表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒龍の少女  作者: 羽つき蜥蜴
八章 決別
188/292

百八十七話 忘れたモノ

迷宮で一夜を明かし、身体を起こそうとして気付いた。

エルフさんに抱きつかれていたので、私が起きたらそれと同時にエルフさんまで起こしてしまう。

まだ寝ているのを起こすのは申し訳ないので、退屈な時間は私の能力を調べる時間に充てようと思う。


この前見たけど、なんだかんだで変化していて、調べ忘れた能力がある。

確か【魔導操作】は調べて無い。

元々は【魔導認識操作】だった筈。あれの効果は、周囲の魔力を使って周辺を調べるのと、魔力を隠す能力だった筈。

魔力を隠すのは黒禍で問題無いから消えたのかな?

文字数的に弱くなった様な気もするけど、どうなんだろう?

調べないとね。




魔導操作‥‥‥全ての魔力は黒龍帝の物。魔力を取り込み、世界に魔力を流す。

魔力を循環させ、力を行使する際に使用する。

魔力に関わる全てを操り、魔物は黒龍帝に逆らう事は出来ない。




んん!?


斜め上の方向の進化を遂げてた。

確かに他の生き物の魔力を操れるのなら、魔物は簡単に倒せるけど。

魔物は魔石が壊れると死ぬのだから、この力が本物ならば、相手を触らなくても良い。


と言うか、うん。

目を背けてたけど、私が黒龍なんだよね。

少し、曖昧。

あれ?でも、フユは私の事を、黒龍の義娘だって言ってたよ?

嘘?だとは思えない。

フユは親友だよ?親友が裏切る筈が無い。


‥‥‥本当に?そうだと自信を持って言える?

まさか、アイちゃんとフユが結託した?

それで、私を‥‥‥違う。そんなまさか。

いや、何にせよ。帰れなくなった。

帰るつもりは、無かったけど、さ。


【魔導操作】を使えばフユだって倒せる。と思う。

やられる前に、やらないと。

幸い、黒禍のお陰で追っ手は撒ける。

それまでに、力を身につけないと。


私が覚悟を決めたとほぼ同時、ふとエルフさんと目が合った。気がした。


「ん、おはよう?ルビー。起きてる?」

「うん」

「寝る時も仮面外さないのね?」

「癖みたいなものかな」



仮面を外す事は多分無い。

少なくとも、逃げ続けている今は。



「そう。寝苦しく無いの?」

「慣れたよ」



慣れないといけない。

ずっと、続くだろうから。



「ふうん?ま、良いわ。さあ、朝食を、と思ったけど、食べられるの?」

「あ、」



早速壁にぶち当たった。外すしか無いのかな。

でも、エルフさんは、私を見て驚くかな?

拒絶されるのは嫌だな。



私が下を向いたから。エルフさんが察した。


「見せたくない理由があるんでしょ?」

「うん。まあ」

「そ。なら、外してる時くらいは後ろ向いててあげるわ」

「え?でも、それだと食事中全部」

「アンタが望むなら良いわ」

「ありがとう」

「フン!感謝なんて要らないわ!」


そう言って向こうを向いて、携帯食料を放り投げて来た。

怒ってる?のかな。耳まで真っ赤にして。

有難いし、申し訳ない。


「ごめんね」

「だから、良いって言ってるでしょ!」


怒ってる?よね。

声も大きくなったし。

でも、これ以上は触れない方が良いのかな?

「話し掛けるな」オーラが背中から溢れ出てるから。

うん。なんか、いつも怒ってる気もするし、寝起きだからなのかな。多分。



黙々と私達は朝食を摂り、丁度私が食べ終わった頃。


「そろそろ良い?」

「あ、うん」


今仮面を着け直した。

なんとも良いタイミング。狙ったとしか思えない。


「そう。なら行きましょう」

「うん」

「ところでアンタ、武器は?」

「あ、そうだね。確かナイフが、あれ?」


今まで使って無かったから忘れてた。

確か昔、ナイフを作った。

これは覚えてる。

あれ?ホルスターがあった筈だけど?無いね。

無くしちゃった?かな。

いつ無くしたんだろう?思い出せない。


「アンタ、武器も無いの?」

「それは、その。うん」

「はあ、仕方ないわね。私の護身用のナイフがあるから貸してあげるわ」


そう言いながら取り出したのは、緑色のナイフ。

所謂ダガーナイフ。

見事な装飾がされていた。思わず右眼で調べてた。



翡翠のダガー


エルフ族によって作られた護身用の短剣。

親から子へと心を込めて作られ、エルフにとって馴染み深い、翡翠が使われている。


攻撃力15

風魔法適正強化小

魔力透過率30



「貸してあげるわ」

「あ、ありがとう」

「相応の働きを期待してるわ」

「頑張る」



私は武器を貸してくれた事に感謝をした。

けど、ある事を考えてしまった。

そして、声に出してしまった。


「殴った方が、強い」


幸い、聞こえない程の小さな声。

それはまだ良い。

もっと気になる事は、このダガーを全力で振るったら、折れてしまうであろう事。

そして、とても大切にしているのであろう事。

とても綺麗で、毎日手入れをしているのが窺える程だったから。


「注意して、使わないと」


折ってしまったり、逆に使わなければ怒られてしまうだろう。

最善は格闘のみで戦う事だけど、それは駄目。


さらに、エルフさんは弓使いなので、戦闘中でもしっかりと、こちらを見ると思う。

と言うか寧ろ、心配してずっとこっちを見てるかもしれない。

それは自意識過剰かもだけど、なんと無くそんな気がする。

怒りっぽい人だと思うけど、その分凄く世話焼きな気がする。


だって、一応は味方だとしても、見ず知らずの人に武器を、それも大切にしているであろうそれを、貸す必要は無い。

見た感じでは魔力も流れていて、かなりの貴重品。

確か、魔法の武器はもの凄く高い代物だったと思う。


うう、困ったなあ。


結局私は、エルフさんに怒られる事だけを恐れてしまい、ダガーとエルフさんの事のみを考え、もはや迷宮の事など頭から抜けてしまったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ