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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
九章 追い、追われる者
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二百八話 長閑な

近隣の森へと赴き、周辺の探索を開始した。



今回村長さんから依頼された仕事は、緊急を要するものでは無いが、懸念すべき不安程度だと聞いた。

聞くところによると、森の魔物に襲われた村人もいるが、どうにも殺された訳で無く、気が付いたら森の中で眠ってしまっていたとかなんとか。


その村人さんは、確かに襲われた事は自覚しているのに、殺されなかったからまあ良いか?と思ったらしい。

一応不安は感じたものの、特に報告をしなかった。この人が第一被害者。

それから何人かが襲われたと報告して、幾人からの情報で、漸く明るみになったという事だ。

知れ渡る前のそれは単なる噂話として。

「こんな事があるんだよー」みたいな。

もうその時点で、私としては意味がわからなかった。


「いや、報告しようよ」


思わずツッコんでた。


「まあ、そうなんですよねえ」


キュイさんが苦笑いしているのを思い出した。そして続ける言葉に更に呆れてしまう。


「殺される事無く解放してくれるのなら良いかと思いまして」

「ええー」

「アンタ達呑気ね」

「襲われた皆さんも、手が少し腫れてる程度でしたし」


いやいやいや。襲われたのならどうにかしないと。腫れてるなら被害は一応あるんだし。

結局どうしたいのかわからない。

つまり、討伐して欲しいのか。

それとも、放置で良いのか。

ミュエラも同じ事を思ったのか、私の代わりに聞いてくれた。


「で?どうすんのよ」

「はい。判断はお任せします。報告だけ頂ければ」

「うわあ」


適当だ。思わず声が漏れちゃったよ。

私達はどうしたいのかを聞いたのに。


「し、仕方無いではありませんか!?魔物については僕も疎いのですよ。それに、その、御二方は戦えるのですか?」


若干疑わしげに見つめるキュイさん。まあ、私たちが戦える様には見えないよね。小さいし。

って、誰がチビか!?

まだ伸びるんだ。‥‥‥伸びるよね?不安。

私は一人でボケとツッコミを担当した。

勿論誰も笑わないよ。私にとって面白い訳でも無いし、誰も聞いていないからね。

おっと。それはそうとして、キュイさんの質問に答えないと。


「当然よ!」


自信満々に言い切るミュエラ。

私はと言うと、あまり自信は無い。


「一応?」


私はそう言った。

キュイさんは安堵した雰囲気だ。


「成る程。エルフは魔法が得意と聞きます。では、よろしくお願いします」

「任せなさい!」


すごい笑顔でドンと胸を叩く音。柔らかい音は無し。

それは別にどうでも良いんだけど、キュイさんは私にはあまり期待していない感じ。

いや、良いんだよ?

ただ、それはそれでなんか釈然としないよね。

うん。過度な期待は嫌だよ?でも、うーん。

なんと説明したら良いのか。難しい。

まあどうせ?私は弱そうだし。



なんとも言えない感情の中。

生い茂る草をかき分け、魔物を探している。

草木が邪魔で、結構歩きづらい為にテンション低めの私。

逆に何故かミュエラは気分良さそう。心なしか鼻歌も聞こえる。


「あぁ、森って良いわね!」

「は?」

「ルビーもそう思うでしょ?」

「‥‥‥うん?」

「やっぱりそうよね!?」


私は首を傾げたつもりだ。なんなら、この人何言ってるの?状態。なのに肯定したみたいになってるし。

うん。なんか会話が成立してない気がする。まあ良いや。なんか面倒臭いし。

今のミュエラは多分とんでもなく面倒臭い。

エルフは森が好きなんだね。初めて知ったよ。

と言うか、油断してたら、なーんて、そう思ったその時。


「にょわー!?」


なんか吊り上げられた。

油断してたからね。仕方無い。

紐?かな。足が上を向いて。あ、見えちゃいけないものが。


「ちょっと!?何よコレ!降ろしなさいよ!」


ジタバタと暴れるミュエラ。

あぁ、もう。隠そうともしないで。私が女じゃなかったらどうするつもりなんだろうか。

一応、忠告しとく?


「ミュエラ。あまり暴れたらはしたないよ」


私は遠回しに伝えた。


「は!?ちょっと!見ないでよ」

「いや、見えただけだし」


別に見ようとして見た訳じゃ無い。

偶々。そう、偶然だ。


「それよりも助けなさいよ!」

「あ、確かに」


うんうん。怒りながらも冷静なミュエラ。

恐らくこれは、魔物の攻撃だけど余裕そうだね。怒る暇があるみたいだし。

おっと、助けないとね。

さて、あの紐斬ろうか?


私は白い紐に狙いを定め、肉薄して断ち斬る。

本当は龍技の【突翼】でも良かったけど、ミュエラに当たったら怖いから、直接斬る事にした。これなら万が一にも間違いは起こらないからね。

そして、結果ミュエラは解放され地面へ。

勿論。顔から。


「ぐえ」

「あ、ごめん」


やってから気付いた。

それはそうなるよね、としか言いようが無い。実際には、斬った後に助ける事も出来たんだ。


「助けるならもう少し丁寧にやりなさいよ!」


怒られた。

いや、うん、まあ、その。

申し訳ないとは思ってるんだ。

それよりも。


「お出ましね?」

「みたい、だね」


のそりと近付く魔物の気配。私達はある方向を見つめた。

そして姿を現す魔物。


「ヒッ!?」


目にした瞬間。引き攣るミュエラの顔。

そこに現れたのは全長5メートル程のサイズの白い蜘蛛。とても森には似つかない色合い。

不気味な蜘蛛。それはとっても大きな蜘蛛だった。

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