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黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
九章 追い、追われる者
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二百三話 改なる旅

町へと帰って来て、早速宿へと戻った。ミュエラとは仲間を解散した。パーティーは即席のものだったので、今回限りの付き合いというやつだ。

元々約束をしたわけでは無かったから。


さて、宿に帰って来たのは良いが、借りていた部屋が残っていない可能性が高い。予約の延長をしていないので、普通に考えれば退去させられている筈だ。

荷物はほぼ無いから構わないけれど、帰る場所が無くなるみたいでかなり寂しい。これはかなり我儘な感想だけど。

荷物とかが売られている可能性もある為、私の部屋の有無は、一応確認しないといけない。

だから今、宿の受付さんに話し掛けると、


「延長で良かったんだね?」

「ほぇ?」

「荷物が残ってたからね。退去するなら居なかった分は請求しないけど、どうする?」


驚いた。残してくれてたんだ。

でも、すぐに出る予定だった。だから延長は断ろう。


「すみません。出ようと思ってました」

「そうかい。了解した」


私が居なかった分を請求しないと言ってくれた。だけども、私はそんなのを許せるはずが無い。


「今日の分までお金を払います。勿論居なかった昨日までを」


いくら住んで無かったとは言え、私が借りてた分を他人に貸し出せば儲けになってた筈だ。なのに、部屋を残しておいてくれた上にそこまで親切にされるのは申し訳ない。

結果的にこの宿を出る事になったが、お金を払わず出掛けた私が悪いので、お金は払うべきだと思う。


「いや。良いさ」

「ですが!」


向こうが遠慮して、こちらも遠慮(寧ろ強引)して、押し合う。

ただ、今回は私が退く予定は無い。

お金の入った小袋を出し、無理矢理にも金額を提示してもらう様に促した。

ここまですれば、相手も折れたのか溜息を吐きながら話し始める。


「ああ!もう。仕方無いね。鉄貨30枚だよ」


安いのは理解した。2週間以上居たのに、この金額は相当負けてくれている。

しかし、そこを指摘は出来ない。そこまでしてしまえば今度は逆に失礼になってしまう。

結局、相手に言いくるめられてしまう結果となった。

周りに他のお客さんもいる為、金額については有耶無耶にしながらお金を払う他無い。

だから仕方ないんだ。


「ではこれで」


お金を払い、少ない荷物を持って宿を後にした。

そして、これからはまた旅に出る。

どこかへ行くあても無い。帰るべき場所も。ただ、ここを離れなくてはならない。痕跡を断ち、追っ手を撒く必要がある。

場所を変えれば、自ずと人との関係は希薄になってゆく。そこに居た証も。

約束した再会も果たされる事無く、新たなる地へと足を運ぶ。何かを約束した覚えは無い。多分。


寂しい。

何度繰り返しても慣れないのに、私はこうするしか出来ない。

ミュエラは良い人だった。さようなら、優しいエルフさん。


私は涙が流れているのに気付き、鼻を啜って女々しく後ろを振り返った。

すると、そこには1人の女性が居た。


「何処へ行くの?」


まるで私の心を見透したかの様なタイミングで、そこに立つ金の風人。その表情は寂しそうな、怒っているような。

私はもう既に1人で出発すると決めつけていた。なので、動揺してしまうのは仕方ないよね。


「な、なんでここに?」

「アンタね。分かりやす過ぎるのよ」

「え?」

「大方、私に何も言わず旅に出る予定だったでしょう?」


ジトーとこちらを睨むミュエラ。

ああ、怒ってる。

なので私は、言い訳を述べた。


「ミュエラを危険に晒せないし、それにその、えーと」


私が悩んでいると、ミュエラはズカズカと近寄り、私の仮面を外した。

あまりの怒りの波動により、なす術もなく剥ぎ取られてしまった。そしてどうなるかと思えば、両手でほっぺを引っ張られた。

こう、みょいーんて。


「いひゃい」

「当然よ!お馬鹿!」

「みゅえらこわい」

「は!?ごめんなさい」


何故か慌てて謝るミュエラ。

怒られてる筈なのによくわからない。


「アンタ。1人が苦手でしょ?」

「どうして?」

「アンタの後ろ姿が物凄く寂しそうだったのよ」

「そうなの?」

「だから放っては置けないわ」

「でも」

「ええい!うるさい。行くったら行くの!分かった!?」

「あう」


随分と強引な同行希望。

勿論嬉しいに決まってる。だから黙って頷く。


「全くアンタは。頼る事を覚えなさい!」

「でも、迷惑掛かるよ」


私がミュエラを誘わなかった理由を言った。

多分。この一言は余計だった。

また、みょいーんだ。


「‥‥‥」


今度は無言。口では無く、目が語っているけど。

ミュエラは明らかに怒っているので、即座に謝った。


「ごめん」

「全くもう。そんなのいくらでもオッケーよ。どんとこい!」


すごいドヤ顔のミュエラ。

私は顔が見られるのが嫌で抱きついた。実はそれと同じくらい、ミュエラに抱き付きたかったのも理由ではある。

私は久しぶりに誰かに甘える事が出来、心が満たされていく様な気がした。

その感覚はどこか懐かしく思う。


「ミュエラ、ありがとう。これからもよろしくね」

「ええ。ルビー」


お礼を言った。

そして、改めて仲間として挨拶をする。初めての仲間に向かって。

タイトルは造語ですね。

ゴジデワナイヨ!


ぷにぷにのほっぺ。

魔力の身体である少女の頬はとても柔らかい筈。

一度摘めば、二度と手を離す事は出来ないでしょう。なんとなくそんなイメージ。

以上。トカゲの考察でした。

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