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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
九章 追い、追われる者
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二百十話 歩み寄り

気付いたら、なんか固まってた。魔物もミュエラも。私を見詰めたまま。

うん。気付いた。私は偽物だと思ってたけど、違ったんだ。‥‥‥だよね?

私は全てを受け取っちゃったんだ。今はその結果だ。

ちょっと色々と、記憶の整理をしたい。なんだけど、魔物が目の前にいるから、それは後かな。


空気?を読んでくれたのか、白蜘蛛は私達を襲わなかった。隙だらけで、格好の的だったのに。

私は何故かその事実に対して、お礼を言ってしまった。なんとなく感謝しないといけないと思ったから。


「待っててくれてありがとう?蜘蛛さん」


どうせ返事なんて返さない。返しようが無いとおもっていたが、その時の白蜘蛛は、まるでお辞儀をしているかの様に見えた。

確かに頭を下げた様にも見えたし、こちらを見つめる白蜘蛛さんの目には、戦意が写っている様には見えない気もする。

威嚇らしき物を始めたが、それが挑発とは思えず、何とかして意思の疎通を図ろうとしてるみたいだ。


「え?何?」


勿論理解出来る訳では無い。問うても意味は無い。

白蜘蛛さんはジーっとこちらを見る。

そして前脚をこちらで指し、その後自分を指す。

その行動がいかにも感情を示そうとしている風に映る。

いや?

手招きをして、挑発してる様にも見えなくは無いかもだけど。

かかってこいやおらあ。的な?


「えっと?」


何か伝えたい事があるのかもしれない。

そうだとしたら、なんとかして相手の考えを読まないと。

そう、私が思った瞬間。

白蜘蛛さんは自らの前脚で、恐らく目を突き刺した。若干遠目だったから、反応は遅れたけど、多分間違い無い。

当然白蜘蛛さんの血が流れるし、片目が潰れてしまった。


「な、何してるの!?」


思わず動揺してしまい、慌てて走り寄った。

私は大変な怪我だと思い、その瞬間に治癒を試みようと考えていた。

近寄ったのも、治さなきゃと思ったから。

危険など考える事を忘れてしまった。ここは私の悪い癖かもしれないし、後々反省する所だ。

まあこの白蜘蛛さんは、私を襲うつもりは無くて、私の魔法を受け入れるんだけどね。


「馬鹿!どういうつもりなの!」


私はプンスカ怒って、怒りながらも治療を開始した。

白蜘蛛さんは、私の言葉に逐一謝っていた。何となくそう思った。そんな感じの反応。


「治せるから良いけど、絶対とは限らないんだからね!?」


私は文句を言いながらも、蒼色の魔法で白蜘蛛さんの右目を治した。

今回の治療は上手く行ったけど、毎回確実に、全部が治るとは限らないと思っている。

だからこそ怒った。


「全くもう。急に右目を突き刺してさあ、危ないよ」


怒っていたが、すぐさま怒りは消えた。

私は確か怒りっぽかった気がするが、何故か今回は、一瞬で怒りが解けて消えていった。


「ん?右、目?」


声に出して気が付いた。

もしかして。

そう思い、私の右眼に魔力を込める。

そして、白蜘蛛さんを見た。


【ハジメマシテ。魔物ノ王ヨ】


白蜘蛛さんのすぐ近くに言葉が浮かんでいる。

余りの衝撃に私の思考は固まった。


【ナントカシテ、会話ヲスル方法ヲカンガエマシタガ、コレシカナイトオモイ。目ノ治療感謝シマス】


微妙に読み難い。

けど、まさか本当に白蜘蛛さんの言葉なのだろうか?


「あの?」

【ハイ】

「私の言葉は理解出来てるの?」

【当然デス。シカシ、ワタシハシャベレマセンノデ】

「他の魔物は、蜘蛛さんの様に言葉が理解出来るの?」

【ホボ不可能デス。ワタシハ偶然デス】

「そうなんだ」

【アナタサマカラ念話ヲココロミレバ可能カモ。シカシ、ホトンドハ念話ヲウケトレズ、ソモソモ知能ガナイデス】


白蜘蛛さんが色々教えてくれた。

私と魔物が会話を出来る事は初めて知った。

これは忘れていたのでは無く、初耳なのだ。

思い出した事の整理をしたいが、今はそれどころじゃ無くて、頭がパンクしそうだ。


私は悩んだ。物凄く。

すると、ミュエラが飛び込んで来た。言葉を発しながら。


「この、魔物。ルビーから離れなさい!」


私と白蜘蛛さんの間に割って入るミュエラ。

白蜘蛛さんを悪い魔物だと勘違いしている気がする。

なので私は、その誤解を解こうとした。


「ミュエラ。大丈夫だよ。襲われてないし」

「アンタを誘き寄せて、油断を誘っているのよ!」

「いや、それは」


流石に無いでしょ。

もう既に私は油断してるんだし。

心配してくれるのは嬉しいけど。


「襲うなら私にしなさい!」


白蜘蛛さんに挑発するミュエラ。

いやまあ。これは挑発なのだろうか?


【エルフ。良質ナ魔力。オイシソウ。ジュルリ】

「だ、駄目だよ!?」


白蜘蛛さんはエルフの血が好きらしい。


【ハ!失礼シマシタ。ツイ】


全く油断も隙もない。

早くミュエラの誤解を解かないと。

このままだと、大変な事になりかねない。


「大丈夫だよ」

「アンタは警戒心が無さすぎるのよ!」

「いや、そうかもしれないけど」

「それとも何か、信用出来る理由でもあるの?」


よし。全く話を聞かない訳では無い。

それならなんとか方法がある筈だ。

うーん。‥‥‥よし。


私は閃いた。

そして、白蜘蛛さんに言い放つ。

我ながら素晴らしい方法だと思った。その方法とは。


「お手!」



空気が沈黙した。しかし、白蜘蛛さんは優しかった。スッと私の手のひらに、前脚を置いてくれた。

お陰様でミュエラは納得してくれたと思う。

私達を疑う様に見比べてたけどね。

まあその、疑うっていうのも、あり得ないって感じの反応だった。

ちょっと前までの敵を見る目じゃ無くて良かった。私はその目が嫌いだから。

乙女の読心の下位互換ですかね。アレは対人戦用です。

乙女の力は魔物の心は読めないので、完全にそうとは言い切れませんけどね。


とは言ったものの、魔物は殆ど知性を有していないので、いわば死にスキルという奴ですが。

そもそもが知性を持っていてかつ、相手に会話をするつもりが無ければ役立たずです。

ほぼほぼ役に立ちません。残念な事に。

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