった。って事だよね?

気が逸ったって言ってるから。自意識過剰かな?

まあいいや。


それよりもこの蜘蛛さんは、ミュエラの言葉を理解している気がする。

確か魔物は人間の言葉を理解出来ないのでは?

蜘蛛さんがそんな感じの事を言ってた気がする。‥‥‥違ったかな?

確認しとこう。重要な事だもんね?


『魔物って人語を理解出来るの?』

【イイエ。基本不可能デス。シカシ、幾ツカノホウホウデ意思疎通ガ可能デス】

『ん?聞いても良い?』

【当然デス。マズ、全テヲ解スル龍言語。コレハ貴女サマノ言語デス】


魔物の王呼びから、貴女になった。

それは良いのだけど、一つ驚いた事がある。


『ん!?私をどうして女だと思ったの?』

【チ、チガイマシタカ!?】

『合ってるけど』

【ホッ】

『逸れちゃったね。ごめん。龍言語とは?』

【イエイエ、此方コソ。龍言語トハ、イチブノ方ノミガ使用シマス。貴女ノ意思ヲ、他者ニ可能ナ限リ理解シヤスクシマス。逆ニ貴女ハスベテノ意思ヲ理解スルハズデス】

『成る程。私の言葉は理解し易いって事か』

【ソノトオリデス。マモノハ賢クナルニツレ、理解力ガ向上シ、最後ハ人語ヲ話スマデニ至リマス】

『あれ?ミュエラの言葉は理解してるよね?』

【ハイ】

『やっぱり。なのに話さないの?』

【言葉ヲ話セバ、人間ニハオソレラレ、魔物カラハネラワレマス。ソレニ、声帯ガアリマセヌユエ】

『そ、そっか』


あからさまな魔物の姿だと人語を話すと危ないらしい。

同族からは迫害されるとか?

人間は仲良くなれないとも暗に言ってるよね。これ。


分かってるよ。


まあ、私は人間そっくりだから良いけど、蜘蛛さんは苦労して来たんだと思う。

隠れて生きて、気付かれない様に吸血を行う。

でも、それも今日で終わり。

村長さんが許可をくれたから大丈夫。

この蜘蛛さんは餓死が無くなり、村人さん達と仲良くやっていける筈だ。


「蜘蛛さん。ついて来てくれる?」

【ナンデショウカ?】

「村に行こう。きっとこれからは隠れなくても良いよ。約束する」


蜘蛛さんが頷く。

勿論蜘蛛さんの言葉はミュエラに届いていない。だけど、返事を見て蜘蛛さんの賢さに気付いた。


「まさか、私達の言葉を理解してるの?」


ミュエラが質問をした。

私達は同時に答える。


「そうみたいだね」

【ハイ。コエハダセマセンガ】

「成る程ね。これなら間違っても村人を襲う事は無いわね」

「うん」

【ニンゲンヲ、殺シテモ血ヲ吸イ切レマセンシ、ウラマレルノハ怖イデスカラ。ニゲラレテモ困リマスシ】

「ルビーはわかってたの?」

「一応。目を治してあげた時、感謝してる様に見えたから」


ここでは嘘を吐いておく。

蜘蛛さんの言葉を全て理解しているけど、それを馬鹿正直に説明したら疑われると思ったから。

何となく、直感がそう言ってる。

そもそも完全に嘘って訳では無いし、蜘蛛さんが言葉を理解していると知って貰えば安心だ。

どちらにせよこれは隠し通せないと思うし。



雑談をしながら蜘蛛さんを引き連れ、村へと戻ると、村人さん達は驚くものの、急に戦闘開始にはならない。

もし、私とミュエラがいなければ、蜘蛛さんは、難無く村人さん達を制圧するだろう。

この蜘蛛さんは強くは無いけど、糸の能力が非常に厄介だ。村人では手も足も出ない。


敵だったらね。


でも今は違う。

村長さんが説明してくれていたのも効いてるとは思う。

その村長さんも、ミュエラを信用しての事だし。


こうして、私達は蜘蛛さんを見せびらかすと、村長さんが話す。


「ふむ。こちらが蜘蛛さんですか」

「はい」

「そうよ。言葉を理解出来るみたいよ」

【獣人デスカ。大昔ニ血ヲスッタラ芳醇ナアジダッタナア】


‥‥‥蜘蛛さん。何も言わないよ。私は。


「成る程。賢いのですね」

「それで、どうですか?」


私は不安を抱えながら問う。


「村の異変を解決して頂き助かりました。ルビー君は凄いですね」


唐突に褒められて照れてしまう。

しかし、ミュエラは除け者にされて焦って大声を出した。


「私は!?」

「おっと、リュミトリアさんもですね」


お茶目な笑い顔で笑うキュイさん。

その顔はとても朗らかで、成る程、村長さんだと思った。

そして、その笑顔で蜘蛛さんに近付き手を差し出した。


「宜しくお願いします。蜘蛛さん」

【コチラコソ】


二人?は手を取り合う。

二人?の笑顔?で。

蜘蛛さんは表情がありません。


‥‥‥似た者同士。かもしれませんね?

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